【完結】セックス依存症の精神科医がスパダリCEOと結ばれるまで

斡旋

「でもそれじゃあどうしたらいいの？」
「うーん、本当は決まった恋人をつくって仲良くしてれば一番いいんだけどね」
「そうなんだ」
「静音が本当に好きな人がいて、付き合えるならそれでいいんだけど」
「僕好きな人なんていないよ。そもそも友達すらほとんどいなかったし」
「そうだな。うーん、適当な相手と付き合ってもいいんだが……」

健斗は言い淀よどんだ。

「何かまずいの？」
「ほら、男が女に執着するようになるってさっき説明したろ？」
「うん」
「静音が相手をそんなに好きじゃないのに、付き合った相手がめちゃくちゃ執着してきて……ってなるとなぁ」
「あー……そっか。」

つまり、下手をすると上野の二の舞というわけだ。

「病持ちの女性と性的な関係になっても、頻繁に顔を合わせるんじゃなければそのうち男の方は正常に戻るらしいんだ。だけど、頻繁に顔を合わせる距離にいるとまずくて、ずっと執着が途切れないっていうか」
「そうなんだ……あ、じゃあ上野は僕から離れたら正常に戻る？」
「ああ、そうだね。きっと大丈夫だと思うよ」
「そっか……それならよかった……」

上野は頭が良いから、もしかしてそれが直感的にわかって自ら僕と距離を置こうとしたのかな……。それで、僕を犯そうとしたなんて言って自主的に退学に？
真実はどうだったのか、もう会えないから本当のところはわからない。

「それで、静音は嫌だとは思うけど、俺が静音にその……相手を見繕みつくろって紹介するから」
「へ？」
「つまりだな、お前の相手を俺が探して、引き合わせる」
「え――」
「で、同じ相手とずっとしてるのはまずいから、定期的に相手を……言い方は悪いが交換する」
「交換？」
「そう。ローテーションって言っちゃぁなんだけど、とにかくそういう感じ」
「うわ……僕ってすごい最低野郎みたいだね？」
「そういうわけじゃないから。病気だから仕方ないだろ。原因もわかんないしな」
「うん……」

僕ってなんなんだろ。なんでこんな身体に生まれちゃったのかな。
でも、健ちゃんが見つけてくれた人とセックスしたら、父さんに迷惑がかからないってことだよね。
それならそうするのが一番いいんだよね。

「健ちゃん、見つけてきてくれる人って僕が面倒起こさずに済む人ってことだよね？」
「うん、そういうことになるな。とにかくお前は何も心配しなくていいから」
「――わかった」

健斗に相手のことをしつこく聞いたところどうやら、父と取引のある会社関係の息子で、かつ次男以下（将来跡継ぎになるような人物を避けるため）の中から見繕うということらしかった。
――そうだよね、跡継ぎになる男の人を僕がおかしくしちゃったらまずいもんね。
しかも、父の取引先ということは、何かあったとしてもある程度口止め可能な相手ということなのだろう。
とにかく僕は卒業まで父に迷惑をかけたくなかったから、そのためなら誰とでも寝るつもりだった。

「健ちゃん嫌なことお願いしてごめんね。お願いします」
「静音……。俺は嫌だなんて思ってないよ。お前の役に立ちたいんだ」
「うん。ありがとう」

そして、数日後にはじめの相手と会うことになった。僕はもうその時には身体中熱くなるような、発作手前の状態で辛かったので助かったと思ったくらいだった。