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番外編① 東~耳だけブラックVS 西~黒ソックス
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領地に移り住んだ2人。
これは告白から結婚までの話。メェェ~
「セルさん。どうしたの?」
「あぁ、子供たちにアルファベットを教えているんだが、Sと書くのに逆になってしまう子が多くて」
「ふーん。そうなんだ。8を書く時と同じと教えてみたらどうかしら。あ、でも8も色々な書き方する人がいるわよね」
かくいうアイリーンも8は丸を2つ書くタイプ。
セルジュは右上から頂部を左に一筆書き。
「輪っかになったチュロスを捩じれば・・・ってそれじゃ意味ないわね」
手で見えない空気チュロスを捩じるアイリーンにセルジュは見とれてしまっていた。
「セルさん・・・なんだか恥ずかしいんだけど」
「あ、ご、ごめん・・・真剣な顔だったから」
その頃初めての出産を終えたヤギのセルジュに野草を摘んでいたアイリーン。
セルジュは「忘れてた」と言って滅多にお目にかかれない「メ―草」を一束差し出した。メ―草が自生するのは崖の真ん中あたり。ヤギなら足かかりになりそうなでっぱりも無い崖を昇って食べるが人間が昇れるような場所ではない。
アイリーンはセルジュの手に視線を向けた。
視線に気が付くとセルジュはサッと手を隠す。
「セルさん。見せて?」
「もう無いよ。1束しか・・・」
「そうじゃなくセルさんの手。見せて」
「洗ってないから。後で見せるよ」
「だめ。今見せて!」
アイリーンに強く言われるとセルジュは「ちょっとだけ」と言って手のひらを見せた。しかしアイリーンはその手を掴むと手の甲も指の先も凝視する。
「爪が剥がれかけてるじゃない…崖を昇ったんでしょう?」
「あー。うん…ちょっとだけ。このくら―――」
言いかけてセルジュは言葉を飲み込んだ。
自分で自分を蔑むとアイリーンはセルジュを叱る。
出自や過去で自分で自分を貶める事をアイリーンは嫌うのである。
「無理をしないで」
「うん…ありがとう」
セルジュはヤギのセルジュとの約束で告白して以来、アイリーンに気持ちを伝える事はない。しかし一緒にいる時間が長くなればなるほど思いは募って行った。
今日、子供に文字の教え方が・・・と言ったのだが実は違う。
セルジュは6、7歳の子供たちに教えているが、アイリーンが教えている子供たちは15歳前後。今まではその年齢になると出稼ぎに出ていた年齢だが、出稼ぎに行かなくてもよくなったのだ。
だから、アイリーンにも子供たちにもそんなつもりは無いと判っているのに、少年がアイリーンと話をしているのを見て嫉妬をしてしまい、気持ちを落ち着けるために1人で反省していた。
と、その時。久しぶりの衝撃以上の衝撃がセルジュの背中を襲った。
何かが激突した?!振り返ってみると・・・
「ベェェー!!ベェッ!!」
セルジュはデジャヴを感じる。
いや、だが前回は「耳だけブラック」だったが今回はその夫エドワード。
エドワードは「黒ソックス」である。長さはニーハイ。
「あら?エドワード。こんな所までお散歩?」
「めぇめぇ♡」
「うふっ。エドワードも可愛い!首輪もよく似合ってるわ」
「んめぇんめぇ♡」
――俺、ヤギの声が聞こえる特殊能力があるのかな?――
ヤギのエドワード。セルジュの夫である。
エドワードの目から読めるのは「やったれ!男だろ」のヤギ声。
何もせずに愛想笑いをするとまた目で訴えて来る。
「今、決めないならセルジュも連れて来るけどな?」
それは止めて欲しい。
セルジュは当たって砕けろと覚悟を決めた。
ただ恥ずかしくてアイリーンの顔を見る事が出来ないので前を向いたまま。
「まだ先の話で・・・離縁が成立した時なんですけど」
「なぁに?」
「予約していいですか?」
「何の予約?お祝いをしてくれるの?」
「いや…友人以上の存在としてアイリーンさんの隣です」
「あはは。いいわよ?右が良い?左が良い?」
「出来れば・・・両方」
「メェッェーッ!メェェー」
エドワードの声に邪魔されてしまったがセルジュにはちゃんと聞こえた。
「いいわよ。じゃ、両方で」と小さな返事が。
そして離縁が成立した日の夜。
セルジュはアイリーンと共にセルジュのお裾分けホットヤギミルクを飲みながらプロポーズした。
「俺は何もできないけど、アイリーンを愛する事だけは誰にも負けない。毎日こうやって・・・ホットミルクを一緒に飲んで眠りにつきたい」
「朝食もね。お弁当は交代制でいいなら」
「勿論だよ!あれ?なんで俺がYESの返事を??」
そして結婚となった2人だった。
これは告白から結婚までの話。メェェ~
「セルさん。どうしたの?」
「あぁ、子供たちにアルファベットを教えているんだが、Sと書くのに逆になってしまう子が多くて」
「ふーん。そうなんだ。8を書く時と同じと教えてみたらどうかしら。あ、でも8も色々な書き方する人がいるわよね」
かくいうアイリーンも8は丸を2つ書くタイプ。
セルジュは右上から頂部を左に一筆書き。
「輪っかになったチュロスを捩じれば・・・ってそれじゃ意味ないわね」
手で見えない空気チュロスを捩じるアイリーンにセルジュは見とれてしまっていた。
「セルさん・・・なんだか恥ずかしいんだけど」
「あ、ご、ごめん・・・真剣な顔だったから」
その頃初めての出産を終えたヤギのセルジュに野草を摘んでいたアイリーン。
セルジュは「忘れてた」と言って滅多にお目にかかれない「メ―草」を一束差し出した。メ―草が自生するのは崖の真ん中あたり。ヤギなら足かかりになりそうなでっぱりも無い崖を昇って食べるが人間が昇れるような場所ではない。
アイリーンはセルジュの手に視線を向けた。
視線に気が付くとセルジュはサッと手を隠す。
「セルさん。見せて?」
「もう無いよ。1束しか・・・」
「そうじゃなくセルさんの手。見せて」
「洗ってないから。後で見せるよ」
「だめ。今見せて!」
アイリーンに強く言われるとセルジュは「ちょっとだけ」と言って手のひらを見せた。しかしアイリーンはその手を掴むと手の甲も指の先も凝視する。
「爪が剥がれかけてるじゃない…崖を昇ったんでしょう?」
「あー。うん…ちょっとだけ。このくら―――」
言いかけてセルジュは言葉を飲み込んだ。
自分で自分を蔑むとアイリーンはセルジュを叱る。
出自や過去で自分で自分を貶める事をアイリーンは嫌うのである。
「無理をしないで」
「うん…ありがとう」
セルジュはヤギのセルジュとの約束で告白して以来、アイリーンに気持ちを伝える事はない。しかし一緒にいる時間が長くなればなるほど思いは募って行った。
今日、子供に文字の教え方が・・・と言ったのだが実は違う。
セルジュは6、7歳の子供たちに教えているが、アイリーンが教えている子供たちは15歳前後。今まではその年齢になると出稼ぎに出ていた年齢だが、出稼ぎに行かなくてもよくなったのだ。
だから、アイリーンにも子供たちにもそんなつもりは無いと判っているのに、少年がアイリーンと話をしているのを見て嫉妬をしてしまい、気持ちを落ち着けるために1人で反省していた。
と、その時。久しぶりの衝撃以上の衝撃がセルジュの背中を襲った。
何かが激突した?!振り返ってみると・・・
「ベェェー!!ベェッ!!」
セルジュはデジャヴを感じる。
いや、だが前回は「耳だけブラック」だったが今回はその夫エドワード。
エドワードは「黒ソックス」である。長さはニーハイ。
「あら?エドワード。こんな所までお散歩?」
「めぇめぇ♡」
「うふっ。エドワードも可愛い!首輪もよく似合ってるわ」
「んめぇんめぇ♡」
――俺、ヤギの声が聞こえる特殊能力があるのかな?――
ヤギのエドワード。セルジュの夫である。
エドワードの目から読めるのは「やったれ!男だろ」のヤギ声。
何もせずに愛想笑いをするとまた目で訴えて来る。
「今、決めないならセルジュも連れて来るけどな?」
それは止めて欲しい。
セルジュは当たって砕けろと覚悟を決めた。
ただ恥ずかしくてアイリーンの顔を見る事が出来ないので前を向いたまま。
「まだ先の話で・・・離縁が成立した時なんですけど」
「なぁに?」
「予約していいですか?」
「何の予約?お祝いをしてくれるの?」
「いや…友人以上の存在としてアイリーンさんの隣です」
「あはは。いいわよ?右が良い?左が良い?」
「出来れば・・・両方」
「メェッェーッ!メェェー」
エドワードの声に邪魔されてしまったがセルジュにはちゃんと聞こえた。
「いいわよ。じゃ、両方で」と小さな返事が。
そして離縁が成立した日の夜。
セルジュはアイリーンと共にセルジュのお裾分けホットヤギミルクを飲みながらプロポーズした。
「俺は何もできないけど、アイリーンを愛する事だけは誰にも負けない。毎日こうやって・・・ホットミルクを一緒に飲んで眠りにつきたい」
「朝食もね。お弁当は交代制でいいなら」
「勿論だよ!あれ?なんで俺がYESの返事を??」
そして結婚となった2人だった。
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