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26.悪魔の代償
しおりを挟む僕がお風呂に向かっていると、ふらふらよろめいているカイトがいた。調子が物凄く悪そうだ。
「カイト??どうしたの??何処か悪いんじゃ・・・。」
カイトが、酷いクマを作って僕を睨みつけてきた。
「オリッち。何で、俺っちじゃダメなんだ!」
「カイト・・・。前にも言ったけど、僕はおじさんしか愛せない呪いを受けてるんだ。だからカイトの気持ちには応えられない。」
「ぐすっ。オリッち、俺っちと一緒にいるだろ??ずっと一緒だって約束したっ。」
カイトの様子が何処かおかしい。視点は定まらないし、魔力が乱れてる。
「ねえ、カイト。まさか、僕達の契約に何か大切なものを掛けたりしなかった?」
「したっ。俺っちの寿命を、オリッちと一緒にした。」
「は!?何でそんな事・・。正気なの??人と悪魔じゃ寿命が全然違うんだよ??君達からしたら、人間の寿命は一瞬だ。そんなの自殺も同然じゃないか!!そんなの掛けなくても、契約はきちんと結ばれてた!!」
「だって、だって。何があっても、離れたく無かった、この結び付きを強固な物にしたかったんだ。」
「・・・。その掛けた寿命は、今からでも戻せないの??」
「嫌だ!絶対、外さない。」
「はぁ。こんな事して、魔王が黙ってると思えない。カイトは昔から本当に我儘だよ。」
「うっ、げほっ。げほっ。」
「カイト・・。僕の実験室においで、体を見てあげる。魔力を安定させる、簡単な薬くらいなら作れるから。」
「う、うん。」
「僕はさっき散らかした物を慌てて片付け、カイトを部屋に入れた。」
「カイト、そこの実験台に横になって?」
「オ、オリッち、俺っち、その。あ、あの。」
「ん?なに?」
僕は、モノクルを掛けてカイトを隅々まで見て行く。
「ふーっ。ふーっ。お、オリっちがさっきココで・・・。」
「ん?カイト?? 寝不足に、眼精疲労。契約による魔力の乱れと、亜鉛不足?あと、不整脈まで。何したらこんな症状になるんだろう?」
僕はカイトに火傷させないように、闇ガエルの長い革手袋をはめる。
「はい、あーんして?」
「ふっ。あ、あーん。」
カイトの紫色のベロを軽く押して、喉の奥を見る。喉が少し腫れてる。不摂生で、ウィルスにかかりやすくなってるのかも。
「お、オリッち。この手袋どうしたんだ!?」
「ん?ああ、これ?この間珍しい闇属性のカエルを見つけたから、作ってみたよ。あまり耐久性は無いんだけどね。」
「な、何の為に??」
「うーん。人と違う悪魔族の身体構造がどうなってるのか、知りたくなっちゃったんだ。好奇心かな?ねぇ、カイトをちょっと調べてみてもいい??」
「う、うん。」
僕は、瞳の奥の縦に開く瞳孔や、巻き角、黒いエナメル質の爪、ほんの少し尖った耳や筋肉のつき方、それから尻尾??
「ねぇ。この尻尾。ちょっと触って見てもいい??」
「っ!?」
「ダメならいいんだ。ちょっとどうなってるのか知りたいだけだから。」
「だ、ダメじゃない!!オリッちなら噛みついたって良いんだ!!」
「え?いや、噛み付いたりしないよ??流石に僕の口に入れたら、カイトは大火傷しちゃうしね。」
僕は、カイトの尻尾を手袋越しに触る。くすぐったいのかな?顔が真っ赤だ。何故か声を必死に堪えてる。コレ肉球みたいにぷにぷにしてる。
「あっ!?くふっ。おり、っち、ひぐっ!?」
あれ?これ、絶対人に触らせちゃダメなやつじゃ無いの??僕は、気づかないフリをしてそっと手を離した。
「あ、ありがとう。」
「えっ。もう良いのか??」
「う、うん。お薬処方しないとね。」
僕は悪魔大全に乗ってる初歩的なお薬と栄養剤を作って渡した。
「カイト、ちゃんと眠るんだよ。寝ないと魔力乱れ良くならないからね!!」
「分かった。ねえ、オリッち。昔みたいに、お兄ちゃんお休みって言ってよ!!そしたらちゃんと寝るから。」
病人には逆らえないや。僕はカイトの耳の近くで囁いた。
「ふふふっ。我儘なお兄ちゃん、おやすみなさい。良い夢を見てね。」
クスリを飲んだおかげか、顔色も先程より良さそうだ。僕はカイトを見送った。
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