愛してもいいですか?

hina

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放課後。一緒に寮に戻るためにΩ校舎の昇降口で直弥さんを待ってる。
Ω寮とα寮はいくらも離れてないけど、僅かな時間もそばに居たいらしい。


直弥さんと校門前で待ち合わせした日から一週間。まだ番にはなってないし、発情も二日で治ってしまったけど、僕と直弥さんは発情明けにも告白し合って付き合うことになった。

「はあ……」

ドキドキする。甘酸っぱくて、でもとびきり幸せで。こんな気持ちになれるなら、もっと早く会っちゃえば良かった。

「颯! お待たせ。帰ろうか」
「直弥さん! はい。行きましょう」
恋人繋ぎで手を繋いで歩きはじめる。

「颯、週末空いてる?」
「とくに予定はありませんけど……」
「じゃあ、どこかに出掛けよう。行きたいところはある?」
「行きたいところ……。ん~……」
すぐには思い浮かばなくて、首を傾げた。

「そうだな……動物園と水族館なら、どっちが好き?」
「どっちも捨て難いですけど、今行きたいのは水族館かな」
「そっか。なら水族館に行こう」
「は、はい」
デートの約束をしてしまった。リアルでどこかに出掛けるのは初めてだ。

「楽しみだな」
「僕、ペンギンが見たいです」
「ペンギンか。どこの水族館がいいかな」
「そうですねー……」


水族館のことを話していたら、あっという間にΩ寮に着いてしまい、直弥さんは一回だけ軽いキスをして名残惜しそうにα寮に帰って行った。






「可愛かったですね!」
「ああ。颯は本当に可愛い」
「僕がじゃなくて、ペンギンがですよ!? イルカも可愛かったし、お魚もいっぱい見れたし、大満足です!」
「俺も可愛い颯がたくさん見られて大満足だ」
「もう! 直弥さんは何を見てきたんですか」
「海の生き物も見たよ」
「なんだかなあ……」

水族館から駅までの道を歩きながら、隣を歩く直弥さんをちらりと見上げる。と、ばっちり目が合って、直弥さんは微笑む。

僕は顔を赤くしながら、繋いだ手をぎゅっと強く握った。


「魚を見たことだし、お昼はお寿司でも食べに行こうか?」
「僕、オムライスが食べたい気分です」
「分かった。じゃあ洋食にしよう」
「お寿司は次回にしましょう」
「そうだな」



次はどこに出掛けられるだろう。
楽しみに思いながら、僕は直弥さんの横顔を見つめた。
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