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第22話 嫁ぎ先が決まってる?
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モコ伯爵家の使用人達は突然やって来た招かざる客の歩みを止めようと声をあげて手の空いた使用人を呼んでいた。
こんな日に限ってさっき入れ違うようにモコ伯爵もポラニアンも出掛けてしまっている。屋敷にいるのはピレニーのみ。
ドベールはポラニアンが出掛けるまで茶を共にしていてチェサピックの顔を見て帰るというので庭に出向いてしまっていて、爵位の差もあり使用人達では珍客を止めるにも限界があった。
「ピレニー!いるんだろう?!出て来てくれよ!」
声をあげるのはサレス侯爵家のレオカディオだった。
「先触れを持ってきた」と外門を通れたのは以前とは違って身なりは使用人の風だからだろう。今の身なりからは以前の面持ちは感じられなかった。
「なんです?騒々しい」
「ピレニー!」
現れたピレニーにレオカディオは甲高い声をあげて名を呼んだ。
しかしピレニーも一見しただけでは「声は似てるんだけど」としか思えないその風貌に、その人がレオカディオなのかも直ぐには判らなかった。
以前は艶のある綺麗なモスグリーンの髪が風に靡いていたのに、脂でベッチョリと頭皮にはり付き、深緑にこげ茶色を適度に混ぜたような斑模様。
身に纏っている服も男性使用人が着るようなものの上に、くたびれて袖のボタンは片方は全部とれているし、もう片方も付いているのは1つだけ。シャツの襟も袖口も汚れで真っ黒。
上着に解れは見当たらないが、シワなのか汗染みなのかこちらも斑な模様が浮き上がっていた。
「聞いてくれよ。僕の為には誰も!何もしてくれないんだ!」
「えぇっと・・・だからここに来たと?私にどうしろと言うんです?」
「婚約、いや結婚をしよう?もう僕にはピレニーしかいないんだよ」
――冗談はやめてよ――
男性使用人が3人かかりでレオカディオをの行く手を塞いではいるが、排籍をされていないのでレオカディオは侯爵家の人間であるのは間違いがない。
モコ伯爵家に押し入った形となってはいるが、暴力行為はない上に「先触れ」を持ってやって来たと建前はなっているので使用人達も力づくでレオカディオを排除する事も出来ない。
おそらくはモコ伯爵、ポラニアン夫人が出掛けるのを何処かで見ていてやって来ての狼藉。
使用人達にはレオカディオの体に触れる事は「先に手を出した」事になるため今の状態が精一杯だった。
使用人を間に挟んで向かい合うピレニーとレオカディオ。
レオカディオはピレニーに向かって微笑んで言う。
「君を婚約で傷物にしてしまったのは僕だ。僕に責任を取らせてくれないか?」
アエラと結婚をしたはずのレオカディオ。
何を言っているのだろうかとピレニーは驚いてレオカディオをみるが、目が合うとニヘラと笑うレオカディオに背中に毛虫を放り込まれた気分。
「アエラとは結婚をしたようでしてないんだ。宣誓書にレオカディオの「L」ではなく「R」と書いたからね。あれは僕じゃない。アエラはどこかのRから始まるレオカディオと結婚した事になっているんだ。僕はピレニー、君のために隣を開けているんだ」
「普通に気持ち悪いんだけど」
心の中の声がつい、口を突いて出てしまった。
気持ち悪いという言葉にレオカディオの目に怒りが宿る。
「気持ち悪いだって?僕がこうなった責任の一環はピレニー!君にもあるんだ。それを結婚で不問にしてやろうとする僕の優しさが解らないと言うのか?」
「解らないわ。傷物になろうとどうなろうと貴方と結婚はしない。字が間違っているのならサレス侯爵に連絡をして修正をすれば済む事でしょう?何を得意げになってるのかも判らないわ」
「修正?!そんな事が出来るもんか!公的な書類なんだぞ」
「他者が間違ったのならいざ知らず本人が違うと言ってるのだから修正すればいいだけ。役所の決まりも意外と緩い所もあるんだけど・・・書類なんかはこちらに丸投げだったから知らないのね」
ため息交じりに言葉を返せば、レオカディオは益々激高し壁となっている使用人を押しのけてピレニーに掴みかかった。
「このっ!大人しく僕と結婚すればいいんだ!こうなった責任を取ってもらう」
「離して!なんで貴方なんかと!」
「このまま使用人達を証人に既成事実を作るのもいいかも知れないな。部屋は何処だ?どうせ結婚をするんだ。安心していい。僕には経験があるから優しく出来る」
息を耳に吹きかけるようにピレニーを抱き囁くレオカディオだったが、ピレニーはキっと睨み返す。
「絶対に嫌っ!!」
「オウワァウッ!!」
――あれ?そんなに深く入った?体が浮いたような気がしたけど――
思い切りレオカディオの股間に向かって膝を入れたのだが、倒れ込むレオカディオの背の向こうに見えたのはファイティングポーズで片足を揺らせるチェサピックだった。
「大丈夫か!ピレニー!」
ピレニーがレオカディオの股間に蹴りを入れると同時にチェサピックがレオカディオの背の側から尻につま先を捩じ込んだ。前と後ろからの同時攻撃にピレニーが考えたより深く膝が入ったのだろうか。
エビのように倒れた体を丸めたり背を伸ばしたりと激しく悶絶するレオカディオは何よりも痛みが勝って声にならない声が喉の奥から息と共に吐きだされるだけ。
そんなレオカディオの髪をむんずとチェサピックが掴みあげた。
「悪いんだが、ピレニーはもう嫁ぎ先が決まってるんだよ」
――え?そうなの?何時の間に?なんでチェサピック君がそんな事を?――
当人のピレニーも知らない嫁ぎ先。
両親が誰かと婚約話を進めているのだろうかと考えてみるが沢山の釣り書きの中に母親のポラニアンが「これは!」と思った子息はいなかったハズ。
どの子息も長所もあれば短所もあり、釣り書きに書かれているのは当然のように長所だけ。「こちらが調べないとでも思っているのかしら」と恋人と思わしき女性の影のある子息を排除し、賭博場に出入りしているものを外し、母親への依存度が高い者を外しとしていると残ったのはあったかどうか。
ピレニーが思案中もチェサピックはレオカディオに何か言っているようだったが、ピレニーはそれどころではない。
レオカディオも白目を剥いて口から泡まで噴き出して、これでは話を聞くどころか意識がこの世にあるかも判らない。
「判ったか?二度とそのツラを見せるな。今度は尻穴を広げるだけじゃすまないからな?」
が、レオカディオの事よりもピレニーの心配は別にあった。
――いったいどこの子息?――
★~★
次は21時10分です
こんな日に限ってさっき入れ違うようにモコ伯爵もポラニアンも出掛けてしまっている。屋敷にいるのはピレニーのみ。
ドベールはポラニアンが出掛けるまで茶を共にしていてチェサピックの顔を見て帰るというので庭に出向いてしまっていて、爵位の差もあり使用人達では珍客を止めるにも限界があった。
「ピレニー!いるんだろう?!出て来てくれよ!」
声をあげるのはサレス侯爵家のレオカディオだった。
「先触れを持ってきた」と外門を通れたのは以前とは違って身なりは使用人の風だからだろう。今の身なりからは以前の面持ちは感じられなかった。
「なんです?騒々しい」
「ピレニー!」
現れたピレニーにレオカディオは甲高い声をあげて名を呼んだ。
しかしピレニーも一見しただけでは「声は似てるんだけど」としか思えないその風貌に、その人がレオカディオなのかも直ぐには判らなかった。
以前は艶のある綺麗なモスグリーンの髪が風に靡いていたのに、脂でベッチョリと頭皮にはり付き、深緑にこげ茶色を適度に混ぜたような斑模様。
身に纏っている服も男性使用人が着るようなものの上に、くたびれて袖のボタンは片方は全部とれているし、もう片方も付いているのは1つだけ。シャツの襟も袖口も汚れで真っ黒。
上着に解れは見当たらないが、シワなのか汗染みなのかこちらも斑な模様が浮き上がっていた。
「聞いてくれよ。僕の為には誰も!何もしてくれないんだ!」
「えぇっと・・・だからここに来たと?私にどうしろと言うんです?」
「婚約、いや結婚をしよう?もう僕にはピレニーしかいないんだよ」
――冗談はやめてよ――
男性使用人が3人かかりでレオカディオをの行く手を塞いではいるが、排籍をされていないのでレオカディオは侯爵家の人間であるのは間違いがない。
モコ伯爵家に押し入った形となってはいるが、暴力行為はない上に「先触れ」を持ってやって来たと建前はなっているので使用人達も力づくでレオカディオを排除する事も出来ない。
おそらくはモコ伯爵、ポラニアン夫人が出掛けるのを何処かで見ていてやって来ての狼藉。
使用人達にはレオカディオの体に触れる事は「先に手を出した」事になるため今の状態が精一杯だった。
使用人を間に挟んで向かい合うピレニーとレオカディオ。
レオカディオはピレニーに向かって微笑んで言う。
「君を婚約で傷物にしてしまったのは僕だ。僕に責任を取らせてくれないか?」
アエラと結婚をしたはずのレオカディオ。
何を言っているのだろうかとピレニーは驚いてレオカディオをみるが、目が合うとニヘラと笑うレオカディオに背中に毛虫を放り込まれた気分。
「アエラとは結婚をしたようでしてないんだ。宣誓書にレオカディオの「L」ではなく「R」と書いたからね。あれは僕じゃない。アエラはどこかのRから始まるレオカディオと結婚した事になっているんだ。僕はピレニー、君のために隣を開けているんだ」
「普通に気持ち悪いんだけど」
心の中の声がつい、口を突いて出てしまった。
気持ち悪いという言葉にレオカディオの目に怒りが宿る。
「気持ち悪いだって?僕がこうなった責任の一環はピレニー!君にもあるんだ。それを結婚で不問にしてやろうとする僕の優しさが解らないと言うのか?」
「解らないわ。傷物になろうとどうなろうと貴方と結婚はしない。字が間違っているのならサレス侯爵に連絡をして修正をすれば済む事でしょう?何を得意げになってるのかも判らないわ」
「修正?!そんな事が出来るもんか!公的な書類なんだぞ」
「他者が間違ったのならいざ知らず本人が違うと言ってるのだから修正すればいいだけ。役所の決まりも意外と緩い所もあるんだけど・・・書類なんかはこちらに丸投げだったから知らないのね」
ため息交じりに言葉を返せば、レオカディオは益々激高し壁となっている使用人を押しのけてピレニーに掴みかかった。
「このっ!大人しく僕と結婚すればいいんだ!こうなった責任を取ってもらう」
「離して!なんで貴方なんかと!」
「このまま使用人達を証人に既成事実を作るのもいいかも知れないな。部屋は何処だ?どうせ結婚をするんだ。安心していい。僕には経験があるから優しく出来る」
息を耳に吹きかけるようにピレニーを抱き囁くレオカディオだったが、ピレニーはキっと睨み返す。
「絶対に嫌っ!!」
「オウワァウッ!!」
――あれ?そんなに深く入った?体が浮いたような気がしたけど――
思い切りレオカディオの股間に向かって膝を入れたのだが、倒れ込むレオカディオの背の向こうに見えたのはファイティングポーズで片足を揺らせるチェサピックだった。
「大丈夫か!ピレニー!」
ピレニーがレオカディオの股間に蹴りを入れると同時にチェサピックがレオカディオの背の側から尻につま先を捩じ込んだ。前と後ろからの同時攻撃にピレニーが考えたより深く膝が入ったのだろうか。
エビのように倒れた体を丸めたり背を伸ばしたりと激しく悶絶するレオカディオは何よりも痛みが勝って声にならない声が喉の奥から息と共に吐きだされるだけ。
そんなレオカディオの髪をむんずとチェサピックが掴みあげた。
「悪いんだが、ピレニーはもう嫁ぎ先が決まってるんだよ」
――え?そうなの?何時の間に?なんでチェサピック君がそんな事を?――
当人のピレニーも知らない嫁ぎ先。
両親が誰かと婚約話を進めているのだろうかと考えてみるが沢山の釣り書きの中に母親のポラニアンが「これは!」と思った子息はいなかったハズ。
どの子息も長所もあれば短所もあり、釣り書きに書かれているのは当然のように長所だけ。「こちらが調べないとでも思っているのかしら」と恋人と思わしき女性の影のある子息を排除し、賭博場に出入りしているものを外し、母親への依存度が高い者を外しとしていると残ったのはあったかどうか。
ピレニーが思案中もチェサピックはレオカディオに何か言っているようだったが、ピレニーはそれどころではない。
レオカディオも白目を剥いて口から泡まで噴き出して、これでは話を聞くどころか意識がこの世にあるかも判らない。
「判ったか?二度とそのツラを見せるな。今度は尻穴を広げるだけじゃすまないからな?」
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