私のお猫さま 25歳を迎えて猫又さまになりました

月見こだま

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第二部

幕間:裏側

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 花屋敷まりなはゆっくりと目を開いた。見慣れない天井と、硬いベッド。さらりとしたシーツの感触に、嫌でもここが病院だと思い知らされる。

(若葉、心配しただろうな)

 手の甲から伸びる点滴を見て、まりなは大きくため息をついた。しかし、これはまりな自身がどうこうできるものではない。
 きょろ、と視線を巡らせて、『お守り』が近くにあることを確認する。小さなガムランボールのついた、ヘーゼル色のお守り。まりなが大切にしているのを知っているから、若葉が目のつくところに置いておいてくれたのだろう。

『――ルイ』

 まりなはお守りに向かって、名を呼ぶ。それは、若葉の言う『金色の猫』であり、クロの眷属の名。

『ルイ。聞こえてたらでいい。クロに伝えて』
『――! まりな、体調は大丈夫か』
『ありがと。もう大丈夫だと思う。でも、私は暫く動けない』
『わかってる。それで、何を伝えたらいい?』
『予定が狂ったみたい。猶予はなくなったって伝えて。――それと』
『!』
『顔ぐらい見せてって言っといて』
『……伝えておく』
『うん。ありがとう』

(そう。約束は果たすものだよ)

 まりなは目を伏せて、お腹をさすった。無事でよかった、という安堵。
 そして。

(もうすぐ願いが叶うよ、クロ)





 化け犬が発するにおいはひどいものだった。寸前で退避したとはいえ、完全に避けられるものではなかった。雨のにおいに加え、焼け焦げた肉と血のすえたにおいだ。背を向けたため、尻から尾にかけてひどい火傷を負っている。

「申し訳ございません、申し訳ございません……!!」
「ご、ごめんなさい、ごめんなさいっ!!」

 しかし、化け犬はそんな自分たちの傷よりも、オレの負ったかすり傷の方が気になるようだった。

「気にするな。すぐに治る」

 こいつらを影に戻す時の火傷だが、一日もあれば元に戻るような傷だ。

「みけ様のお体に傷をつけるなど……!」
「お、おれたちを、助けたせいで……!!」

 そんなかすり傷を見て、情けない声で鳴くとは。いい加減うんざりだ。

「オレが気にするなと言っている」

 強く言えば、『クゥン』と一声鳴く。そう、気にする必要はない。

「お前たちはさっさと傷を癒せ」
「は、はい」
「かしこまりました、みけ様」

 とぷん、と影が揺れる。ようやく静かになった。

「――黒の九尾」

 かつて、オレの左耳と眼球をえぐり取った猫又。元に戻すのに、どれほどの妖力を消耗したか。その上――
 オレはぴりっとひりつく火傷を握り込んだ。




「お前はゆっくり食ってやろう」

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