私のお猫さま 25歳を迎えて猫又さまになりました

月見こだま

文字の大きさ
52 / 62
第四部

09:引き寄せたエンディング

しおりを挟む

 『みけ』は化け犬たちの傷があったところを改めて確認している。

「完全に癒えてるな」

 そう呟いて、ほっとしたように呟いた。この子たちの関係は詳しく知らないけど、お互いに大切な存在だというのは伝わった。

 犬たちも今は落ち着いているのか、柴犬ぐらいの大きさでしっぽを振っている。

「この子たちは女の子と男の子?」

 顔つきと声でそうかな、と思って聞くと、『みけ』は頷いた。

「そうだ、こっちが雌でこっちが雄」

 凛々しいきつね顔で、耳が立っている子が女の子。狸顔で耳が垂れてる子が男の子だという。
 どっちもしっぽがふさふさしてる。

「ふふ、可愛い~……いたッ」

 思わずつぶやくと、ミケから猫パンチが飛んできた。
 また浮気者って思ったんだろうな……。

「もう、ミケったら――、」

 続けようとして、ふと考える。みけ、という響きが二人いる。これは後々不便だ。

 うーん、と少し唸って、ひらめいた。


「キャリ」

 いい名前では? と思って、少年の顔をした三毛猫をのぞき込む。
 金色の瞳が真ん丸になって、こちらを見た。

「……は?」
「名前! 『みけ』だとうちのミケとかぶっちゃう。ほら、三毛猫ってキャリコキャットっていうし」

 きっと、もう『みけ』は本当に望むように生きられる。だったら、新しい名前で生きてもいいんじゃないかと思った。
 すると、ミケの表情がぱあっと明るくなった。

「キャリ! 響きが可愛いにゃ! 気に入ったにゃ!」
「呼びやすくていいな。わしもそう呼ぼう」
「おい!」

 ミケにクロも便乗する。キャリは反論の声をあげるけど、もうこれは決定の方向だと思う。きょうだいたちがいいって言ってるし。

「――うん、まあ呼びやすいかも」

 暫く考えるそぶりを見せた若葉も、頷いた。

「くそ、お前ら!!」

 若葉も乗ってしまったので、キャリも諦めたっぽい。うんうん。いいね。
 それを見ていた化け犬たちも大きく頷いている。

「みけ様……いや、キャリ様が楽しそうでよかった」
「よ、よかった、キャリ様、楽しそう」

 化け犬たちが喜ぶ。

「そうだ、化け犬ちゃんたちには名前あるの?」
「名前らしい名前ではございませんが。わんこと呼ばれてました」
「お、おれは、わんたって呼ばれてた」
「それはまた……」

 女の子がわんこ、男の子がわんたって……。記号じゃないんだから……。

「三毛猫にミケって名付けたお前がそれを言うか」
「うっ、その頃はまだわたしも小さかったもん」
「キャリコキャットからキャリをとるあたり、今でも安直だと思うけど」

 クロに突っ込まれ、返したところで若葉にも突っ込まれる。あんたたちだって、さっきノってきたくせに。

「うるさいなあ。可愛いしいいじゃん」
「可愛いにゃ!」

 そうそう、可愛いし解決! ミケも大賛成してるし。

「……ふん、なんでもいい。せっかくだ。犬たちにも名前をつけてくれ」

 受け入れたらしいキャリはそう言ってわたしを見る。いや、こうやってまじまじ見ると……ほんとにこの子可愛いな……!?

(耳としっぽが動いてるのがほんとたまんないっ)

 撫でたい衝動を抑えて、咳払いする。改めて、犬たちの顔を見る。

「そうだなあ、男の子がライトで、女の子がユメかな」

 光と夢。うん、これから向かう先って思ったらいいかも!

「――ふむ。お前たちどうだ?」

 キャリが確認する。ふさふさのしっぽは大きく揺れていた。

「ぜひ、今後はユメと」
「お、おれは、ライトか……いいな」
「……感謝する」
「ふふ、素直」
「笑うな」
「こんな風に終われるって思ってなかったから」

 キャリがわずかにほほ笑むのを見て、安堵した。

 本当は。もっと絶望的に終わるかもって思ってた。ううん。今だって、本当は解決してないことの方が多い。これからまたいっぱい悩むことがある。それでも。


「今日はいい日だなって」
「――なんだ、それは」


 

 見上げた空は、とても澄んでいた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。

黒蜜きな粉
恋愛
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。 その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。 王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。 だから、泣かない。縋らない。 私は自分から婚約破棄を願い出る。 選ばれなかった人生を終わらせるために。 そして、私自身の人生を始めるために。 短いお話です。 ※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

処理中です...