愛してもいいですか?

hina

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「颯くん、ずっとそわそわしてるね。緊張してる?」
午後の授業の休み時間。ついにあと一時間くらいで直弥さんと会う。

龍之介と孝治に直弥さんのことを話したからか、二人とも僕のことを気にかけてくれている。

今日は一日落ち着かなくて、授業中も気もそぞろだった。

「うん。もしフェロモンの相性が良くなかったらとか、実際会ってみたら想像と違ったらとか、なんか色々考えちゃって……」
それに先日の相性の良いフェロモンのαのことも気になっていたりして……。
「ダメな時はダメで諦めよう」
「会うことには決めたけど、決意がぐらぐらしてるー」
「よしよし」
前の席に座っている龍之介に頭を撫でられて、目を細めた。
「ま、どのみち、そのうち捕まるだろうから、観念するしかないんじゃないか」
孝治の言葉に頷いて、深呼吸をする。


「うん。逃げない。ちゃんとフェロモンと自分の気持ちを確かめてくる」
「頑張れ」
「何があっても僕達は颯くんの味方だよ!」

よしと気合いを入れる。会うだけでいいんだ。
大丈夫、大丈夫。









この前嗅いだ花の香りがする。
校門に近付く程、その香りが強くなっていく。
発情期のように身体が熱くなって、息があがる。
僕はその場に座り込み、ズボンのポケットから緊急用の抑制剤を取り出して、太腿に打ち込んだ。


校門の方からうちの学校の制服を着た背の高い生徒が僕の方に近付いてきた。

「君は……」
「直、弥さん……?」
「颯、なのか?」

仕草や顔のつくり、体型もよく知った彼のもので。
こくんと頷いた僕に手を伸ばし、頬に触れてきた直弥さんのフェロモンに包まれて、瞬きを繰り返した。

「まさか直弥さんだったなんて……」
「颯……俺の、番……」

ぎゅっと抱きしめられて、直弥さんの身体も熱くなってることに気がつく。

「直弥さん、ここではマズいです。発情期用の部屋に向かいましょう?」
「ああ、そうだな」
「わっ! お、下ろしてください! 肩を貸してもらえれば歩けます!」
「暴れるなよ。落とすようなヘマはしないけど」
「僕の話を聞いて下さい……!」

直弥さんに横抱きにされた僕は、急な発情と恥ずかしさから顔を真っ赤にして抗議する。


「俺もギリギリなんだ。早く二人きりになりたい……」
「そ……そうですか……」

熱い息を吐く直弥さんに、僕は口を噤んだ。

下校途中の生徒達に注目されているけど、寮まではそう遠くないので、早く着くためにも大人しくしていることにした。
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