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右隣の男 after story
番外編 『化け物の回想 または 神話』
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始まりは 人。
毒矢を射られ 山に倒れた。
次は 烏。
その屍肉を喰らい 毒に倒れた。
最後は 大蛇。
苦しみに暴れる烏を ひと飲み。
毒など効かない。
喰らわれた魂は 喰らった魂に縋り付いた。
無念だ 無念だ と。
そうして
我 が 生まれた。
ただ 肉を 喰らう 日々。
何年も 何年も 何十年も 何百年も。
その日も ただ 肉を喰らっただけ。
腹が満ちて
近くの 小さきもの は
捨て置いた。
それからだ。
小さきもの が
我を
『リュウジンサマ』
と 呼んだのは。
我に 名 など 要らぬ。
されど 小さきもの は
我を
『リュウジンサマ』
と 呼ぶ。
我は 小さきもの に
触れたくなった。
あまりに 永き 時を 生き
飽いて いたのだ。
我は かつての
『人』の 形に
なった。
ある日 『長』 と 名乗る男 が
我に 求めた。
『どうか、村には来ないでほしい。
人の肉は喰らわないでほしい。
その代わり、
あなた様の大切なものは奪わない』
と。
我は 答えた。
従う 道理が ない。
男は
『私の身を捧げる』
と 言った。
我は 面白いものが 好きだ。
『長』は 盟約 どおり
我に 身を 捧げた。
我は 人の子が するように
毎夜 毎夜 『長』を 犯した。
『長』は
『イタイ』『サケル』『ヌイテ』『ユルシテ』
と 尻から血を流し 鳴いていた が
身体中を 舐めてやると そのうち
『アッアッ』『イイ』『ソコ』『モット』
と 甘く 鳴くように なった。
『長』は
我が 泉で 水浴びする姿を 見て
『カララク』 と
呼ぶようになった。
『烏』。
『長』が くれた 我の 名。
ほわりと 温かい。
『長』は 我の 黒い翼を 恐れない。
我の 闇に光る 眼を 『綺麗だ』と言う。
『長』は 我と 共に
『家』という 住処を 作った。
洞窟より 明るい。
我には 狭いが
『長』は 『心地よい』と 言う。
『長』は
『布』を 作った。
『服』を 作った。
毛皮より 柔らかい。
我には 窮屈だが
『長』と 同じ 良い匂いがする。
『長』は
『薬』を 作った。
『痛い』に 塗ると
『痛い』が 消えた。
『長』は 肉を 『焼く』。
『ナマ』で 喰らうと
『長』は 『シヌ』と言う。
『干し肉』は 『好き』と 言う。
草を 『茹でる』。
草など 我は 『好き』 ではない が
『長』と共に 喰らうと
何故か 『美味い』 気が する。
だが 『好き』 ではない。
草を 喰らう 我の顔を 見て
『長』は 『笑う』。
その顔を 我は
『好き』 だと思った。
『長』は 我に 抱かれると
『私は男だから、あなたの子を孕めない』
『孕みたい』
『あなたを一人にしたくない』
そう言って
『泣く』 ようになった。
その顔は
『好き』 だが
『好き』 ではない。
腹や 胸が 『痛い』 になる。
『子』 など 要らぬ。
我は 『長』が 共にあれば 良い。
やがて 時は 過ぎ
『長』は 枯れた。
草や 花の ように。
『あなたが愛おしい』
『長』は 最後に 言った。
触れると 温かかった
『長』が 冷たくなっていく。
何の 音も しない。
呼吸も 鼓動も 聞こえない。
腹?
胸? が
おかしい。
我は 動かない『長』を 抱いて
洞窟の 奥に 眠った。
目を覚ますと 『長』は
白い骨に 変わっていた。
我は 『長』を 飲みこみ
また 眠った。
時は 流れた。
山が騒がしい。
『風』という美しい子。
『牙』という美しい子。
『山へ行ってはならぬ』と
『村長』に 叱られようと
『蔵』に 閉じ込められようと
我の元へ 『遊び』に 来る。
その子らも、
『長』と同じように、
我に『言葉』を教えた。
その代わり、
我は2人に『狩りの仕方』を教えた。
『牙』は、我の大太刀を褒めた。
持たせてみたが、
『重すぎる』と肩を落とした。
『長』が使っていた『弓』を
教えてやると、
すぐに上手くなった。
『風』は『狩り』より、
『長』が作った、我の『服』を褒めた。
山へ来るたびに見せていたら、
同じような『模様』の『服』を
新しく作ってくれた。
2人は『夫婦』?『伴侶』? になった。
何が変わったか、分からぬが。
あぁ、匂いが混ざり合っているようだ。
『いつも共にあるもの』の事らしい。
山へ訪れては、
我に『ありがとうございます』と言う。
『子が生まれました』
と言う。
2人が『幸せ』だと、
我も『嬉しい』。
ある日、『風』が来なくなった。
『牙』は、我の側で泣いていた。
『風』は『ジシ』したのだと、泣いた。
『会いたい』と、泣いた。
『ジシ』とは? と問うと、
『牙』は我の前に来なくなった。
我は遠くから、
『小さきもの』を2人連れて山を訪れる
『牙』を見守った。
気が向くと、
熊を狩り、猪を狩り、
『肉』や『毛皮』を与えた。
『牙』の好む『草』や『実』を与えた。
『牙』は遠くから我を見て、
頭を下げるようになった。
その口は、『ありがとうございます』と
動いていた。
やがて『牙』も山へ来なくなった。
あぁ、『長』のように、『枯れた』のだ。
と思った。
我に身を捧げ、
我に『愛おしい』と言った『長』。
あの男のように、
『牙』が『枯れた』のだ。
……『風』も?
おかしい。
腹 が、
胸 が、
おかしい。
『寂しい』?
『悲しい』?
『長』は何と言っていた?
『風』は何と言っていた?
『牙』は何と言っていた?
『枯れた』、
『死んだ』、
『逝った』。
おかしい。
『痛い』。
おかしい。
どうすればいい?
『薬』を塗っても、飲んでも『痛い』。
『長』、教えて。
お前なら、なんでも知っているだろう?
お前の答えが、声が、聴きたい。
……あぁそうか、『牙』。
これが、『会いたい』か。
『風』
『会いたい』。
『牙』
『会いたい』。
『長』
『愛おしい』。
お前に『会いたい』。
『風』がいなくなった年から
洞窟の入り口に
毎年置かれる、白い花。
時に数本纏めて、
時に『輪』の形にして。
『風』も、この花を『輪』にしていた。
花を置いていくのは
『牙』が連れていた
『小さきもの』の1人だ。
『龍神様』と言うから、
我への捧げ物だろう。
山に生えた、ただの白い花が、
『小さきもの』の手で捧げられるだけで、
『宝物』のように思えた。
…そうだ。
『長』も、この花が好きだった。
我の髪を『飾る』、
指先が『綺麗』で。
『我は花が好きだ』と言うと、
お前は嬉しそうに笑ったのだ。
毎年住処へ持ち帰る、
『小さきもの』…『白い花の子』からの
捧げ物は増えていく。
吊り下げれば
『枯れて』も『綺麗』なままだった。
それを見ていると
腹や胸の『おかしい』『痛い』が、
少しだけ『楽に』なる気がした。
ある日、山に
『花』という美しい子が来た。
『風』に似ている?
『牙』に似ている?
何故か『長』にも似ている。
その匂いは、
あの『白い花の子』だった。
そうか、『花』は、
『風』と『牙』の子どもだ。
小さきものたちが恐れる、
我の眼を、背中を、翼を、
『花』は恐れなかった。
あの『愛おしい』者たち、のように。
我を『綺麗』と言う。
『花』は、白い花で作った『輪』を、
我の首にかけて笑う。
我は『花』の髪に、ひとつ『飾る』。
あぁ、『花』。
『綺麗』。
『愛おしい』。
この『花』も、
いつかは『枯れ』
…『死ぬ』のだろう。
それでも、共にいたい。
『伴侶』 になりたい。
今も共にいる『長』と同じように。
腹や、胸が、『おかしい』になっても。
『痛い』になっても。
『寂しい』、『悲しい』、『会いたい』が
この身を襲っても。
どうか、永き時を、共に。
どうか。
どうか。
そうか、これが『祈り』、か。
小さきもの、
『人』の
『心』というものが、
分かったような、
そんな気がしたのだ。
毒矢を射られ 山に倒れた。
次は 烏。
その屍肉を喰らい 毒に倒れた。
最後は 大蛇。
苦しみに暴れる烏を ひと飲み。
毒など効かない。
喰らわれた魂は 喰らった魂に縋り付いた。
無念だ 無念だ と。
そうして
我 が 生まれた。
ただ 肉を 喰らう 日々。
何年も 何年も 何十年も 何百年も。
その日も ただ 肉を喰らっただけ。
腹が満ちて
近くの 小さきもの は
捨て置いた。
それからだ。
小さきもの が
我を
『リュウジンサマ』
と 呼んだのは。
我に 名 など 要らぬ。
されど 小さきもの は
我を
『リュウジンサマ』
と 呼ぶ。
我は 小さきもの に
触れたくなった。
あまりに 永き 時を 生き
飽いて いたのだ。
我は かつての
『人』の 形に
なった。
ある日 『長』 と 名乗る男 が
我に 求めた。
『どうか、村には来ないでほしい。
人の肉は喰らわないでほしい。
その代わり、
あなた様の大切なものは奪わない』
と。
我は 答えた。
従う 道理が ない。
男は
『私の身を捧げる』
と 言った。
我は 面白いものが 好きだ。
『長』は 盟約 どおり
我に 身を 捧げた。
我は 人の子が するように
毎夜 毎夜 『長』を 犯した。
『長』は
『イタイ』『サケル』『ヌイテ』『ユルシテ』
と 尻から血を流し 鳴いていた が
身体中を 舐めてやると そのうち
『アッアッ』『イイ』『ソコ』『モット』
と 甘く 鳴くように なった。
『長』は
我が 泉で 水浴びする姿を 見て
『カララク』 と
呼ぶようになった。
『烏』。
『長』が くれた 我の 名。
ほわりと 温かい。
『長』は 我の 黒い翼を 恐れない。
我の 闇に光る 眼を 『綺麗だ』と言う。
『長』は 我と 共に
『家』という 住処を 作った。
洞窟より 明るい。
我には 狭いが
『長』は 『心地よい』と 言う。
『長』は
『布』を 作った。
『服』を 作った。
毛皮より 柔らかい。
我には 窮屈だが
『長』と 同じ 良い匂いがする。
『長』は
『薬』を 作った。
『痛い』に 塗ると
『痛い』が 消えた。
『長』は 肉を 『焼く』。
『ナマ』で 喰らうと
『長』は 『シヌ』と言う。
『干し肉』は 『好き』と 言う。
草を 『茹でる』。
草など 我は 『好き』 ではない が
『長』と共に 喰らうと
何故か 『美味い』 気が する。
だが 『好き』 ではない。
草を 喰らう 我の顔を 見て
『長』は 『笑う』。
その顔を 我は
『好き』 だと思った。
『長』は 我に 抱かれると
『私は男だから、あなたの子を孕めない』
『孕みたい』
『あなたを一人にしたくない』
そう言って
『泣く』 ようになった。
その顔は
『好き』 だが
『好き』 ではない。
腹や 胸が 『痛い』 になる。
『子』 など 要らぬ。
我は 『長』が 共にあれば 良い。
やがて 時は 過ぎ
『長』は 枯れた。
草や 花の ように。
『あなたが愛おしい』
『長』は 最後に 言った。
触れると 温かかった
『長』が 冷たくなっていく。
何の 音も しない。
呼吸も 鼓動も 聞こえない。
腹?
胸? が
おかしい。
我は 動かない『長』を 抱いて
洞窟の 奥に 眠った。
目を覚ますと 『長』は
白い骨に 変わっていた。
我は 『長』を 飲みこみ
また 眠った。
時は 流れた。
山が騒がしい。
『風』という美しい子。
『牙』という美しい子。
『山へ行ってはならぬ』と
『村長』に 叱られようと
『蔵』に 閉じ込められようと
我の元へ 『遊び』に 来る。
その子らも、
『長』と同じように、
我に『言葉』を教えた。
その代わり、
我は2人に『狩りの仕方』を教えた。
『牙』は、我の大太刀を褒めた。
持たせてみたが、
『重すぎる』と肩を落とした。
『長』が使っていた『弓』を
教えてやると、
すぐに上手くなった。
『風』は『狩り』より、
『長』が作った、我の『服』を褒めた。
山へ来るたびに見せていたら、
同じような『模様』の『服』を
新しく作ってくれた。
2人は『夫婦』?『伴侶』? になった。
何が変わったか、分からぬが。
あぁ、匂いが混ざり合っているようだ。
『いつも共にあるもの』の事らしい。
山へ訪れては、
我に『ありがとうございます』と言う。
『子が生まれました』
と言う。
2人が『幸せ』だと、
我も『嬉しい』。
ある日、『風』が来なくなった。
『牙』は、我の側で泣いていた。
『風』は『ジシ』したのだと、泣いた。
『会いたい』と、泣いた。
『ジシ』とは? と問うと、
『牙』は我の前に来なくなった。
我は遠くから、
『小さきもの』を2人連れて山を訪れる
『牙』を見守った。
気が向くと、
熊を狩り、猪を狩り、
『肉』や『毛皮』を与えた。
『牙』の好む『草』や『実』を与えた。
『牙』は遠くから我を見て、
頭を下げるようになった。
その口は、『ありがとうございます』と
動いていた。
やがて『牙』も山へ来なくなった。
あぁ、『長』のように、『枯れた』のだ。
と思った。
我に身を捧げ、
我に『愛おしい』と言った『長』。
あの男のように、
『牙』が『枯れた』のだ。
……『風』も?
おかしい。
腹 が、
胸 が、
おかしい。
『寂しい』?
『悲しい』?
『長』は何と言っていた?
『風』は何と言っていた?
『牙』は何と言っていた?
『枯れた』、
『死んだ』、
『逝った』。
おかしい。
『痛い』。
おかしい。
どうすればいい?
『薬』を塗っても、飲んでも『痛い』。
『長』、教えて。
お前なら、なんでも知っているだろう?
お前の答えが、声が、聴きたい。
……あぁそうか、『牙』。
これが、『会いたい』か。
『風』
『会いたい』。
『牙』
『会いたい』。
『長』
『愛おしい』。
お前に『会いたい』。
『風』がいなくなった年から
洞窟の入り口に
毎年置かれる、白い花。
時に数本纏めて、
時に『輪』の形にして。
『風』も、この花を『輪』にしていた。
花を置いていくのは
『牙』が連れていた
『小さきもの』の1人だ。
『龍神様』と言うから、
我への捧げ物だろう。
山に生えた、ただの白い花が、
『小さきもの』の手で捧げられるだけで、
『宝物』のように思えた。
…そうだ。
『長』も、この花が好きだった。
我の髪を『飾る』、
指先が『綺麗』で。
『我は花が好きだ』と言うと、
お前は嬉しそうに笑ったのだ。
毎年住処へ持ち帰る、
『小さきもの』…『白い花の子』からの
捧げ物は増えていく。
吊り下げれば
『枯れて』も『綺麗』なままだった。
それを見ていると
腹や胸の『おかしい』『痛い』が、
少しだけ『楽に』なる気がした。
ある日、山に
『花』という美しい子が来た。
『風』に似ている?
『牙』に似ている?
何故か『長』にも似ている。
その匂いは、
あの『白い花の子』だった。
そうか、『花』は、
『風』と『牙』の子どもだ。
小さきものたちが恐れる、
我の眼を、背中を、翼を、
『花』は恐れなかった。
あの『愛おしい』者たち、のように。
我を『綺麗』と言う。
『花』は、白い花で作った『輪』を、
我の首にかけて笑う。
我は『花』の髪に、ひとつ『飾る』。
あぁ、『花』。
『綺麗』。
『愛おしい』。
この『花』も、
いつかは『枯れ』
…『死ぬ』のだろう。
それでも、共にいたい。
『伴侶』 になりたい。
今も共にいる『長』と同じように。
腹や、胸が、『おかしい』になっても。
『痛い』になっても。
『寂しい』、『悲しい』、『会いたい』が
この身を襲っても。
どうか、永き時を、共に。
どうか。
どうか。
そうか、これが『祈り』、か。
小さきもの、
『人』の
『心』というものが、
分かったような、
そんな気がしたのだ。
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