真実の愛は望みませんが偽りの愛も不要なのです

cyaru

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侯爵家の処分②

「先ずは婚約の話から致しましょうか」

ブリュンヘルト公爵が口火を切るとジェイス伯爵は封筒から報告書と書かれた書類を取り出す。

「婚約は解消ではなくペルデロ侯爵家有責の破棄とさせて頂きますよ。こちらは不貞に関しての書類になります。公平を期すために司法院を通し第3騎士団から調査員、陛下からも王家の影を派遣頂きました。真偽についてお聞きになりますか?」

ブリュンヘルト公爵が口角を上げてペルデロ侯爵に問う。
否と答えるのは簡単だが、司法院経由その上、国王が影を出したとなればひっくり返せるはずがない。

「沈黙は承諾と取らせて頂きますよ。貴家のご子息のお相手はローゲ子爵家のシェリーという令嬢。学園内及び学園外でも2人がただの友人というには少々無理のある交際をしている事は当然ご存じですよね」

ペルデロ侯爵も侯爵夫人もまさか息子が不貞とは思っていなかったと口にする。

「てっきり‥‥男の同士の付き合いで…賭博などかと」
「わが国では賭博は違法だけどね。競馬は20歳から構わないが子息は18だろう?」
「賭博が親公認とは畏れ入る。それでよく国の一大事業を推進しようなどと寝言ですかな?」

「いずれにしても賭博ではなく不貞だ。我が国は不貞行為も認めていない。唯一妻を2人以上持てるのは我が父の国王だけだがそれも子が10年以上出来なかった場合と定められている。婚約中から不貞とは侯爵家の教育はどうなっているのかじっくりと聞かせて頂こうか」

「手、手を切らせます。責任をもって手を切らせますので」

「今更何を仰っているのです?最後通告でしたよね。ちなみに我が娘は今も待ち合わせ場所でご子息を待っておりますよ。そちらからの申し出に関わらず時間も守れないとは…」

「ローゲ子爵家にも勿論慰謝料の請求はするようになりますが案分は任せましょう。両家で2億。お支払い頂ければ未成年時から令嬢に対する不法就労についても大目に見ても良いんですよ」

「ふっ不法就労?そのような事はっ!」

「ではこれは何だ?」

王太子ギャントはもう一つの封筒の中身をペルデロ侯爵の前にバサバサとぶちまける。

「ここに在るのは一部だがな。筆跡鑑定を終えているものだ。7、8年前から昨年出された書類まで同一人物。この書類を作成していたのはジェイス伯爵令嬢だろう?鑑定をするにあたっては学園に提出したノートや試験の答案、論文なども全て参考にしている。言い逃れは‥‥無理だな」

ブリュンヘルト公爵は書類を手に取り「良く出来ているが我が国はこの手の申請書は16歳未満は作成不可ではなかったか?」と指で紙をパンパン弾きながら侯爵夫妻を問い詰める。

「不法就労については民事の賠償が不貞の慰謝料にまとまっただけで、刑罰は逃れられんからな。まぁ不貞の慰謝料ならこの屋敷と土地、動産で何とかなるだろう。だが事業費については侯爵領でも足らんな」

ぐうの音も出ない侯爵夫妻にブリュンヘルト公爵夫人は微笑んだ。

「事業については当家が引き継ぎますわ。ただ負債を返し終わるまでは爵位だけは現状維持…良かったですわねぇ。毎晩のようにご子息とそのお相手を夜会にお招き致しますわ」

「で、ですが住む場所が…」

「侯爵、我が国は夜間も非常に治安が良い。橋の下でも炉端でも存分に安眠できるであろう」
「そんな…」

「陛下の治世ですもの。早速明日の夜会、皆様お待ちしておりますので是非ご参加くださいましな。侯爵夫人のドレスは同じものが2度はないとの噂。明日のドレスも楽しみですわ。あぁ娘となられる方も同伴してよろしくてよ」


「恨むなら己のしてきた事と愚息を恨むんだな。まぁ製造元がこれでは愚息になっても仕方あるまい。頑張って子を作り末代までローゲ子爵家と返済に励むがよい。あと負担を軽減してやろうと思ってな。夫人の方の家も全て6親等までは連帯債務者と認定をしてやったぞ。三分の一ほどはこれで消えるな。おめでとう」


明後日は雨になりそうだからと明日中に屋敷を明け渡す書類にしたくもないサインをしなければならなくなった。たった2時間程の観劇を婚約者と見るだけで凌げた急場なのにと侯爵夫妻が嘆くそのそばで使用人達は給金分だと金になりそうな調度品や夫人の宝飾品を持ち出し、非番の者にも知らせると駆けだす者も出た。

隠してあった現金を使用人が知らぬはずがない。それでも給金分と退職金分だけと使用人達で分けるだけまだ人道的なのだろうか。


王太子たちが帰ると入れ違いのように侯爵の弟、妹、その姻家、夫人の兄弟姉妹、その配偶者の家の者が押し寄せて来て「どうなっているんだ」と詰め寄る。

「どうなっていると聞きたいのは俺の方だ!」

侯爵は声を張り上げるが、妹の夫に思い切り頬を拳で殴られ吹き飛んだ。
既に各家とも憲兵が入り、逃げる事も家財を持ち出す事も出来ない状況。
どうにもならない事に、侯爵家のサロンは物を投げつけられ、手当たり次第に破壊されていく。


やっと落ち着いた時には、使用人は執事1人だけになっていた。

「お前は出て行かないのか」

力なく聞くと「残るわけないでしょう?最後なのでバカが帰ればここに案内するだけです」と言い残しかろうじて残った侯爵家一家の肖像画を手にした。
額縁の裏を見て「有名作家の作品なので退職金代わりに貰います」と荷を纏めに部屋を出て行った。
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