9 / 11
9
しおりを挟む
放課後。一緒に寮に戻るためにΩ校舎の昇降口で直弥さんを待ってる。
Ω寮とα寮はいくらも離れてないけど、僅かな時間もそばに居たいらしい。
直弥さんと校門前で待ち合わせした日から一週間。まだ番にはなってないし、発情も二日で治ってしまったけど、僕と直弥さんは発情明けにも告白し合って付き合うことになった。
「はあ……」
ドキドキする。甘酸っぱくて、でもとびきり幸せで。こんな気持ちになれるなら、もっと早く会っちゃえば良かった。
「颯! お待たせ。帰ろうか」
「直弥さん! はい。行きましょう」
恋人繋ぎで手を繋いで歩きはじめる。
「颯、週末空いてる?」
「とくに予定はありませんけど……」
「じゃあ、どこかに出掛けよう。行きたいところはある?」
「行きたいところ……。ん~……」
すぐには思い浮かばなくて、首を傾げた。
「そうだな……動物園と水族館なら、どっちが好き?」
「どっちも捨て難いですけど、今行きたいのは水族館かな」
「そっか。なら水族館に行こう」
「は、はい」
デートの約束をしてしまった。リアルでどこかに出掛けるのは初めてだ。
「楽しみだな」
「僕、ペンギンが見たいです」
「ペンギンか。どこの水族館がいいかな」
「そうですねー……」
水族館のことを話していたら、あっという間にΩ寮に着いてしまい、直弥さんは一回だけ軽いキスをして名残惜しそうにα寮に帰って行った。
◇
「可愛かったですね!」
「ああ。颯は本当に可愛い」
「僕がじゃなくて、ペンギンがですよ!? イルカも可愛かったし、お魚もいっぱい見れたし、大満足です!」
「俺も可愛い颯がたくさん見られて大満足だ」
「もう! 直弥さんは何を見てきたんですか」
「海の生き物も見たよ」
「なんだかなあ……」
水族館から駅までの道を歩きながら、隣を歩く直弥さんをちらりと見上げる。と、ばっちり目が合って、直弥さんは微笑む。
僕は顔を赤くしながら、繋いだ手をぎゅっと強く握った。
「魚を見たことだし、お昼はお寿司でも食べに行こうか?」
「僕、オムライスが食べたい気分です」
「分かった。じゃあ洋食にしよう」
「お寿司は次回にしましょう」
「そうだな」
次はどこに出掛けられるだろう。
楽しみに思いながら、僕は直弥さんの横顔を見つめた。
Ω寮とα寮はいくらも離れてないけど、僅かな時間もそばに居たいらしい。
直弥さんと校門前で待ち合わせした日から一週間。まだ番にはなってないし、発情も二日で治ってしまったけど、僕と直弥さんは発情明けにも告白し合って付き合うことになった。
「はあ……」
ドキドキする。甘酸っぱくて、でもとびきり幸せで。こんな気持ちになれるなら、もっと早く会っちゃえば良かった。
「颯! お待たせ。帰ろうか」
「直弥さん! はい。行きましょう」
恋人繋ぎで手を繋いで歩きはじめる。
「颯、週末空いてる?」
「とくに予定はありませんけど……」
「じゃあ、どこかに出掛けよう。行きたいところはある?」
「行きたいところ……。ん~……」
すぐには思い浮かばなくて、首を傾げた。
「そうだな……動物園と水族館なら、どっちが好き?」
「どっちも捨て難いですけど、今行きたいのは水族館かな」
「そっか。なら水族館に行こう」
「は、はい」
デートの約束をしてしまった。リアルでどこかに出掛けるのは初めてだ。
「楽しみだな」
「僕、ペンギンが見たいです」
「ペンギンか。どこの水族館がいいかな」
「そうですねー……」
水族館のことを話していたら、あっという間にΩ寮に着いてしまい、直弥さんは一回だけ軽いキスをして名残惜しそうにα寮に帰って行った。
◇
「可愛かったですね!」
「ああ。颯は本当に可愛い」
「僕がじゃなくて、ペンギンがですよ!? イルカも可愛かったし、お魚もいっぱい見れたし、大満足です!」
「俺も可愛い颯がたくさん見られて大満足だ」
「もう! 直弥さんは何を見てきたんですか」
「海の生き物も見たよ」
「なんだかなあ……」
水族館から駅までの道を歩きながら、隣を歩く直弥さんをちらりと見上げる。と、ばっちり目が合って、直弥さんは微笑む。
僕は顔を赤くしながら、繋いだ手をぎゅっと強く握った。
「魚を見たことだし、お昼はお寿司でも食べに行こうか?」
「僕、オムライスが食べたい気分です」
「分かった。じゃあ洋食にしよう」
「お寿司は次回にしましょう」
「そうだな」
次はどこに出掛けられるだろう。
楽しみに思いながら、僕は直弥さんの横顔を見つめた。
44
あなたにおすすめの小説
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
愛する公爵と番になりましたが、大切な人がいるようなので身を引きます
まんまる
BL
メルン伯爵家の次男ナーシュは、10歳の時Ωだと分かる。
するとすぐに18歳のタザキル公爵家の嫡男アランから求婚があり、あっという間に婚約が整う。
初めて会った時からお互い惹かれ合っていると思っていた。
しかしアランにはナーシュが知らない愛する人がいて、それを知ったナーシュはアランに離婚を申し出る。
でもナーシュがアランの愛人だと思っていたのは⋯。
執着系α×天然Ω
年の差夫夫のすれ違い(?)からのハッピーエンドのお話です。
Rシーンは※付けます
貧乏子爵のオメガ令息は、王子妃候補になりたくない
こたま
BL
山あいの田舎で、子爵とは名ばかりの殆ど農家な仲良し一家で育ったラリー。男オメガで貧乏子爵。このまま実家で生きていくつもりであったが。王から未婚の貴族オメガにはすべからく王子妃候補の選定のため王宮に集うようお達しが出た。行きたくないしお金も無い。辞退するよう手紙を書いたのに、近くに遠征している騎士団が帰る時、迎えに行って一緒に連れていくと連絡があった。断れないの?高貴なお嬢様にイジメられない?不安だらけのラリーを迎えに来たのは美丈夫な騎士のニールだった。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる