それなりに怖い話。

只野誠

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まよなかのべんじょ

まよなかのべんじょ

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 男は年を取っていた。
 結構いい歳だ。
 だからだろうか、よく夜中に尿意を催して起きるのだ。

 男の家のトイレは長い廊下の先にある。
 半分寝ぼけながらも男はトイレまでたどり着き、便座を上げる。

 そして、用を足し始める。

 寝ぼけていたせいもあり、男はトイレを開けたまま、用を足し始めてしまう。
 男が用を足していると、廊下の電気が、パチン、という音を立てて突然消える。
 振り返らなくても光の明暗でそれが男にもわかる。

 それに今は用を足している最中で下手に振り向けないし動けもしない。
 男は嫌な物を少し感じながら、速く終わらないかと考え始める。

 だが、その時の尿は、なぜか出続ける。
 止まることなく出続ける。

 こんなに水分を取った覚えはない、と、そう考えてしまうほど出続ける。
 流石に男もおかしいのではないか、そう思っていると、廊下から誰かが歩く音が聞こえて来る。

 ギィ、キィ、ギィと床を鳴らし、誰かがゆっくりと男に近づいてくる足音がするのだ。
 男は自分の妻の名を呼ぶ。
 だが、返事はない。

 子供名を呼ぶ。
 やはり返事はない。

 男は嫌なものを感じつつ、速く出し終わってくれ、と心の中で願う。

 ついに聞こえて来ていた、足音が男の真後ろまでやってくる。
 男の鼓動が激しく脈打つ。

 次の瞬間だ。

 激しくトイレのドアが閉められる。
 バンッ、と真夜中に結構な音を立てて閉められる。
 そのショックであれだけ止まらなかったものがすぐに止まる。
 男は驚きはしたが、妻か、と納得して、落ち着いてから寝床へと帰る。

 そして、寝床で熟睡している妻を見る。
 起きた様子はない。

 じゃあ、子供だったのか? と、男は思う。
 翌朝に聞くが、確かに夜中に名前を呼ぶ声が聞こえてそれで起きたが、ベッドからは出ていない、という。
 そのあと、大きな音が聞こえては来た、と、男の子供は証言をした。

 それなら起きたなら来てほしかった、と男は思いつつも、あのトイレのドアを閉めたのは誰だったのか、わからずじまいだ。




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