悪役令嬢は断罪されたい

東 るるる

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1章 〘 悪役令嬢は投げ出したい 〙

3話 【幼馴染みに剣術を教えてもらう】

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「と、言うわけで。
私に剣術の極意を教えてくれェィ」
私は今、恥を忍んで幼馴染みにお願いしていた。
「は…??
お前、大丈夫か…?
散々貶しておいて…」
「ううお願いだぁ~!
私、将来的に無人島でサバイバルするから、そん時の為に剣術教えて~!」
「…無人島でサバイバル…?
ツッコミどころしか無いんだが」
この男、幼馴染みであり攻略対象者なのである。
名前をヴェルディア・シュドレーヌ侯爵令息。
「うう~、暇なときでいいから!
ヴェル、おねがいっ!!」
ぱんっ!と両手を合わせお願いする。
「あーもうわかった!
教えればいいんだろ?!」
よし、言質は取った。
「ありがとう!」


そうして、私は無人島ライフのために剣術を習う事にしたのである。


「ふ、っ…!!」
しゅん、と風を裂くヴェルディアの鋭い一撃。
「おお…!かっこいい!」
「これが最終目標だ」
そう言うヴェルディア。
「へあ~…これが?」
「ああ。
まずは剣の扱いからだな。
とりあえず真剣を渡す」
手に置かれた剣。
ひ弱な私でも楽に持てる。
「ほ~…!案外軽いね~」
「な…!?」
やたら驚くヴェルディア。
「ん?どうかした?」
私はそう言って、かっこいいポーズを決める。
抜剣!
刹那、ぶわっと風が巻き起こる。
「え、この演出すげぇ」
目を開いて硬直するヴェルディア。
「おーい?ヴェルディア~?
そんな目ぇかっぴらいてたら綺麗な瞳落っこちちゃうよ?」
もしもーし、とヴェルディアの目の前で手を振っていると。
「はっ!」
「あ、ようやく自我戻ってきた。おはよう」
「あ、ああ…おはようじゃなくて!
お前は俺の手には負えない。
師匠を紹介してやるから、勘弁してくれ……」
「?わかった」
やっぱめんどくさくなったかな?
別に他のプロの人から教えて貰えるならいいんだけどさ。
「ここは…?」
「騎士団長の部屋だ」
「え”」
そんな私のプライドへし折るような人を…。
コンコン
「なんだ」
部屋の中から声がする。
え、ヤダ。なんか緊張してきたわ…。
「二番隊副隊長、ヴェルディア・シュドレーヌです。
少し紹介したい人物がいます」
「ヴェルディアか。入れ」
「失礼します」
「し、失礼します…」
うわ、もう無理。
既にプレッシャーすぎる。
「…?彼女は?」
「私はイリアです。イリア・ラビニュル」
「ああ。ラビニュル公爵家のご令嬢か。
それで?本日は何用ですか?」
視線が一層鋭くなる。
「その件に関しては、俺から言いましょう。」
そうして、ヴェルディアは事の経緯を分かりやすく説明した。
「ふむ。
…では、どのように手に負えないのかを見てみよう。
ヴェルディア、イリア嬢。ついてきなさい」


騎士団長についていった先にあったのは、小さな鍛練場だった。
「彼女は、抜剣した時点で可笑しかった」
「おかしい…?剣を抜いてみろ」
「はい」
すうっ…。
小さく息を吸い、剣を抜く。
さっき同様、ぶわっと風が吹き荒れた。
「…ああ。そういうおかしいだったのか。」
「あ、あの…。そういうおかしい、とか…さっきから話が全く分からないんですが…」
私が混乱しながらおずおずと口を挟むと。
「そうか、イリア嬢はまだ習っていなかったんですね。
イリア嬢。あなたが抜剣したときに起きる風は、精霊の加護があるという証拠です」
「???」
思ったよりスケールが大きい話に、私の脳内は宇宙が展開された。

そもそも精霊の加護は一部の人間にしか宿らない。
精霊の加護は貴重故、どんなに小さな加護であっても優遇されていた。
「へあ~…」
信じられん。私が精霊の加護持ちだとは。
まあでも、神様の意向で転生しちゃったから、もしかしたらそれがあるのかも。
「一度私と打ち合いをしないかい?」
「!?」
「勿論、練習試合型式で」
練習試合型式とは、その型式の間はどんなに深い傷を負おうが型式が解除されたときに型式発動前の状態に戻るということだ。
つまり、私たちはみんな無傷。
練習試合型式の中で私が死んでも、型式が解除されたら私は元の無傷状態に戻る。
そういうことだ。

結局断れなかった。
「………では、行きますよ」
「…はい」
刺されたら痛いんだろうか。
………いや、とにかく回避に集中しよう。
こちらから攻撃を与えるでもなく、防戦一方。
よし、そうしよう…。
すぅっ、と大きく息を吸い、背後に後退した。
読み通り、攻撃が前方から来る。
だがそれも想定内。
私は一気にしゃがみ、視界から消えた。
そして相手が錯乱している時を突いて一気に駆けた。
「…っ!」
追って攻撃を仕掛けてくるが、私はそれを剣で受け止める。
なぜだか身体が動きを覚えていた。
私は確かに前世で剣道を習っていて、県内一位を取ったけど…
「考え事かっ!?」
「あぶな…」
私はたっ、と上に飛び上がりくるりとそのまま一回転、その後から距離を詰めて上空で仕留めようとするであろう団長を見越してちらりと上を見る。
「…やっぱり」
来てたか。
このまま防戦一方ではケリがつかない。
急遽作戦変更。
ちょっと攻める。
「っ…」
攻撃をするというフェイントを仕掛ける。
すると、見事にハマり受け身を取ったのでその隙を逃さず、団長の後ろに行き足をとん、と剣で触る。
「………驚いた。ご令嬢にここまで高位な立ち回りをされるとは」
「まだまだですよ。騎士団長殿が油断してくれていたからです」
「はは、途中から私も本気を出したんだがね。
間に合わなかったよ。
何より、初手で後退されたことには驚いた。
私は絶対に向かってくると思っていたからね」
「ふふ。向かっていけば、『閃光の鬼神』に一発で仕留められるでしょう?
そんな格好が立たない事態だけは避けたかったので」
「イリア嬢、洞察力がすごいね。」
驚いたようにこちらを見る騎士団長。
「イリア」
背後からヴェルディアの声がする。
「ヴェルディア。どうしたの?」
「いや………その、…何でもない」
ふいっ、と顔を逸らされた。
「ははははは。若いなあ」
「?」

あとがきィ!ーーーー
あれ…この小説、ジャ○プ系列だっけ?っていうくらい戦闘シーンの長さでした。
いやー、反省してますけど後悔はしてません!
またしても攻略対象者一人を見事に手玉に取ってしまいました、イリア。
まあでも、今のところはヴェルディアはイリアに対して「かっこいい…トゥンク」みたいに、男性が女性に抱く感情ではなく、女性が男性に抱く感情みたいなもんですから。
なのでいつか、「あれ…こいつ、かわいい…トゥンク」っていうギャップ萌え作りたいですね。
ヴェルディアしか感じられないギャップ萌え。
次回もイリアは攻略対象者とつるみます。
お楽しみに!!
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