2 / 25
第01話 個性がない?
しおりを挟む
「君って本当に個性がないよね」
「個性があるかどうか。このバザーには関係御座いません」
「これじゃぁ人は来てもつまらないと帰ってしまうよ」
「だったらもっと早く案を出して下さらないと!」
明日が開催日だと言うのに、やっとの事で設営し最後の点検をしている会場にやって来たサレス侯爵家のレオカディオが会場の設営担当を一手に引き受けていたモコ伯爵家のピレニーと言い合いを始めた。
★~★
スラム街の住民を救うため、王家とサレス侯爵家の共同で始まった事業。
先ずはそういう施策があるのだと知ってもらわねばならないとバザーを開催する事になった。
問題は当初から多く、どうやってバザーに来てもらうか。そこから始めなければならなかったのだが、なんせ決まってからの日がない。
「この日しか場所が取れません」という教会からの申し入れもあり、場所は決まったが出し物が決まらない。が、教会が指定した日まで5週間しかない。
モコ伯爵家のピレニーは婚約者のサレス侯爵家子息レオカディオをようやく捕まえる事が出来た。
サレス侯爵から「やってみろ」とフォローありきで任されているのに主任を任されたレオカディオがなかなか捕まらなかった。
朝早くなら屋敷にいるだろうと思えば、日帰りや3泊4日で出掛けていたり、各貴族への寄付を募る為だと高位貴族のご夫人が主催する茶会に出掛けていたり。
その茶会ですら飛び込み営業のようなもので、失礼に当たるためピレニーは友人達に「何時、何処で茶会が開かれるか」をリサーチし、「もしかするとサレス侯爵子息が伺うかも知れない」と断りを入れていた。
「坊ちゃん、全然来ませんね」
「ごめんなさいね。えぇっと・・・ここは年齢や病状に応じた支援金の申し込みも兼ねておきたいから少し広めにブースを取って下さる?」
何処の世も生きるための金が支給されるのだと知れば人は殺到する。
ピレニーもこれまで小規模なバザーには手伝いとして参加をしていたが、周知を兼ねているため内容を知ってもらわねばならずワークショップ的に幾つもブースを用意する必要があった。
「ここはどうします?」
「えぇっと・・・人の動線からすれば食事を持ち込まれると困るから簡易の衝立になるような・・・そうね。プランターとかで区切りをしましょう。行き来するスペースはプランターで道ですよって感じで配置をすれば良いかも知れないわ」
指示を出す人間はピレニーとサレス侯爵家から遣わされている数人の使用人。
その使用人も最終的な判断はピレニーに問うてくるのでここ数日ピレニーは寝る場所が馬車での移動中だけというハードスケジュールだった。
「やっと明日が開催日ね。なんとか間に合ったわ」
「良かったです。一時はどうなる事かと」
「子供達に配るお菓子と、ゲームで配るパンの手配は出来ているかしら」
「菓子店とパン屋にはそれぞれ5軒づつ声をかけています。材料も届いたから今夜は徹夜だと張り切っていたと小麦やタマゴを届けた者が言ってました」
サレス侯爵家の使用人とブースが倒壊しないか、順路を示すプランターは配置を間違っていないかを確認していると、まだ最後の材料搬入でごった返す入り口に大きくて立派な馬車が停まった。
誰だろうと見ていると、先に男性が。続いて屋外の会場設営で砂ぼこりも待っているのに煌びやかなドレス姿の女性が馬車から降りて来た。
――あぁ、ミジャン伯爵令嬢ね――
今朝、サレス侯爵家の使用人が夜も明けぬうちから会場には来ていたけれど、侯爵から「お前に任せた」と言われたレオカディオが会場に来たのは設営を始めてから今日にいたるまで35日の内僅か3日。
レオカディオが集めている言う寄付も2、3軒の子爵家が僅かばかりを持ってきただけで全く役に立っていなかったと言っていいだろう。
そんなレオカディオがミジャン伯爵家の令嬢アエラの手を取り、ゆっくりと近づいて来た。
「なんだこれは・・・これでは人も来ないじゃないか」
「だから言ったの。田舎者に任せたらこうなるって」
「全くだ。今からでいい。やり直せ」
バサリとピレニーたちの足元に投げつけてきたのはレオカディオがアエラと共に考えたプラン。
「こんな事を!開催は明日ですよ。無理です。変更なんて間に合いません!」
書類を拾い上げた使用人が内容を見て諦めにも似た声をあげた。
その声に周りにいた作業員たちも足を止めて注視し始めた。
「無理です。これじゃ説明を受けている場と飲食の場が一緒になっています」
「テーブルも少なくて済むでしょう?休みたいときに腰掛けるのが椅子と言うものよ?あら…ごめんなさい。田舎では草原に寝転がるのが休憩だったかしら?」
そう言いながらアエラが視線を移すのはピレニーが考えた子供達だけを集めて小高く持った盛り土にシートをかけて麻袋をソリに見立てて遊ぶキッズコーナーだった。
「あれは親御さんが説明を受けている時にお子さんがいるとどうしても話に集中でき――」
「で?子供が攫われたらどう責任を取るの?どんな話をしていようが子供の面倒をみるのが親の役目と言うものよ」
「遊ぶ子供には腰までのラティスで区切っていますから、割符を親と子供に渡し――」
「どうでもいいんだ。はやくこのプランに作り替えろ!誰が主任で、誰が責任を取ると思っているんだ?訳の解らないものを勝手に作られて責任だけはこっち任せ・・・気が知れないな」
「坊ちゃん!だったら坊ちゃんが――」
「おやめなさい」
間もなく日も落ちる。今からやって明日の開催時間に間に合うかどうか。
ごちゃごちゃ言っていても仕方がない。サレス侯爵から任されたのは目の前で理不尽を突きつける男。何度かサレス侯爵にもこのプランで良いかと確認して進めてきたのだが、責任が取れないとまで言われてしまえば仕方がない。
憤る使用人の前に出てピレニーはレオカディオとアエラが考えたプランに造り直すよう指示を出した。
「個性があるかどうか。このバザーには関係御座いません」
「これじゃぁ人は来てもつまらないと帰ってしまうよ」
「だったらもっと早く案を出して下さらないと!」
明日が開催日だと言うのに、やっとの事で設営し最後の点検をしている会場にやって来たサレス侯爵家のレオカディオが会場の設営担当を一手に引き受けていたモコ伯爵家のピレニーと言い合いを始めた。
★~★
スラム街の住民を救うため、王家とサレス侯爵家の共同で始まった事業。
先ずはそういう施策があるのだと知ってもらわねばならないとバザーを開催する事になった。
問題は当初から多く、どうやってバザーに来てもらうか。そこから始めなければならなかったのだが、なんせ決まってからの日がない。
「この日しか場所が取れません」という教会からの申し入れもあり、場所は決まったが出し物が決まらない。が、教会が指定した日まで5週間しかない。
モコ伯爵家のピレニーは婚約者のサレス侯爵家子息レオカディオをようやく捕まえる事が出来た。
サレス侯爵から「やってみろ」とフォローありきで任されているのに主任を任されたレオカディオがなかなか捕まらなかった。
朝早くなら屋敷にいるだろうと思えば、日帰りや3泊4日で出掛けていたり、各貴族への寄付を募る為だと高位貴族のご夫人が主催する茶会に出掛けていたり。
その茶会ですら飛び込み営業のようなもので、失礼に当たるためピレニーは友人達に「何時、何処で茶会が開かれるか」をリサーチし、「もしかするとサレス侯爵子息が伺うかも知れない」と断りを入れていた。
「坊ちゃん、全然来ませんね」
「ごめんなさいね。えぇっと・・・ここは年齢や病状に応じた支援金の申し込みも兼ねておきたいから少し広めにブースを取って下さる?」
何処の世も生きるための金が支給されるのだと知れば人は殺到する。
ピレニーもこれまで小規模なバザーには手伝いとして参加をしていたが、周知を兼ねているため内容を知ってもらわねばならずワークショップ的に幾つもブースを用意する必要があった。
「ここはどうします?」
「えぇっと・・・人の動線からすれば食事を持ち込まれると困るから簡易の衝立になるような・・・そうね。プランターとかで区切りをしましょう。行き来するスペースはプランターで道ですよって感じで配置をすれば良いかも知れないわ」
指示を出す人間はピレニーとサレス侯爵家から遣わされている数人の使用人。
その使用人も最終的な判断はピレニーに問うてくるのでここ数日ピレニーは寝る場所が馬車での移動中だけというハードスケジュールだった。
「やっと明日が開催日ね。なんとか間に合ったわ」
「良かったです。一時はどうなる事かと」
「子供達に配るお菓子と、ゲームで配るパンの手配は出来ているかしら」
「菓子店とパン屋にはそれぞれ5軒づつ声をかけています。材料も届いたから今夜は徹夜だと張り切っていたと小麦やタマゴを届けた者が言ってました」
サレス侯爵家の使用人とブースが倒壊しないか、順路を示すプランターは配置を間違っていないかを確認していると、まだ最後の材料搬入でごった返す入り口に大きくて立派な馬車が停まった。
誰だろうと見ていると、先に男性が。続いて屋外の会場設営で砂ぼこりも待っているのに煌びやかなドレス姿の女性が馬車から降りて来た。
――あぁ、ミジャン伯爵令嬢ね――
今朝、サレス侯爵家の使用人が夜も明けぬうちから会場には来ていたけれど、侯爵から「お前に任せた」と言われたレオカディオが会場に来たのは設営を始めてから今日にいたるまで35日の内僅か3日。
レオカディオが集めている言う寄付も2、3軒の子爵家が僅かばかりを持ってきただけで全く役に立っていなかったと言っていいだろう。
そんなレオカディオがミジャン伯爵家の令嬢アエラの手を取り、ゆっくりと近づいて来た。
「なんだこれは・・・これでは人も来ないじゃないか」
「だから言ったの。田舎者に任せたらこうなるって」
「全くだ。今からでいい。やり直せ」
バサリとピレニーたちの足元に投げつけてきたのはレオカディオがアエラと共に考えたプラン。
「こんな事を!開催は明日ですよ。無理です。変更なんて間に合いません!」
書類を拾い上げた使用人が内容を見て諦めにも似た声をあげた。
その声に周りにいた作業員たちも足を止めて注視し始めた。
「無理です。これじゃ説明を受けている場と飲食の場が一緒になっています」
「テーブルも少なくて済むでしょう?休みたいときに腰掛けるのが椅子と言うものよ?あら…ごめんなさい。田舎では草原に寝転がるのが休憩だったかしら?」
そう言いながらアエラが視線を移すのはピレニーが考えた子供達だけを集めて小高く持った盛り土にシートをかけて麻袋をソリに見立てて遊ぶキッズコーナーだった。
「あれは親御さんが説明を受けている時にお子さんがいるとどうしても話に集中でき――」
「で?子供が攫われたらどう責任を取るの?どんな話をしていようが子供の面倒をみるのが親の役目と言うものよ」
「遊ぶ子供には腰までのラティスで区切っていますから、割符を親と子供に渡し――」
「どうでもいいんだ。はやくこのプランに作り替えろ!誰が主任で、誰が責任を取ると思っているんだ?訳の解らないものを勝手に作られて責任だけはこっち任せ・・・気が知れないな」
「坊ちゃん!だったら坊ちゃんが――」
「おやめなさい」
間もなく日も落ちる。今からやって明日の開催時間に間に合うかどうか。
ごちゃごちゃ言っていても仕方がない。サレス侯爵から任されたのは目の前で理不尽を突きつける男。何度かサレス侯爵にもこのプランで良いかと確認して進めてきたのだが、責任が取れないとまで言われてしまえば仕方がない。
憤る使用人の前に出てピレニーはレオカディオとアエラが考えたプランに造り直すよう指示を出した。
84
あなたにおすすめの小説
【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
氷の王弟殿下から婚約破棄を突き付けられました。理由は聖女と結婚するからだそうです。
吉川一巳
恋愛
ビビは婚約者である氷の王弟イライアスが大嫌いだった。なぜなら彼は会う度にビビの化粧や服装にケチをつけてくるからだ。しかし、こんな婚約耐えられないと思っていたところ、国を揺るがす大事件が起こり、イライアスから神の国から召喚される聖女と結婚しなくてはいけなくなったから破談にしたいという申し出を受ける。内心大喜びでその話を受け入れ、そのままの勢いでビビは神官となるのだが、招かれた聖女には問題があって……。小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
【完結】逃がすわけがないよね?
春風由実
恋愛
寝室の窓から逃げようとして捕まったシャーロット。
それは二人の結婚式の夜のことだった。
何故新妻であるシャーロットは窓から逃げようとしたのか。
理由を聞いたルーカスは決断する。
「もうあの家、いらないよね?」
※完結まで作成済み。短いです。
※ちょこっとホラー?いいえ恋愛話です。
※カクヨムにも掲載。
「お前を愛することはない」と言われたお飾りの妻ですが、何か?
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することはない!」「そんな事を言うために女性の寝室に押し入ったのですか? もう寝るつもりで化粧を落として髪をほどいて寝着に着替えてるのに! 最っ低!」
仕事大好き女が「お飾りの妻最高!」と恋愛感情無しで結婚したらこうなるよね、というお話。
旦那様から彼女が身籠る間の妻でいて欲しいと言われたのでそうします。
クロユキ
恋愛
「君には悪いけど、彼女が身籠る間の妻でいて欲しい」
平民育ちのセリーヌは母親と二人で住んでいた。
セリーヌは、毎日花売りをしていた…そんなセリーヌの前に毎日花を買う一人の貴族の男性がセリーヌに求婚した。
結婚後の初夜には夫は部屋には来なかった…屋敷内に夫はいるがセリーヌは会えないまま数日が経っていた。
夫から呼び出されたセリーヌは式を上げて久しぶりに夫の顔を見たが隣には知らない女性が一緒にいた。
セリーヌは、この時初めて夫から聞かされた。
夫には愛人がいた。
愛人が身籠ればセリーヌは離婚を言い渡される…
誤字脱字があります。更新が不定期ですが読んで貰えましたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました
香木陽灯
恋愛
伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。
これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。
実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。
「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」
「自由……」
もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。
ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。
再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。
ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。
一方の元夫は、財政難に陥っていた。
「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」
元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。
「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」
※ふんわり設定です
失った真実の愛を息子にバカにされて口車に乗せられた
しゃーりん
恋愛
20数年前、婚約者ではない令嬢を愛し、結婚した現国王。
すぐに産まれた王太子は2年前に結婚したが、まだ子供がいなかった。
早く後継者を望まれる王族として、王太子に側妃を娶る案が出る。
この案に王太子の返事は?
王太子である息子が国王である父を口車に乗せて側妃を娶らせるお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる