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第二部
11:猫又さまの診察
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十一時少し前に病院に着いた。受付表を書いて、少し待つ。
思ったよりも早く呼ばれて、前回と同じく一番奥に通される。
待合室でもずっとくしゃみしてたし、早く治ってほしいな。
コンコン、とノックの音がした。
「花屋敷さん、入りますね」
「はい」
(あ、注射の時に前までは看護師さんに抑えてもらってたけど)
どうしよう。と思ってたら、神崎先生と――もう一人、白衣を着た女性が入って来た。
え、誰? どうして?
と思っていたら、神崎先生が扉を閉め、
「娘です。全て知っているので安心してください」
そう続けた。
女性はわたしに頭を下げ、口を開いた。
「神崎の娘で、岡本と申します。二週間ほど前からこちらで獣医師として勤めています。猫又のことも、幼い頃から知っていますのでご安心ください」
「――あ、そうなんですね……!」
(そっか。一瞬びっくりしたけど……神崎先生は神谷さんとお知り合いだったし、娘さんもクロちゃんと関わりあったのかも)
「はい。ここを継いでくれるそうです。もう一人の娘も、来月には動物看護師としてここで働きます」
「娘さんが獣医師と動物看護師なんですか?」
「そうなんですよ。私も来年七〇歳になりますので、助かります。ですので、本日のミケちゃんの診察は岡本先生が担当しますね」
(わ、親子なのにちゃんと切り替えてる。すごいな)
「さっそくミケちゃんの診察しましょうか。くしゃみひどいですし」
「よろしくお願いします。ミケ―」
わたしはキャリーを開けて、ミケを抱き上げる。
「まず、体重は……うん、以前と変わりないですね。次は体温測りますね……熱もないですね」
岡本先生がてきぱきと診察をする。ミケは時折『うう』と唸っているけど……。
「では、身体も触っていきますね」
首のリンパ、腋窩リンパ、膝下リンパのところを両側から両手で確認していき、聴診器で肺や心臓の音を聞いていく。
「リンパの腫れも大丈夫ですね。じゃあ次は顔をみていきますね」
先生は、鼻だけではなく、目も瞼をめくるようにして見ていく。
「鼻水は粘りがあって黄色みがかってますね。目の粘膜も少し腫れているので結膜炎も起こしてます。涙も出てますか?」
「そう言われてみれば涙も出てるかも……」
「食欲や元気は変わりないですか?」
「はい、いつもと変わらないです。」
うーん、と岡本先生はパソコンで以前のカルテを見る。
ミケはというと、わたしの腕に頭を突っ込むようにして震えてる。そして、またくしゃみ。去年よりひどそう。
「そうですね……同じ症状の時は毎回注射にされてますけど、今回もそうされますか?」
「はい、お願いします」
「抗生剤の注射は2週間効果が続きますが、消炎剤の薬は1日しか効果ないので液体の薬を2日ほど出しておきますね。それは頑張って飲ませて下さいね」
「う、はい。頑張ります……」
「それじゃ、ミケちゃん少し頑張ろうね」
岡本先生は優しくミケに話かけた。
流れるように神崎先生が優しくミケを押さえ、岡本先生が注射する。
「――はい、ミケちゃん頑張ったね。強い。いい子」
「んにゃ……」
喋るかどうか迷ったミケが、褒められたことに返事をする。
「では、前回と同じ点鼻薬をお出しします。それと、今回は結膜炎も起こしているので点眼薬もお出ししますね。使い方はわかりますか?」
「はい、大丈夫です」
わたしは頷いて、ミケの頭を撫でる。
点眼も初めてじゃないから、なんとかなるはず。
「ミケ、終わったよ~。いい子だったね」
わたしもミケを褒めて、キャリーケースに戻す。
あとはお薬を貰って、お会計して帰るだけ、と思っていたけど。
「花屋敷さん、ミケちゃんのことで相談したいのですが」
「……? はい」
神崎先生と岡本先生が真剣な顔でこちらを見た。嫌なことを想像しかけて、ぐっと思考を押さえる。『引き寄せて』しまうかもしれないから。
けれど、先生が口にしたのは予想外のことだった。
思ったよりも早く呼ばれて、前回と同じく一番奥に通される。
待合室でもずっとくしゃみしてたし、早く治ってほしいな。
コンコン、とノックの音がした。
「花屋敷さん、入りますね」
「はい」
(あ、注射の時に前までは看護師さんに抑えてもらってたけど)
どうしよう。と思ってたら、神崎先生と――もう一人、白衣を着た女性が入って来た。
え、誰? どうして?
と思っていたら、神崎先生が扉を閉め、
「娘です。全て知っているので安心してください」
そう続けた。
女性はわたしに頭を下げ、口を開いた。
「神崎の娘で、岡本と申します。二週間ほど前からこちらで獣医師として勤めています。猫又のことも、幼い頃から知っていますのでご安心ください」
「――あ、そうなんですね……!」
(そっか。一瞬びっくりしたけど……神崎先生は神谷さんとお知り合いだったし、娘さんもクロちゃんと関わりあったのかも)
「はい。ここを継いでくれるそうです。もう一人の娘も、来月には動物看護師としてここで働きます」
「娘さんが獣医師と動物看護師なんですか?」
「そうなんですよ。私も来年七〇歳になりますので、助かります。ですので、本日のミケちゃんの診察は岡本先生が担当しますね」
(わ、親子なのにちゃんと切り替えてる。すごいな)
「さっそくミケちゃんの診察しましょうか。くしゃみひどいですし」
「よろしくお願いします。ミケ―」
わたしはキャリーを開けて、ミケを抱き上げる。
「まず、体重は……うん、以前と変わりないですね。次は体温測りますね……熱もないですね」
岡本先生がてきぱきと診察をする。ミケは時折『うう』と唸っているけど……。
「では、身体も触っていきますね」
首のリンパ、腋窩リンパ、膝下リンパのところを両側から両手で確認していき、聴診器で肺や心臓の音を聞いていく。
「リンパの腫れも大丈夫ですね。じゃあ次は顔をみていきますね」
先生は、鼻だけではなく、目も瞼をめくるようにして見ていく。
「鼻水は粘りがあって黄色みがかってますね。目の粘膜も少し腫れているので結膜炎も起こしてます。涙も出てますか?」
「そう言われてみれば涙も出てるかも……」
「食欲や元気は変わりないですか?」
「はい、いつもと変わらないです。」
うーん、と岡本先生はパソコンで以前のカルテを見る。
ミケはというと、わたしの腕に頭を突っ込むようにして震えてる。そして、またくしゃみ。去年よりひどそう。
「そうですね……同じ症状の時は毎回注射にされてますけど、今回もそうされますか?」
「はい、お願いします」
「抗生剤の注射は2週間効果が続きますが、消炎剤の薬は1日しか効果ないので液体の薬を2日ほど出しておきますね。それは頑張って飲ませて下さいね」
「う、はい。頑張ります……」
「それじゃ、ミケちゃん少し頑張ろうね」
岡本先生は優しくミケに話かけた。
流れるように神崎先生が優しくミケを押さえ、岡本先生が注射する。
「――はい、ミケちゃん頑張ったね。強い。いい子」
「んにゃ……」
喋るかどうか迷ったミケが、褒められたことに返事をする。
「では、前回と同じ点鼻薬をお出しします。それと、今回は結膜炎も起こしているので点眼薬もお出ししますね。使い方はわかりますか?」
「はい、大丈夫です」
わたしは頷いて、ミケの頭を撫でる。
点眼も初めてじゃないから、なんとかなるはず。
「ミケ、終わったよ~。いい子だったね」
わたしもミケを褒めて、キャリーケースに戻す。
あとはお薬を貰って、お会計して帰るだけ、と思っていたけど。
「花屋敷さん、ミケちゃんのことで相談したいのですが」
「……? はい」
神崎先生と岡本先生が真剣な顔でこちらを見た。嫌なことを想像しかけて、ぐっと思考を押さえる。『引き寄せて』しまうかもしれないから。
けれど、先生が口にしたのは予想外のことだった。
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