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第12話 ミジャン家没落?
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アエラと距離を取ったレオカディオだったが、ドベールが見逃すはずがない。
にっこりとレオカディオに向かって微笑んだドベールにレオカディオは体が小さく震えはじめた。
「ところでサレス侯爵子息」
「はっはい」
ビクリと体を飛び上がらせたレオカディオにドベールは優しく問いかけた。
「バザー会場の入り口で現金を配ったのは君の指示だと聞いたが?」
「その件ですか‥‥はい!多くの人の関心を引くには手っ取り早いと思いまして。確かに私もピレニー嬢なら大丈夫だろうと任せてはいたのですが、どうも人の集まりが悪いような気がしまして、時間も無く即効性のあるものと言えば現金が一番かと」
「なるほど。大変に君らしい方法を考えたものだ」
褒められたのか?と疑心暗鬼になりながらも「やり過ごせたのか?」心に安堵の芽が芽生えたレオカディオは頬を僅かに紅潮させた。
「で?配った金は王家としても主催者の片割れ。その原資を聞きたいのだが?急ぎの事だからこれから倫理書を出すのだと思うが、あと先になる事はこの際だ。目を瞑る事にしようじゃないか」
「金は4つの公爵家からの寄付でした」
「そうか。4つの公爵家が。慈善事業に携わるのは貴族としても当然の事だ。で?その額は?まさか4つの公爵家なんだ。2、3千万なんてシケた額ではないだろう?」
「正確な額は・・・おそらく1億ほど・・・」
そこにあるだけバラまいたレオカディオは「かなりあるな」とは思ったが正確な額は聞いてもいなかった。だが、ドベールはワザとらしく首を傾げた。
「2、3時間民衆に手を分けて配り続けたのに1億ではあまりに少な――」
「いっいえ!おそらく1家1億として4億はあったかと!」
レオカディオは声を裏返し、咄嗟に適当な金額を言ってのけた。
ドベールは「それなら合点がいく」と満足気。
そして両親たちに向き合った。
「どうやた意義があるのはサレス侯爵だけのようだが、ミジャン家にしても事を大きくせずに丸く収める方が都合が良いのではないか?」
「そっそれは勿論で御座います。バザーの成功も有りますしモコ伯爵家には治療費の支払いも当然の事と考えてはおりますが・・・」
「治療費?!それは良い心掛けだ。爵位は同じ伯爵家と言えど場が場だ。相応な額になると思うが・・・そうだな。バザーでピレニーの采配が不味かったからという理由もあるだろうから、民衆に配った4億が治療費。そして同額をモコ伯爵家に支払う。と、言っても支払先は事業の基金。管理は第3王子が行うので個人的に手を付ける事もない。これでどうだ?」
「お、お待ちください!それでは合わせて8億?!そんな金は・・・」
土地も屋敷も領地も、そして経営している商会の権利を全て売ったとしても用意できるか解らない巨額な金額にミジャン伯爵は驚きすぎて立ち上がってしまった。
その隣ではミジャン伯爵夫人が目を回して白目になっていた。
そこにピレニーの母、ポラニアンが「ホホホ」優雅に笑うと続けた。
「少ないのでは?ミジャン伯。なにかお忘れのようですからわたくしから一つ。わたくしはモコ伯爵家に降嫁した事で継承権を失いましたが、娘のピレニーは王位継承権9番目ですの。サレス家に嫁ぐまでその継承権は生きております。そのピレニーの頬をたった8億で無かった事にしましょうと言っているの?お・わ・か・り?」
「そしてその金は事業に使われ民の助けとなる。ご令嬢の発案なのだろう?事業はバザーで終わりではない。これからが本番なのだ。その原資をばらまきという前代未聞の愚策で失っただろう?そちらも無かった事になるのだから問題はないだろう」
しかし、黙っていないのがアエラ。
「金を配ろうと言ったのはレオですわ!私の案ではそんな事は予定にありませんでした!」
が、ドベールはアエラの叫びも気にしない。むしろ想定していた返しだとばかりに優しくアエラに声を返した。
「だとしても、責任者である彼と思いを同じくしていたのだろう?そこには意思疎通があったとみるべきだ。何より私も会場に言ったが、君はピレニーを糾弾していたではないか」
「そ、それは・・・。ですが!頬を張ったくらいで!ミジャン家が傾きます!」
「だろうね。でも言っただろう?場が場なんだ。その辺の夜会とは訳が違う。王家の顔に泥を塗っておいて修道院で奉仕?そんな甘い結論を私が許すとでも?」
ドベールの言葉にミジャン伯爵はアエラに「やめなさい」と声をかけ、ドベールの提示した8億を支払うと返した。言い合いをしても頬を張った場を見ていたものは多い。
ましてや場は王宮のホール。足掻くよりも受け入れた方が傷が浅く済む。ゴネればゴネるほどに金額が釣り上がっていくのが慰謝料と言うもの。
正式な額として提示されたら数倍は請求され、長い裁判で結局落ち着くところが8億と言う金額になるであろうことは容易にわかる。そんな時間に掛ける金と手間を考えればここで手を打った方が良い。そう判断したのだった。
自分たちに良い潮目になったと感じたのはほんの一瞬。
この部屋の扉が今更ながらに地獄への扉だったのではないかとレオカディオは感じた。
真綿で首を絞められるように外から装備を剥ぎ取られていく。
そんな感覚だった。
――もう今しかない――
アエラを切るとすればこれが最後の機会になるとレオカディオはソファーテーブルに額を打ち付ける勢いで「申し訳ありません」と頭を下げた。
「何をしてるの?!レオっ?」
隣でアエラが頭をあげろと手を差し出してくるが、レオカディオはその手を弾いた。
「実はエラ・・・いえ、アエラがピレニーを陥れようと夜会の場で愚行を働いたのです。私は止めようとしたのですが一歩間に合わず――」
「何を言ってるのよ!どうしてわたくしだけが悪い事にしようとしてるの?!ねぇってば!」
「見苦しいな」そう呟いたのはレオカディオの父親であるサレス侯爵だった。
視線の端にポラニアンが扇で口元を隠しているのを捉えれば、目の前の2人がどういう関係にあったのか。知らないのは息子可愛さに知りたくない事実から目を背けてきた自分たち夫婦だけだと判る。
ミジャン伯爵も知らなかったのだろうが、ミジャン伯爵は没落覚悟で腹を括った。
にっこりとレオカディオに向かって微笑んだドベールにレオカディオは体が小さく震えはじめた。
「ところでサレス侯爵子息」
「はっはい」
ビクリと体を飛び上がらせたレオカディオにドベールは優しく問いかけた。
「バザー会場の入り口で現金を配ったのは君の指示だと聞いたが?」
「その件ですか‥‥はい!多くの人の関心を引くには手っ取り早いと思いまして。確かに私もピレニー嬢なら大丈夫だろうと任せてはいたのですが、どうも人の集まりが悪いような気がしまして、時間も無く即効性のあるものと言えば現金が一番かと」
「なるほど。大変に君らしい方法を考えたものだ」
褒められたのか?と疑心暗鬼になりながらも「やり過ごせたのか?」心に安堵の芽が芽生えたレオカディオは頬を僅かに紅潮させた。
「で?配った金は王家としても主催者の片割れ。その原資を聞きたいのだが?急ぎの事だからこれから倫理書を出すのだと思うが、あと先になる事はこの際だ。目を瞑る事にしようじゃないか」
「金は4つの公爵家からの寄付でした」
「そうか。4つの公爵家が。慈善事業に携わるのは貴族としても当然の事だ。で?その額は?まさか4つの公爵家なんだ。2、3千万なんてシケた額ではないだろう?」
「正確な額は・・・おそらく1億ほど・・・」
そこにあるだけバラまいたレオカディオは「かなりあるな」とは思ったが正確な額は聞いてもいなかった。だが、ドベールはワザとらしく首を傾げた。
「2、3時間民衆に手を分けて配り続けたのに1億ではあまりに少な――」
「いっいえ!おそらく1家1億として4億はあったかと!」
レオカディオは声を裏返し、咄嗟に適当な金額を言ってのけた。
ドベールは「それなら合点がいく」と満足気。
そして両親たちに向き合った。
「どうやた意義があるのはサレス侯爵だけのようだが、ミジャン家にしても事を大きくせずに丸く収める方が都合が良いのではないか?」
「そっそれは勿論で御座います。バザーの成功も有りますしモコ伯爵家には治療費の支払いも当然の事と考えてはおりますが・・・」
「治療費?!それは良い心掛けだ。爵位は同じ伯爵家と言えど場が場だ。相応な額になると思うが・・・そうだな。バザーでピレニーの采配が不味かったからという理由もあるだろうから、民衆に配った4億が治療費。そして同額をモコ伯爵家に支払う。と、言っても支払先は事業の基金。管理は第3王子が行うので個人的に手を付ける事もない。これでどうだ?」
「お、お待ちください!それでは合わせて8億?!そんな金は・・・」
土地も屋敷も領地も、そして経営している商会の権利を全て売ったとしても用意できるか解らない巨額な金額にミジャン伯爵は驚きすぎて立ち上がってしまった。
その隣ではミジャン伯爵夫人が目を回して白目になっていた。
そこにピレニーの母、ポラニアンが「ホホホ」優雅に笑うと続けた。
「少ないのでは?ミジャン伯。なにかお忘れのようですからわたくしから一つ。わたくしはモコ伯爵家に降嫁した事で継承権を失いましたが、娘のピレニーは王位継承権9番目ですの。サレス家に嫁ぐまでその継承権は生きております。そのピレニーの頬をたった8億で無かった事にしましょうと言っているの?お・わ・か・り?」
「そしてその金は事業に使われ民の助けとなる。ご令嬢の発案なのだろう?事業はバザーで終わりではない。これからが本番なのだ。その原資をばらまきという前代未聞の愚策で失っただろう?そちらも無かった事になるのだから問題はないだろう」
しかし、黙っていないのがアエラ。
「金を配ろうと言ったのはレオですわ!私の案ではそんな事は予定にありませんでした!」
が、ドベールはアエラの叫びも気にしない。むしろ想定していた返しだとばかりに優しくアエラに声を返した。
「だとしても、責任者である彼と思いを同じくしていたのだろう?そこには意思疎通があったとみるべきだ。何より私も会場に言ったが、君はピレニーを糾弾していたではないか」
「そ、それは・・・。ですが!頬を張ったくらいで!ミジャン家が傾きます!」
「だろうね。でも言っただろう?場が場なんだ。その辺の夜会とは訳が違う。王家の顔に泥を塗っておいて修道院で奉仕?そんな甘い結論を私が許すとでも?」
ドベールの言葉にミジャン伯爵はアエラに「やめなさい」と声をかけ、ドベールの提示した8億を支払うと返した。言い合いをしても頬を張った場を見ていたものは多い。
ましてや場は王宮のホール。足掻くよりも受け入れた方が傷が浅く済む。ゴネればゴネるほどに金額が釣り上がっていくのが慰謝料と言うもの。
正式な額として提示されたら数倍は請求され、長い裁判で結局落ち着くところが8億と言う金額になるであろうことは容易にわかる。そんな時間に掛ける金と手間を考えればここで手を打った方が良い。そう判断したのだった。
自分たちに良い潮目になったと感じたのはほんの一瞬。
この部屋の扉が今更ながらに地獄への扉だったのではないかとレオカディオは感じた。
真綿で首を絞められるように外から装備を剥ぎ取られていく。
そんな感覚だった。
――もう今しかない――
アエラを切るとすればこれが最後の機会になるとレオカディオはソファーテーブルに額を打ち付ける勢いで「申し訳ありません」と頭を下げた。
「何をしてるの?!レオっ?」
隣でアエラが頭をあげろと手を差し出してくるが、レオカディオはその手を弾いた。
「実はエラ・・・いえ、アエラがピレニーを陥れようと夜会の場で愚行を働いたのです。私は止めようとしたのですが一歩間に合わず――」
「何を言ってるのよ!どうしてわたくしだけが悪い事にしようとしてるの?!ねぇってば!」
「見苦しいな」そう呟いたのはレオカディオの父親であるサレス侯爵だった。
視線の端にポラニアンが扇で口元を隠しているのを捉えれば、目の前の2人がどういう関係にあったのか。知らないのは息子可愛さに知りたくない事実から目を背けてきた自分たち夫婦だけだと判る。
ミジャン伯爵も知らなかったのだろうが、ミジャン伯爵は没落覚悟で腹を括った。
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