婚約破棄になったら、駄犬に懐かれました

cyaru

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第01話   個性がない?

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「君って本当に個性がないよね」
「個性があるかどうか。このバザーには関係御座いません」
「これじゃぁ人は来てもつまらないと帰ってしまうよ」
「だったらもっと早く案を出して下さらないと!」


明日が開催日だと言うのに、やっとの事で設営し最後の点検をしている会場にやって来たサレス侯爵家のレオカディオが会場の設営担当を一手に引き受けていたモコ伯爵家のピレニーと言い合いを始めた。


★~★

スラム街の住民を救うため、王家とサレス侯爵家の共同で始まった事業。
先ずはそういう施策があるのだと知ってもらわねばならないとバザーを開催する事になった。

問題は当初から多く、どうやってバザーに来てもらうか。そこから始めなければならなかったのだが、なんせ決まってからの日がない。

「この日しか場所が取れません」という教会からの申し入れもあり、場所は決まったが出し物が決まらない。が、教会が指定した日まで5週間しかない。


モコ伯爵家のピレニーは婚約者のサレス侯爵家子息レオカディオをようやく捕まえる事が出来た。

サレス侯爵から「やってみろ」とフォローありきで任されているのに主任を任されたレオカディオがなかなか捕まらなかった。

朝早くなら屋敷にいるだろうと思えば、日帰りや3泊4日で出掛けていたり、各貴族への寄付を募る為だと高位貴族のご夫人が主催する茶会に出掛けていたり。

その茶会ですら飛び込み営業のようなもので、失礼に当たるためピレニーは友人達に「何時、何処で茶会が開かれるか」をリサーチし、「もしかするとサレス侯爵子息が伺うかも知れない」と断りを入れていた。


「坊ちゃん、全然来ませんね」
「ごめんなさいね。えぇっと・・・ここは年齢や病状に応じた支援金の申し込みも兼ねておきたいから少し広めにブースを取って下さる?」


何処の世も生きるための金が支給されるのだと知れば人は殺到する。
ピレニーもこれまで小規模なバザーには手伝いとして参加をしていたが、周知を兼ねているため内容を知ってもらわねばならずワークショップ的に幾つもブースを用意する必要があった。

「ここはどうします?」
「えぇっと・・・人の動線からすれば食事を持ち込まれると困るから簡易の衝立になるような・・・そうね。プランターとかで区切りをしましょう。行き来するスペースはプランターで道ですよって感じで配置をすれば良いかも知れないわ」

指示を出す人間はピレニーとサレス侯爵家から遣わされている数人の使用人。
その使用人も最終的な判断はピレニーに問うてくるのでここ数日ピレニーは寝る場所が馬車での移動中だけというハードスケジュールだった。


「やっと明日が開催日ね。なんとか間に合ったわ」
「良かったです。一時はどうなる事かと」
「子供達に配るお菓子と、ゲームで配るパンの手配は出来ているかしら」
「菓子店とパン屋にはそれぞれ5軒づつ声をかけています。材料も届いたから今夜は徹夜だと張り切っていたと小麦やタマゴを届けた者が言ってました」


サレス侯爵家の使用人とブースが倒壊しないか、順路を示すプランターは配置を間違っていないかを確認していると、まだ最後の材料搬入でごった返す入り口に大きくて立派な馬車が停まった。

誰だろうと見ていると、先に男性が。続いて屋外の会場設営で砂ぼこりも待っているのに煌びやかなドレス姿の女性が馬車から降りて来た。


――あぁ、ミジャン伯爵令嬢ね――


今朝、サレス侯爵家の使用人が夜も明けぬうちから会場には来ていたけれど、侯爵から「お前に任せた」と言われたレオカディオが会場に来たのは設営を始めてから今日にいたるまで35日の内僅か3日。

レオカディオが集めている言う寄付も2、3軒の子爵家が僅かばかりを持ってきただけで全く役に立っていなかったと言っていいだろう。

そんなレオカディオがミジャン伯爵家の令嬢アエラの手を取り、ゆっくりと近づいて来た。


「なんだこれは・・・これでは人も来ないじゃないか」
「だから言ったの。田舎者に任せたらこうなるって」
「全くだ。今からでいい。やり直せ」


バサリとピレニーたちの足元に投げつけてきたのはレオカディオがアエラと共に考えたプラン。


「こんな事を!開催は明日ですよ。無理です。変更なんて間に合いません!」

書類を拾い上げた使用人が内容を見て諦めにも似た声をあげた。
その声に周りにいた作業員たちも足を止めて注視し始めた。


「無理です。これじゃ説明を受けている場と飲食の場が一緒になっています」
「テーブルも少なくて済むでしょう?休みたいときに腰掛けるのが椅子と言うものよ?あら…ごめんなさい。田舎では草原に寝転がるのが休憩だったかしら?」


そう言いながらアエラが視線を移すのはピレニーが考えた子供達だけを集めて小高く持った盛り土にシートをかけて麻袋をソリに見立てて遊ぶキッズコーナーだった。

「あれは親御さんが説明を受けている時にお子さんがいるとどうしても話に集中でき――」
「で?子供が攫われたらどう責任を取るの?どんな話をしていようが子供の面倒をみるのが親の役目と言うものよ」

「遊ぶ子供には腰までのラティスで区切っていますから、割符を親と子供に渡し――」
「どうでもいいんだ。はやくこのプランに作り替えろ!誰が主任で、誰が責任を取ると思っているんだ?訳の解らないものを勝手に作られて責任だけはこっち任せ・・・気が知れないな」

「坊ちゃん!だったら坊ちゃんが――」
「おやめなさい」


間もなく日も落ちる。今からやって明日の開催時間に間に合うかどうか。
ごちゃごちゃ言っていても仕方がない。サレス侯爵から任されたのは目の前で理不尽を突きつける男。何度かサレス侯爵にもこのプランで良いかと確認して進めてきたのだが、責任が取れないとまで言われてしまえば仕方がない。

憤る使用人の前に出てピレニーはレオカディオとアエラが考えたプランに造り直すよう指示を出した。
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