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第二部
04:猫又さまと若葉
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若葉はルナちゃんを『光ってる猫』と言った。
さっき起きたことを見ていないのに。
(あれ? でもそういえば)
若葉は小さい頃から不思議なことをよく言っていたような気もする。
不意にその時のことが蘇ってきそうだったが、記憶を遮るように若葉は続ける。
「猫又じゃないけど、ただの猫でもないよね」
「え」
若葉ははっきりと『猫又』と口にした。ルナちゃんは『猫又ではない』と。
「で、ミケは猫又になったってわけ……」
そして、わたしの腕の中のミケを見た上で、『猫又』と断定する。
お母さんも驚いて目を真ん丸にしていた。
「まって、若葉。理解が追いつかないんだけど!」
わたしよりも状況把握が早い。早すぎる。この数カ月、会ってもいないのに。
特にルナちゃんのことに関しては。
ルナちゃんも、一瞬面喰ったかのように沈黙したけど。
「――若葉さま、でしたね」
ルナちゃんが、若葉の言葉を肯定するように続ける。
「いい『目』をお持ちですね。それに、薄膜程度とはいえ金色のオーラの方は久方ぶりに見ました」
オーラ……? 金色? 若葉が!?
さっきまでの事でも混乱していたのに。今日はもうこれ以上何かが起こるのは勘弁してほしいぐらい。
「喋れるんだ。ていうことは拾われたってわけでもなさそう」
「自己紹介が遅れ、申し訳ありません。ルナと申します。ミケさまの教育係を務めさせていただくことになりました。どうぞお見知りおきくださいませ」
「ふうん。しっかりしてるし、変なものじゃなさそうで安心した」
何がなんだか。わたしとお母さんは二人の会話を見守るしかない。
「うちの近くでも一匹、光ってる猫見たけど。それは?」
「おそらくルイかと。ルナと同じく、あるお方の眷属です」
「――眷属ね。そっちも後で詳しく教えて。最近変なのがうろついてて、まりなの調子も悪かったから気になってたけど、こっちの問題じゃなかったんなら安心した」
ふと、若葉の口から出た名前。それにはさすがに反応する。
まりなちゃんは、若葉の結婚相手。妊娠中のはずだ。
若葉は結婚を機に家を出て、職場近くに引っ越した。だからこそ、会う機会も減っていた。
「まりなちゃん体調悪いの?」
「今朝、出血が酷くてさ。病院に連れて行ったんだけど、切迫流産しかけてたから、緊急入院した。このまま安定するまで入院するって。その報告もしたかったから今日寄ったんだけど」
「まりなちゃん、やっとつわり落ち着いたって言ってたばかりなのに……」
お母さんも心配そうにしている。まりなちゃんはつわりがひどくて、体重も増えなかった。それがやっと安定したと聞いて安心していたけど。
「やっと食べれるようになって、俺も安心してたんだけどね……。それで、まりなのつわりがひどくなったぐらいから、前ほどじゃないけど見えるようになってきてさ」
「そういえば」
そうだ。若葉は、不思議なものが『見えて』いた。いつからか、それもなくなったって言っていた。
――多分、あれは若葉が五歳ぐらいの時。
わたしは可愛い犬がいる! と喜んで近寄ろうとしたけど。若葉に止められたんだ。
「小さい頃に見た『犬っぽい』のと、まりなを連れて行く時に目が合った」
――『犬っぽい』が、化け犬と繋がる。
「もしかしたら、若葉さまの金色に惹かれたのかもしれませんね。ですが、今の彼らの目的はこちらですので――まりなさまに害が及ぶことはないと思います」
「っお母さん、とにかく、それ玄関に撒いてきてもらっていい……?」
そこで、先ほどからピッチャーを持ったままだったお母さんに、声をかける。
「あ、うん」
お母さんは慌てて外に出た。既に17時半。夏の遠い空と比べると、随分重くなったはずだ。
わたしの位置からは見えないけど、玄関から入って来た冷たい風が頬を撫でた気がした。
若葉は深くため息をつき、ぶれることない言葉で続けた。
「なんか色々あるみたいだな。お父さんが帰ったら詳しく話聞かせて」
さっき起きたことを見ていないのに。
(あれ? でもそういえば)
若葉は小さい頃から不思議なことをよく言っていたような気もする。
不意にその時のことが蘇ってきそうだったが、記憶を遮るように若葉は続ける。
「猫又じゃないけど、ただの猫でもないよね」
「え」
若葉ははっきりと『猫又』と口にした。ルナちゃんは『猫又ではない』と。
「で、ミケは猫又になったってわけ……」
そして、わたしの腕の中のミケを見た上で、『猫又』と断定する。
お母さんも驚いて目を真ん丸にしていた。
「まって、若葉。理解が追いつかないんだけど!」
わたしよりも状況把握が早い。早すぎる。この数カ月、会ってもいないのに。
特にルナちゃんのことに関しては。
ルナちゃんも、一瞬面喰ったかのように沈黙したけど。
「――若葉さま、でしたね」
ルナちゃんが、若葉の言葉を肯定するように続ける。
「いい『目』をお持ちですね。それに、薄膜程度とはいえ金色のオーラの方は久方ぶりに見ました」
オーラ……? 金色? 若葉が!?
さっきまでの事でも混乱していたのに。今日はもうこれ以上何かが起こるのは勘弁してほしいぐらい。
「喋れるんだ。ていうことは拾われたってわけでもなさそう」
「自己紹介が遅れ、申し訳ありません。ルナと申します。ミケさまの教育係を務めさせていただくことになりました。どうぞお見知りおきくださいませ」
「ふうん。しっかりしてるし、変なものじゃなさそうで安心した」
何がなんだか。わたしとお母さんは二人の会話を見守るしかない。
「うちの近くでも一匹、光ってる猫見たけど。それは?」
「おそらくルイかと。ルナと同じく、あるお方の眷属です」
「――眷属ね。そっちも後で詳しく教えて。最近変なのがうろついてて、まりなの調子も悪かったから気になってたけど、こっちの問題じゃなかったんなら安心した」
ふと、若葉の口から出た名前。それにはさすがに反応する。
まりなちゃんは、若葉の結婚相手。妊娠中のはずだ。
若葉は結婚を機に家を出て、職場近くに引っ越した。だからこそ、会う機会も減っていた。
「まりなちゃん体調悪いの?」
「今朝、出血が酷くてさ。病院に連れて行ったんだけど、切迫流産しかけてたから、緊急入院した。このまま安定するまで入院するって。その報告もしたかったから今日寄ったんだけど」
「まりなちゃん、やっとつわり落ち着いたって言ってたばかりなのに……」
お母さんも心配そうにしている。まりなちゃんはつわりがひどくて、体重も増えなかった。それがやっと安定したと聞いて安心していたけど。
「やっと食べれるようになって、俺も安心してたんだけどね……。それで、まりなのつわりがひどくなったぐらいから、前ほどじゃないけど見えるようになってきてさ」
「そういえば」
そうだ。若葉は、不思議なものが『見えて』いた。いつからか、それもなくなったって言っていた。
――多分、あれは若葉が五歳ぐらいの時。
わたしは可愛い犬がいる! と喜んで近寄ろうとしたけど。若葉に止められたんだ。
「小さい頃に見た『犬っぽい』のと、まりなを連れて行く時に目が合った」
――『犬っぽい』が、化け犬と繋がる。
「もしかしたら、若葉さまの金色に惹かれたのかもしれませんね。ですが、今の彼らの目的はこちらですので――まりなさまに害が及ぶことはないと思います」
「っお母さん、とにかく、それ玄関に撒いてきてもらっていい……?」
そこで、先ほどからピッチャーを持ったままだったお母さんに、声をかける。
「あ、うん」
お母さんは慌てて外に出た。既に17時半。夏の遠い空と比べると、随分重くなったはずだ。
わたしの位置からは見えないけど、玄関から入って来た冷たい風が頬を撫でた気がした。
若葉は深くため息をつき、ぶれることない言葉で続けた。
「なんか色々あるみたいだな。お父さんが帰ったら詳しく話聞かせて」
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