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南国の道のり
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「ハインツは今何してるの?」
「今は、えっと、体を解してる? ところ。あの、何て言うか、体を伸ばして、楽にするっていうか」
「そっか」
ストレッチかな。今日働いたみたいだし、筋肉も解さないと痛くなるのかも。ってそうじゃない。行動はまともだけど格好がまともじゃない。
ハインツは少しして隣のベッドに入ったようだった。私は彼のいる方に背を向け、この事態をどうしようか頭を抱えた。
ベッドにいるなら布団を被ってしまえば問題ない。ないかな、いいのかな。分からない。この世界では裸でいるのも普通だったりするのだろうか。常識が分からない。
「エコさん、な、何か、悩みとか、あるの?」
「え? あるけど」
私が頭を抱えてうんうん唸っていたからか、ハインツは気になったようだった。私の今の悩みはハインツが全裸ということだけだ。さっき思い切り視界に入って来た逞しい背中だの太ももだのはもう、忘れたくともそうそう忘れられないのである。ハインツは私の心境などまるで知らないので、心配そうな声色で言った。
「お、俺で良ければ、話とか聞くよ」
「うん……ありがとう。でも今はハインツのことが悩みっていうか」
「え、そっ、そうなの、俺の?」
ぎい、と私のベッドが軋む。ハインツがこちらに身を乗り出したらしい。すぐに振り返ろうとして、駄目だったと思い直す。私は自分の目を隠しつつ背後のハインツを手で制した。
「待って待って! 待って、一旦待って!」
「うん、ま、待つ」
どうする。せめて下だけでも穿いてくれればいいものを、って、閃いた! 私が下のズボンを脱いで渡せばいいんだ! いつものジャージならサイズ的に無理だけど、今穿いているのはダリアさんの借り物である。ハインツでも穿けるはずだ。
しかし。そうすると私は下着一枚になってしまう。どうする、私。そこまでしなくてもただ布団を被っていてもらえば……とはいえハインツが大人しくするとも思えない。結局動き回ってしまう気がする。
「ラウロは帰ってこないし」彼がいればこの事態を何とかしてくれるだろうに。仕方ない、このままでは私の目のやり場がないのだ。
私は意を決して、布団を腰に巻くとその中でズボンを脱いだ。恥ずかしかったらやめようと思ったけど大丈夫そうだ。しかし。
「ハインツ、あの、これを……」
いざ脱いだズボンを渡そうとした途端、急にものすごく恥ずかしくなってきた。よく考えたら脱ぎたての服を人に渡すってどうなの!? 私はハインツに背を向けたまま、必死で後ろに手を伸ばした。ズボンを早く受け取って欲しい。
「え? えっと?」ハインツは困惑している。
「と、とにかく! 早く何とかして!」
やっぱりやめとけば良かった! 全力で後悔しながらヤケクソでズボンを提示し続けた。どうなのこれ、私馬鹿みたいじゃない? もう馬鹿でいいや、いっそ馬鹿にして笑い飛ばしてください……。
私が悲しみに打ちひしがれる中、ようやくハインツはズボンを受け取ってくれた。私の心情を察して気を使ってくれたのかな。ごめんね、本当に申し訳ない。私も人のことを言えないくらいに暴走してしまっている。ちゃんと説明すればハインツだって分かってくれたはずなのに、私が勝手に突っ走ってしまったのだ。
「今は、えっと、体を解してる? ところ。あの、何て言うか、体を伸ばして、楽にするっていうか」
「そっか」
ストレッチかな。今日働いたみたいだし、筋肉も解さないと痛くなるのかも。ってそうじゃない。行動はまともだけど格好がまともじゃない。
ハインツは少しして隣のベッドに入ったようだった。私は彼のいる方に背を向け、この事態をどうしようか頭を抱えた。
ベッドにいるなら布団を被ってしまえば問題ない。ないかな、いいのかな。分からない。この世界では裸でいるのも普通だったりするのだろうか。常識が分からない。
「エコさん、な、何か、悩みとか、あるの?」
「え? あるけど」
私が頭を抱えてうんうん唸っていたからか、ハインツは気になったようだった。私の今の悩みはハインツが全裸ということだけだ。さっき思い切り視界に入って来た逞しい背中だの太ももだのはもう、忘れたくともそうそう忘れられないのである。ハインツは私の心境などまるで知らないので、心配そうな声色で言った。
「お、俺で良ければ、話とか聞くよ」
「うん……ありがとう。でも今はハインツのことが悩みっていうか」
「え、そっ、そうなの、俺の?」
ぎい、と私のベッドが軋む。ハインツがこちらに身を乗り出したらしい。すぐに振り返ろうとして、駄目だったと思い直す。私は自分の目を隠しつつ背後のハインツを手で制した。
「待って待って! 待って、一旦待って!」
「うん、ま、待つ」
どうする。せめて下だけでも穿いてくれればいいものを、って、閃いた! 私が下のズボンを脱いで渡せばいいんだ! いつものジャージならサイズ的に無理だけど、今穿いているのはダリアさんの借り物である。ハインツでも穿けるはずだ。
しかし。そうすると私は下着一枚になってしまう。どうする、私。そこまでしなくてもただ布団を被っていてもらえば……とはいえハインツが大人しくするとも思えない。結局動き回ってしまう気がする。
「ラウロは帰ってこないし」彼がいればこの事態を何とかしてくれるだろうに。仕方ない、このままでは私の目のやり場がないのだ。
私は意を決して、布団を腰に巻くとその中でズボンを脱いだ。恥ずかしかったらやめようと思ったけど大丈夫そうだ。しかし。
「ハインツ、あの、これを……」
いざ脱いだズボンを渡そうとした途端、急にものすごく恥ずかしくなってきた。よく考えたら脱ぎたての服を人に渡すってどうなの!? 私はハインツに背を向けたまま、必死で後ろに手を伸ばした。ズボンを早く受け取って欲しい。
「え? えっと?」ハインツは困惑している。
「と、とにかく! 早く何とかして!」
やっぱりやめとけば良かった! 全力で後悔しながらヤケクソでズボンを提示し続けた。どうなのこれ、私馬鹿みたいじゃない? もう馬鹿でいいや、いっそ馬鹿にして笑い飛ばしてください……。
私が悲しみに打ちひしがれる中、ようやくハインツはズボンを受け取ってくれた。私の心情を察して気を使ってくれたのかな。ごめんね、本当に申し訳ない。私も人のことを言えないくらいに暴走してしまっている。ちゃんと説明すればハインツだって分かってくれたはずなのに、私が勝手に突っ走ってしまったのだ。
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