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第四章 師匠との邂逅と新たな出会い

24話 戦いの終わり

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 青い炎がケイスニルを包み込むと全身を焼く。
その姿は炎の中で苦し気に藻掻いていたと思うと徐々に動きが鈍くなって行き、力無く倒れる。

「な、何なんですぞ!?、熱いっアンデッドなのに熱いですぞっ!」
「それはそうでしょう、不浄を燃やす火ですからね」
「……炎の中から人の気配がするわね」

……アンがそういうと大鎌を青い炎の中に入れて、引くようにして切る動作をすると炎が二つに裂けて中から狐の耳を持ち、四本の白くて先端が茶色い尾持つ糸目の獣人族の男性が現れた。

「いきなり攻撃する何て怖いですね……、危うく殺されるところでしたよ」
「……そういう割には無傷じゃない」
「アンさん、この人はいったい」
「狐の耳に、四尾の獣人族の男【幻死の瞳】グロウフェレスよ……、参ったわね言え心器が扱かえる元Aランク冒険者が二人いるのは分が悪いわね」

 アンがそういうとポルトゥスが無言で、彼女とダートを庇うように前に出て棺を盾のように構える。
グロウフェレス、確かこの人も指名手配されていた人だ……、雰囲気は優しそうなのに何処かしら怪しい雰囲気がある人だ。

「即座に治療致しましたが故、ですがそれでも体が上下に分かれる感覚は気持ち悪いものです……、さぁケイスニル、あなたの傷と毒は癒えたでしょう?」
「あぁ……、わりぃなフェレス、下手こいたわ」
「殺すと強い言葉を使いながらも、一度でも勝てると思った相手に油断するのが悪いのですよ、奥の手は自分が不利になる前に使う物です……、ところで皆様提案があるのですが宜しいでしょうか、そこのあなたもこちらに来て聞いて頂けませんか?」
「……提案?」

 言われた通りにダート達に合流すると、グロウフェレスは頭を下げて謝罪の意を示す。
そして頭をゆっくりと開けると切れ長の眼を開けていた、その瞳の色は黒い宝石のようで引き込まれるような魅力がある。

「ここはお互いに手を引きませんか?、あなた達は私達と戦うと無傷で済まない、こちら側も戦えば目的は達成出来ますが苦労に見合わないでしょう」
「……いいでしょう、ポルトゥス戦闘は終わりよ、戻りなさい」
「仕方ないですねぇ、私もアン様が殺される訳には行きませんからね、引かせて頂きますぞ」

 アンがそういうとポルトゥスが棺を開けて中に入ると自ら蓋を閉める。
すると棺がどんどん小さくなり棺の形をしたネックレスになると彼女はそれを拾い自身の首に掛けると服の中に隠す。

「……ダートに、レースさん、あなた達も武器をしまいなさい」
「そうだぜぇ?、少しでも敵意を向けてみろ、そこで気を失ってるクロウの命が危ないぜ?」
「……え?」

 クロウが横になっている場所を見ると、いつの間に移動したのか蠍の尾を生やしたケイスニルが毒針の先端をクロウの頭に向けてこちらを見ていた。

「……わかった、ダート、ダリアを返してもらっていいかな」
「うん……、あ、ダリア力を貸してくれてありがとう」
『……何かもう一人の俺にお礼を言われるのって変な感じだけどまぁいいか、気にすんなって伝えといてくれよ、だがもう力を貸さねぇからな?次からは自分の力で戦いやがれ』
「気にすんなだってさ、後はもう力を貸さないから次に戦う時は自分の力で戦ってくれだってさ」
「うん、今迄何度も私の変わりに戦ってくれて、戦う覚悟が出来てなかった私を支えてくれてありがとう、次からは私の力で頑張るから大丈夫だよ」

 受け取りながらそのような話をすると、ダリアが刀身を空間に収納して短杖になる。
ぼくはそれをベルトと腰の間に差すと自身の心器を消して無手になった。

「お話しが通じる相手でご安心致しました……、これは矛を収めて頂いたお礼代わりなのですが、今回町で起きた事は私の術で記憶を消しておきましたので、レースさんがグランツさんに誘拐された事は誰も知らないでしょう」
「……あなたお得意の術だったわね」
「えぇ、人を化かすのは私達狐の十八番ですからね」
「禁忌を侵さずに冒険者のままだったらどれほど便利な存在だったか……、本当に悔やまれるわね」
「ふふ、私達の主人……いやはや、これ以上お話しているとある事ない事言ってしまいそうなのでお暇させて頂きます」

 私達の主人?、もしかして以前ケイやアキに話を聞いた時に行ってたマスカレイドの協力者の事だろうか。
そうだった場合、ダートが以前言っていた、黄金色に輝く長い髪を腰まで伸ばし、黒い蝙蝠の羽と純白の鳥の翼を持った儚げな容姿の少女だろう。

「お話しは済みましたから行きますよケイスニル、後次回からは人質を取る何ていう低俗な事をするのをお止めなさい、その程度で負ける私達ではないでしょう?」
「けっ、わぁったよ、てめぇらも人質何て取っちまって悪かったな」
「では皆様、これにて……出来れば次は敵対したくないものですね」
「まぁ次やったら絶対俺が勝つけどなっ!」
「……あなたは後でお説教です」

……彼等がそんなやり取りをしながら青い炎に包まれて行き、少しずつ炎が弱まると共に姿も消えてしまう。
しかしその最中『かぁ……、まじかよぉ、――ム様の説教は怖いから勘弁してくれ」という声が微かに聞こえたけど、――ム様とはいったい誰なのだろうか。
そんな事を思いながらクロウの事を肉体強化を使って背負うと、ダートとアンに『取り合えず色々と話をしたいから家で話そう』と言って診療所を経由して自宅に帰ると、荒らされていた筈の家は綺麗に片付けられ穴を空けられた筈の玄関の扉は新しい物に交換されていた。
いったい誰が直してくれたのかと思っていると、アンの胸元から『私が掃除を致しました』というポルトゥスの声が聞こえたのだった。
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