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魔法使いは人さらい
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一時間くらい歩いて街に着いた。少し大きめな建物なんかが所狭しと林立している、栄えた街だ。ここでは軽く野暮用をこなしつつ通り過ぎる。城では長旅の為に大々的に準備~というわけにもいなかったらしく足りないものなんかを買い揃えたりレド宛の手紙を出したりするようだ。
城下町では城より目立つ建物を建てられなかったり色々厳しいので、実はこの街が一番栄えているんだとか。なるほど。確かに人が多い。大通りでは両側に露店が並んでいて野菜やら武器やらを売っている。目移りするし、人もごった返しているのでうっかりするとはぐれてしまいそうだ。
「シルフィ、はぐれないように気を付け……ってあれ!?」
いない! さっきまで隣にいたのに、今の一瞬で迷子になってしまったらしい。どうしよう。探すより先にラウロたちに知らせないと。と、前を見る。しかし。
「あ、あれ……?」
知らない背中がいっぱいだ。横をきょろきょろ。知らない顔ばっかりだ。
もしかして、もしかして、
「私が迷子?」
人波に逆らって、棒立ちのまま首を回した。見知った姿はどこにもない。嘘でしょ。は、恥ずかしすぎる! いい年して迷子になってしまった! 最悪だ! 穴があったら入りたい。人と出かけるのが久々すぎて集団行動の感じとかをすっかり失念していた。全てにおいて最悪過ぎる。
あああ……これ絶対怒られるやつ、というか呆れられるし、シルフィ~とか言ってる場合じゃないし人の面倒見てる場合じゃなかった……。どうする。どうすればいい。置いて行かれることは無いだろうけど、どこか分かりやすいところでじっとしていた方が良いのかもしれない。
「ん、あれは」
ラウロかな? 遠くにそれっぽい後ろ姿が見えた。私は人混みをすり抜けながらラウロの影を追った。あっちへこっちへ移動するのを見失わないようにひたすら追いかける。すると、知らないうちに人混みから出て何だか薄暗い路地に入ってしまっていた。
ラウロたちがこんな場所に来るかな? ……単なる人違いだったのかもしれない。人気のない場所を一人で歩くのは現代社会でも危険だ。私はすぐに大通りへ戻ろうと踵を返した。途端、
「捕まえたぁ~!」
後ろからガッチリ捕まえられた。まずい、変質者だ! 私は必死で手を振り回した。
「うわー! 変質者!! 変質者ー!! へん……け、警察、警察の人ー!!」
「大声出すなってー。ん~……んん? やけに薄味になってない? まさかの見込み違い?」
私を捕まえている男は、少し思案するようにじっとしてから、振り回していた私の手首をあっさり掴んだ。そして腕輪を引き抜く。
「あーこれの所為だ。要らないポーイ、はしない。一応貰っとこう。勿体ないからね」
腕輪を取られてしまった。これのお陰で魔力を感知されにくくなっているはずなのに、どうしてこの人……というか私の魔力が目当てってことになる。私は相手を見極めようと後ろを振り向こうとした。が何故か頬ずりされてしまった。ぞわぞわする!
「は~良いね。これこれ。俺の救世主~! もう離さないからな~!」
「いいいへ、変態、ひいぃ」
「変な人間とは思ったけど魔法耐性もさっぱりとはなあ。こんな簡単に誘い出せるんならもっとさっさとやれば良かった。ここに来ると踏んで待ち伏せして正解だったなあ」
「ひ、独り言が多い……あの、は、はは離してもらえませんか。ちょっとあの、試しに!」
一人でぶつぶつ喋り続ける男、その声に聞き覚えがある気がして私は横目に相手の顔を見た。優しそうな目、何か恍惚とした表情してるけど……額に金属板が付いている! 昨日の夜襲撃してきた男だ! 私、昨日襲われたばかりだというのに今日も同じことを繰り返してしまった。ああもう本当に、自分が不甲斐なくて泣けてくる。
城下町では城より目立つ建物を建てられなかったり色々厳しいので、実はこの街が一番栄えているんだとか。なるほど。確かに人が多い。大通りでは両側に露店が並んでいて野菜やら武器やらを売っている。目移りするし、人もごった返しているのでうっかりするとはぐれてしまいそうだ。
「シルフィ、はぐれないように気を付け……ってあれ!?」
いない! さっきまで隣にいたのに、今の一瞬で迷子になってしまったらしい。どうしよう。探すより先にラウロたちに知らせないと。と、前を見る。しかし。
「あ、あれ……?」
知らない背中がいっぱいだ。横をきょろきょろ。知らない顔ばっかりだ。
もしかして、もしかして、
「私が迷子?」
人波に逆らって、棒立ちのまま首を回した。見知った姿はどこにもない。嘘でしょ。は、恥ずかしすぎる! いい年して迷子になってしまった! 最悪だ! 穴があったら入りたい。人と出かけるのが久々すぎて集団行動の感じとかをすっかり失念していた。全てにおいて最悪過ぎる。
あああ……これ絶対怒られるやつ、というか呆れられるし、シルフィ~とか言ってる場合じゃないし人の面倒見てる場合じゃなかった……。どうする。どうすればいい。置いて行かれることは無いだろうけど、どこか分かりやすいところでじっとしていた方が良いのかもしれない。
「ん、あれは」
ラウロかな? 遠くにそれっぽい後ろ姿が見えた。私は人混みをすり抜けながらラウロの影を追った。あっちへこっちへ移動するのを見失わないようにひたすら追いかける。すると、知らないうちに人混みから出て何だか薄暗い路地に入ってしまっていた。
ラウロたちがこんな場所に来るかな? ……単なる人違いだったのかもしれない。人気のない場所を一人で歩くのは現代社会でも危険だ。私はすぐに大通りへ戻ろうと踵を返した。途端、
「捕まえたぁ~!」
後ろからガッチリ捕まえられた。まずい、変質者だ! 私は必死で手を振り回した。
「うわー! 変質者!! 変質者ー!! へん……け、警察、警察の人ー!!」
「大声出すなってー。ん~……んん? やけに薄味になってない? まさかの見込み違い?」
私を捕まえている男は、少し思案するようにじっとしてから、振り回していた私の手首をあっさり掴んだ。そして腕輪を引き抜く。
「あーこれの所為だ。要らないポーイ、はしない。一応貰っとこう。勿体ないからね」
腕輪を取られてしまった。これのお陰で魔力を感知されにくくなっているはずなのに、どうしてこの人……というか私の魔力が目当てってことになる。私は相手を見極めようと後ろを振り向こうとした。が何故か頬ずりされてしまった。ぞわぞわする!
「は~良いね。これこれ。俺の救世主~! もう離さないからな~!」
「いいいへ、変態、ひいぃ」
「変な人間とは思ったけど魔法耐性もさっぱりとはなあ。こんな簡単に誘い出せるんならもっとさっさとやれば良かった。ここに来ると踏んで待ち伏せして正解だったなあ」
「ひ、独り言が多い……あの、は、はは離してもらえませんか。ちょっとあの、試しに!」
一人でぶつぶつ喋り続ける男、その声に聞き覚えがある気がして私は横目に相手の顔を見た。優しそうな目、何か恍惚とした表情してるけど……額に金属板が付いている! 昨日の夜襲撃してきた男だ! 私、昨日襲われたばかりだというのに今日も同じことを繰り返してしまった。ああもう本当に、自分が不甲斐なくて泣けてくる。
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