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第八章 戦いの先にある未来

50話 新たな切り札

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 戻るまでの道中で試練の最後どうなったのかアキラさんに聞いてみたら……

「……まさか、あのような切り札を持っているとは思わなかった、雪で作った狼を使い恐ろしい威力の魔術を使い、本人はその後ろから追撃に出る連携、本来の力を出してなかったら死んでいたな」
「切り札って言うよりも……、思い付きで試して出来るかなぁって、あの高威力の魔術は長杖の能力で【魔力暴走】って言うんだけど、自身の魔力を全て使って放つ一回限りの術であれをやると魔力切れになるんだよね、でも今回は何故か分からないけどぼくの魔力が無くなってなかったから不思議で……」
「貴様は考えて戦うよりも思い付きで動いた方が良いのかもしれないな、ただ周りを巻き込まないように気を付けた方がいい、そうしないと私のように特定の人物としか組めないようになるからな……、まぁそれは問題無いだろうが、魔力暴走で魔力を失わなかった理由か、推測で良ければ聞くか?」
「お願いします」

 とりあえずアキラさんなりの考えを聞くと、心器の長杖を核として生成された結果能力を使えるようになった狼自身の魔力を使って放ったからだろうという話で、発動中に周囲の雪を取り込んでいた事から、精製された雪を魔力に戻して更に威力を増したのだろうという事だ。

「……それってつまり魔力の消費を肩代わりさせる事が出来たって事?」
「そうなるだろうな、あの攻撃を放った後に狼が砕けたのを見ると一回限りの固定砲台のようになるだろうが、二つの個体で同じ能力を使えるというのは恐ろしい物があるな、魔力暴走以外に長杖の能力は何がある?」
「えっと――」

 ぼく自身の能力である【高速詠唱、多重発動、空間移動】の三つと、産みの親である母の【自動迎撃、魔力暴走、怪力】……、前半の三つは単純に魔術や治癒術の発動が早くなるのと、一度に複数の術を発動させる事が出来る能力、そして最後に自身の魔力を消費した量により距離を無視した移動が出来る物だけど、狼が有効的に使えそうなのは3つ目位だろう。
後は後半のだけれど、自動迎撃は相手の攻撃に反応し自動で魔術が発動し迎撃する効果があるけど、狼の場合使ったらどうなるのだろうか……、魔力暴走は使えてたから省くとして、怪力の肉体強化の適正と力の能力を強制的に限界へ至せる変わりに、行動をする度に自傷ダメージを受ける以上は、使ったら雪で出来た身体が一瞬で壊れてしまうから使えない筈。
そう思うと……使えそうなのは空間移動と自動迎撃、魔力暴走で、周囲の雪を魔力に戻す事が出来るみたいだから、大剣の能力【大雪原】を使ったり、魔術の【スノーボール】で魔力を供給し続ける事が出来れば凄い有効的に使う事が出来るのではないだろうか。
取り合えず頭の中で浮かんだ事も含めて伝えて見ると……

「……とりあえず言いたい事を全部言うのではなく、私の反応を待ちながら話せ」
「あ……」
「だがまぁ、貴様の言いたい事を理解出来た範囲でまとめると……【空間移動、自動迎撃、魔力暴走】が狼の使える能力という事だな、確かに大剣の方の能力や魔術と合わせれば確かに素晴らしいが、その場合貴様の魔力に関してどうするかが問題だ、消費が激しい以上許容量を伸ばす必要があるが、そこをどうするかだな、私みたいに髪を伸ばすという手もあるが、直ぐに髪を伸ばすのは無理だろうからな……」

 悩んだような仕草をすると、羽のブローチを取り出して何故かぼくの服に付け始める。
……確かこれはアキラさんが結婚する時に妹のミコトから送られた大事な物だった筈だけど、そんな大事な物を受け取ってしまっていいのだろうか。

「このブローチには、所持者の魔力を溜め込む能力がある、以前は私の昔の能力を封じていたが、体に戻して役割を終えてしまったからな……ミコトには怒られるだろうが、友好的に使えるだろう貴様に渡した方がいいだろう」
「……そういう事なら受け取るけど、力を戻したってどうして今迄封じてたの?」
「アンと夫婦になる際にどうしても必要でな……、ミコトもそうだが、私達は種族の中でも突飛した能力を持っているからな、あえて封じて弱くなる事で相手に掛ける負担を減らしたという事だな」
「……負担っていったい?」
「あぁ……、まぁ敢えて人前で言う程の事ではないからな、色々とあったという事だ」

 何だか言い辛そうだけど、もしかしたら聞いては行けなかった事だろうか。
そうだったら申し訳ない事をしてしまった気がする……。

「まぁ、私の事よりもだ、このブローチに毎日自身の魔力を込めて行けばいい……、そして出来た魔力の塊を接種し取り込む事で魔力の回復が出来るからな、有効的に使ってくれ」
「……分かった、それならケイスニル達が来る時までずっと込め続けてみるよ、でもさ一つ気になるんだけど、能力を体に戻したって事はSランク冒険者の実力を取り戻したって事?」
「体に馴染むまでは時間が掛かるからな……、正直に言うのならレースが生きている間では完全な状態になる事は無いだろう、出来たと言っても一時的にしか無理だな、だから今回私はアナイス・アナイアレイトが来た時の足止め役を担当するつもりだ、一時的とはいえ……足止め位にはなるだろう、だから死ぬなよ?、だがまぁライとハスにサポートに入る様に伝えておくから問題無いとは思うが……」
「大丈夫だよ、ぼくにはダート達がいるから絶対に死なない、だから大丈夫」
「……そうか、なら安心させて貰うが、あまりダートに心配をかけすぎるなよ?新たに命が増えるという事は責任が増えるという事だ、この協力要請が済んだのなら出来る限り側にいてやれ」

……確かにアキラさんの言うように家に帰ったら出来る限り側にいてあげた方がいいだろう。
でもその前に一度ストラフィリアに行って、夫婦になる為の正式に手続きをすると共にミュラッカの様子も確認したいし、他にもやりたい事が沢山ある。
出来ればダートが本格的に遠出が出来なくなる前に済ませておきたいと思いつつ、その後は特に話す事も無くメイメイの部屋に戻ると、ダートみたいにこの国の民族衣装に身を包んだダリアが恥ずかしそうな顔をしながら皆でお茶を飲んでいるのだった。
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