27 / 44
お嬢さまの番号札
しおりを挟む
「ではそのようにお願いいたします」
「はい、調査が必要と思われますので至急殿下に報告し、議会にも予算をつけてもらえるよう動きましょう」
野営をした魔術師団御一行は朝早くに設営を片付けるとエール領の領主の屋敷に向かいました。
エール伯爵は王都に居てこちらにはいませんが、嫡男夫妻がいたようです。
討伐依頼のあったサイクロシプスは発見が出来ないままでしたが、中級の魔物をかなり討伐しました。
隣り合うチョイス領には魔獣被害の報告がない事から、原因について調査を約束したレイ君は一行の前に来ます。
「長い野営で疲れているだろう。14時にエール領を出立するまで自由時間とする。但し騎士としての誇りと規律を乱さぬよう行動をする事」
「ハッ!!」
途端にワイワイとざわめく騎士たちは1人、2人と連れだって街に繰り出していきます。
馬の当番をしている部下にも声をかけて交代をしてあげるようですよ。
優しいですね。レイ君。
「班長は行かれないのですか?」
「俺はいい。特に土産を買う必要もないしな。それにこいつらの世話もしてやらねばならん」
そう言って飼い葉桶に首を入れて飼い葉を食べる馬を優しく撫でます。
ブルル♪
レイ君の馬、ファイヤーバード(えっ?馬なのにバード?)も嬉しそうですね。
真っ黒い毛並みのつやつやした大きな馬です。尻尾もふさふさです。
「よーしよし……今日もイケるなぁお前は…」
ちなみにファイヤーバードの母馬はリノジャッキン。父馬はコンティネンタァルと言います。
はい。余談です。
時刻はもうすぐ10時。
エール伯爵の屋敷の前は随分とにぎわっています。
人の声…というよりも若い女の子のキャッキャという声がよく聞こえてきます。
そこに‥‥
「パッパラッパパッパパー!!」
馬のドドッ!ドドッっと走る音と共に、なんだかラッパのような音が聞こえます。
もしや突然乗っていた馬が暴れ出したのでは?とレイ君急いで声の聞こえる方に転移します。ヒュン!!
「そこをどいてくださいましぃぃぃ~パッパラパ!!パッパー!!」
決して馬が暴れているわけではないようです。
しっかりと馬は制御され、飛ばしているんだなと判ります。
その上、騎乗しているのは若い女の子でどいてくれと叫び、笛のようなものを吹いて音で警告をしています。
「なっ…なんなんだ??」
しかし振り返ると開店前の行列が少し向こうに見えます。
このままでは危険だ!っと思ったレイ君。走ってくる馬の前に飛び出します・・・・が。
ザザー…パッカポッカ…
あれ?馬がゆっくりになって止まりましたよ。
「ありがとう!エールのおじ様!」
変なヘルメットを被ってはいるものの停止の反動で目元までヘルメットがズレた女性が馬から飛び降ります。
そして、ヘルメットのベルトがなかなか外れないようで悪戦苦闘しております。
「な、なんなんだ。君は」
メットを脱いで、髪をファサっとなびかせる女性はレイ君にヘルメットと手綱を渡そうとします。
「あら?おじ様は?‥‥って遅れるわ!しくじった!こんなにもう並んでいるなんて!」
目の前の女性にレイ君、硬直しております。
ですが一向にレイ君を見る事もなく、その手にヘルメットと手綱を渡しローゼは行列に走ります
「あっあの!!」
レイ君のフリーズが解けて呼びかけようとした時、ローゼは既に列に向かって猛ダッシュ!!
「最後尾はこっちですよー!」
プラカードを持った男性の声に最後尾に並ぶローゼ。
「ハァハァ‥‥ここが最後尾…ですよね…ハァハァ…」
「そうですよー。はい、これは入場整理券。順番を守ってくださいねー」
渡された整理券を見てローゼは天に向かって咆哮します。
「ヌォォォォォォ!」
その様子に前後附近に並んでいる人がびっくりしてますよ。
「お嬢さん、大丈夫かい?」
「だ、大丈夫じゃないですわぁぁぁ!!」
「どうしたんだい?」
「だって!だって!朝5時前からぶっ飛ばしてきたのに!85番って・・・無理だわぁ。うわぁぁん」
「な、何が無理なんだい?シューマイなら人数無制限だよ?」
「え?シューマイ‥‥なんですの・・・それ…」
「シューマイだよ。王都の隣の町にある名産のシューマイ」
「エ‥‥まさか…」
「大丈夫だよ。ちゃんと並んでる人数分は蒸してくれるから」
「お待ちになって…お待ちになってくださいまし…この列はグッズ購入者じゃないのですか?」
「グッズ?あぁ、それならこの通りの向こうだよ。凄いよね昨日から順番待ちしてたご令嬢が100人はいるようだよ」
「エ‥‥昨日??」
「そうだよ。先着のジャケット狙いの女の子はチラシが配られた時にもう並んだそうだ。いいねぇ若いって」
そしてローゼはまた咆哮をします
「ノォォォォォ!昨日から並んでるなんて!!抜かった!抜かったわぁぁぁ!」
「だ、大丈夫だよ。シューマイは買えるから」
「ノォォォォォ!しかも並んだ列を間違うなんてぇぇ!王都の隣じゃ王都じゃないじゃないのぉ!」
エールの人たちは優しいです。
咆哮するローゼに最初はドン引きしたものの、優しく肩を叩いてあげています。
おや?向こうから誰かが走って来ますよ。ローゼ!ほらっ!吠えてる場合じゃないよ!!
「はい、調査が必要と思われますので至急殿下に報告し、議会にも予算をつけてもらえるよう動きましょう」
野営をした魔術師団御一行は朝早くに設営を片付けるとエール領の領主の屋敷に向かいました。
エール伯爵は王都に居てこちらにはいませんが、嫡男夫妻がいたようです。
討伐依頼のあったサイクロシプスは発見が出来ないままでしたが、中級の魔物をかなり討伐しました。
隣り合うチョイス領には魔獣被害の報告がない事から、原因について調査を約束したレイ君は一行の前に来ます。
「長い野営で疲れているだろう。14時にエール領を出立するまで自由時間とする。但し騎士としての誇りと規律を乱さぬよう行動をする事」
「ハッ!!」
途端にワイワイとざわめく騎士たちは1人、2人と連れだって街に繰り出していきます。
馬の当番をしている部下にも声をかけて交代をしてあげるようですよ。
優しいですね。レイ君。
「班長は行かれないのですか?」
「俺はいい。特に土産を買う必要もないしな。それにこいつらの世話もしてやらねばならん」
そう言って飼い葉桶に首を入れて飼い葉を食べる馬を優しく撫でます。
ブルル♪
レイ君の馬、ファイヤーバード(えっ?馬なのにバード?)も嬉しそうですね。
真っ黒い毛並みのつやつやした大きな馬です。尻尾もふさふさです。
「よーしよし……今日もイケるなぁお前は…」
ちなみにファイヤーバードの母馬はリノジャッキン。父馬はコンティネンタァルと言います。
はい。余談です。
時刻はもうすぐ10時。
エール伯爵の屋敷の前は随分とにぎわっています。
人の声…というよりも若い女の子のキャッキャという声がよく聞こえてきます。
そこに‥‥
「パッパラッパパッパパー!!」
馬のドドッ!ドドッっと走る音と共に、なんだかラッパのような音が聞こえます。
もしや突然乗っていた馬が暴れ出したのでは?とレイ君急いで声の聞こえる方に転移します。ヒュン!!
「そこをどいてくださいましぃぃぃ~パッパラパ!!パッパー!!」
決して馬が暴れているわけではないようです。
しっかりと馬は制御され、飛ばしているんだなと判ります。
その上、騎乗しているのは若い女の子でどいてくれと叫び、笛のようなものを吹いて音で警告をしています。
「なっ…なんなんだ??」
しかし振り返ると開店前の行列が少し向こうに見えます。
このままでは危険だ!っと思ったレイ君。走ってくる馬の前に飛び出します・・・・が。
ザザー…パッカポッカ…
あれ?馬がゆっくりになって止まりましたよ。
「ありがとう!エールのおじ様!」
変なヘルメットを被ってはいるものの停止の反動で目元までヘルメットがズレた女性が馬から飛び降ります。
そして、ヘルメットのベルトがなかなか外れないようで悪戦苦闘しております。
「な、なんなんだ。君は」
メットを脱いで、髪をファサっとなびかせる女性はレイ君にヘルメットと手綱を渡そうとします。
「あら?おじ様は?‥‥って遅れるわ!しくじった!こんなにもう並んでいるなんて!」
目の前の女性にレイ君、硬直しております。
ですが一向にレイ君を見る事もなく、その手にヘルメットと手綱を渡しローゼは行列に走ります
「あっあの!!」
レイ君のフリーズが解けて呼びかけようとした時、ローゼは既に列に向かって猛ダッシュ!!
「最後尾はこっちですよー!」
プラカードを持った男性の声に最後尾に並ぶローゼ。
「ハァハァ‥‥ここが最後尾…ですよね…ハァハァ…」
「そうですよー。はい、これは入場整理券。順番を守ってくださいねー」
渡された整理券を見てローゼは天に向かって咆哮します。
「ヌォォォォォォ!」
その様子に前後附近に並んでいる人がびっくりしてますよ。
「お嬢さん、大丈夫かい?」
「だ、大丈夫じゃないですわぁぁぁ!!」
「どうしたんだい?」
「だって!だって!朝5時前からぶっ飛ばしてきたのに!85番って・・・無理だわぁ。うわぁぁん」
「な、何が無理なんだい?シューマイなら人数無制限だよ?」
「え?シューマイ‥‥なんですの・・・それ…」
「シューマイだよ。王都の隣の町にある名産のシューマイ」
「エ‥‥まさか…」
「大丈夫だよ。ちゃんと並んでる人数分は蒸してくれるから」
「お待ちになって…お待ちになってくださいまし…この列はグッズ購入者じゃないのですか?」
「グッズ?あぁ、それならこの通りの向こうだよ。凄いよね昨日から順番待ちしてたご令嬢が100人はいるようだよ」
「エ‥‥昨日??」
「そうだよ。先着のジャケット狙いの女の子はチラシが配られた時にもう並んだそうだ。いいねぇ若いって」
そしてローゼはまた咆哮をします
「ノォォォォォ!昨日から並んでるなんて!!抜かった!抜かったわぁぁぁ!」
「だ、大丈夫だよ。シューマイは買えるから」
「ノォォォォォ!しかも並んだ列を間違うなんてぇぇ!王都の隣じゃ王都じゃないじゃないのぉ!」
エールの人たちは優しいです。
咆哮するローゼに最初はドン引きしたものの、優しく肩を叩いてあげています。
おや?向こうから誰かが走って来ますよ。ローゼ!ほらっ!吠えてる場合じゃないよ!!
133
あなたにおすすめの小説
今更ですか?結構です。
みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。
エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。
え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。
相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。
クリスティーヌの本当の幸せ
宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。
この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
白のグリモワールの後継者~婚約者と親友が恋仲になりましたので身を引きます。今さら復縁を望まれても困ります!
ユウ
恋愛
辺境地に住まう伯爵令嬢のメアリ。
婚約者は幼馴染で聖騎士、親友は魔術師で優れた能力を持つていた。
対するメアリは魔力が低く治癒師だったが二人が大好きだったが、戦場から帰還したある日婚約者に別れを告げられる。
相手は幼少期から慕っていた親友だった。
彼は優しくて誠実な人で親友も優しく思いやりのある人。
だから婚約解消を受け入れようと思ったが、学園内では愛する二人を苦しめる悪女のように噂を流され別れた後も悪役令嬢としての噂を流されてしまう
学園にも居場所がなくなった後、悲しみに暮れる中。
一人の少年に手を差し伸べられる。
その人物は光の魔力を持つ剣帝だった。
一方、学園で真実の愛を貫き何もかも捨てた二人だったが、綻びが生じ始める。
聖騎士のスキルを失う元婚約者と、魔力が渇望し始めた親友が窮地にたたされるのだが…
タイトル変更しました。
【完結】断頭台で処刑された悪役王妃の生き直し
有栖多于佳
恋愛
近代ヨーロッパの、ようなある大陸のある帝国王女の物語。
30才で断頭台にかけられた王妃が、次の瞬間3才の自分に戻った。
1度目の世界では盲目的に母を立派な女帝だと思っていたが、よくよく思い起こせば、兄妹間で格差をつけて、お気に入りの子だけ依怙贔屓する毒親だと気づいた。
だいたい帝国は男子継承と決まっていたのをねじ曲げて強欲にも女帝になり、初恋の父との恋も成就させた結果、継承戦争起こし帝国は二つに割ってしまう。王配になった父は人の良いだけで頼りなく、全く人を見る目のないので軍の幹部に登用した者は役に立たない。
そんな両親と早い段階で決別し今度こそ幸せな人生を過ごすのだと、決意を胸に生き直すマリアンナ。
史実に良く似た出来事もあるかもしれませんが、この物語はフィクションです。
世界史の人物と同名が出てきますが、別人です。
全くのフィクションですので、歴史考察はありません。
*あくまでも異世界ヒューマンドラマであり、恋愛あり、残業ありの娯楽小説です。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
【完結】どうやら時戻りをしました。
まるねこ
恋愛
ウルダード伯爵家は借金地獄に陥り、借金返済のため泣く泣く嫁いだ先は王家の闇を担う家。
辛い日々に耐えきれずモアは自らの命を断つ。
時戻りをした彼女は同じ轍を踏まないと心に誓う。
※前半激重です。ご注意下さい
Copyright©︎2023-まるねこ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる