私が王女だと婚約者は知らない ~平民の子供だと勘違いして妹を選んでももう遅い。私は公爵様に溺愛されます~

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第二章 ~『側近募集』~

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 机に積まれた書類の山が消え、残された最後の一枚の書類にクレアはハンコを押す。

「これで仕事は完了です。お疲れ様でした~」
「クレアもよく頑張ったね」
「お兄様が手伝ってくれたおかげですよ」

 ギルフオードと共に仕事をしたことで、クレアは彼の優秀さを再認識していた。一つの案件を処理するのにかかる時間が極端に短いのだ。

(やっぱりお兄様は尊敬できる殿方ですね♪)

 心の中で賞賛を送ると、彼は察したかのように僅かに微笑む。魅力的な外見と優秀な能力を併せ持つ彼ならば、部下からもきっと慕われるはずだ。

「お兄様の側近の人たちは幸せですね」
「急にどうしたんだい?」
「ふふ、一緒に働いた私のただの感想ですよ」
「クレアから褒められると悪い気はしないね。うん、でも君の側近も用意しないとね」
「私の側近ですか?」
「僕もサポートするつもりだけど、領地経営で手が離せないこともあるからね。信頼できる直属の側近がいれば、クレアの力になってくれるはずだからね」

 いま仕事を手伝ってくれている文官たちもいずれはアイスバーン公爵家へ帰任することになる。その前に、信頼の置ける優秀な人材を確保する必要があった。

「私の側近になってくれる人はいるでしょうか?」
「募集すれば、かなりの応募があると思うよ。クレアは唯一の王族だし、それに何より優しいと評判だからね」

 誰しも優しい上司の下で働くことを望むものだ。クレアの優しい評判は求人にも大きな効力を発揮するはずだ。

「貴族は基本的に長男が跡目を継ぐ。それ以外の人材は街で働いたり、領主を支えたりする文官として働くことが多い。そんな彼らにとって王宮務めは魅力的に映るはずだよ」
「貴族の教育を受けているなら、きっと魔法も使えますよね?」
「才能があるなら伸ばすだろうね。それに教養も豊富だ。クレアの知らない知識を与えてくれる者も多いはずだ」
「それは心強いですね」

 クレアの経験不足を補ってくれる人材なら大歓迎だ。まだ見ぬ側近への期待で胸を躍らせていると、ギルフォードが立ち上がる。

「さっそく知り合いの貴族たちに声をかけてみるよ」
「待ってください」
「何か気になることでもあるのかい?」
「貴族の人も歓迎なのですが、できれば平民からも優秀な人材を登用したくて……」
「平民か……優秀な人材がいることは僕も認めるよ」
「なら――」
「でも平民も募集対象に含めると、身元がしっかりしていない人も混じることになる。悪意を持って近づいてくる者を僕は歓迎しないよ」

 貴族はコミュニティを形成しており、顔見知りばかりだ。そのため不審な人物が身分を偽ってもすぐに看破できる。

 しかし平民はそうはいかない。クレアを害する意図があった場合、侵入を防ぐことができないのだ。

 妹を想う兄として、クレアを危険な目には合わせられない。だからこそ貴族から彼女の側近を選ぼうとしていたのだ。

「お兄様の心配は嬉しいです。ですが、悪意のある人が近づいてきても問題ありませんよ。絶対に心変わりさせてみせますから」

 優しさは人の心を打つ武器となる。クレアが口にする言葉には説得力があった。ギルフォードは口元に笑みを浮かべ、彼女を信じることにした。

「分かった。平民からも君の側近を募集するとしよう」
「よいのですか?」
「僕も人を見る目には自信があってね。クレアならどんな悪党でも改心させられると、信じることにしたのさ」

 ギルフォードの言葉にクレアも笑みを零す。優しい人は報われる。今は亡き母の遺言を思い浮かべながら、側近探しに取り掛かるのだった。

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