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第40話 うわぁ。べちょべちょだ
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クリスティアンと議長が戻っていくと、騎士が声をかける。
「行きました。大丈夫ですか?」
「大丈夫な訳がない・・・キッショ!グアァァ!気っ色い!」
「直ぐ湯を持ってきます。お待ちください」
騎士が駆け足で湯を持って来る!とその場を離れるとパンディトンもむくりと起き上がる。首をコキコキ。そしてグルリと回して、「ハァー」溜息と息を吐き出すと立ち上がりエリアスが繋がれている拘束具を外す。
「私よりお前の方がよっぽど怪我をしているのに元気だな」
「こんなところで死ねませんから」
ポイっと拘束具と一緒に何かを投げたパンディトン。石の床にカランコロンと音がする。
「取れたのか?」
「まぁ…掘りましたけど、なんとか取れました」
「掘り出っ?!」
「だって防具の切れ目だったんで入り込んでたんですよ」
念には念を入れたエリアスは帝国で開発中の防弾着をパンディトンには装着をさせていた。エリアスも胸はベスト型になった防弾着をつけていたが、太ももから脹脛に装着すると違和感があり歩きにくかったので外していた。
パンディトンは「着心地最高な防弾着があるわけないでしょうに」とちゃんと装着していたのだが、1発だけは切れ目から体内に銃弾がめり込んでしまった。
「帝国は開発してるんですよね。これ、至近弾には使えませんよ。背中はギリで止まってましたから。俺が金属アレルギーだったら今頃背中が湿疹だらけだ」
背中側から発射された弾丸は先端部分が防弾着を突き抜けていた。
あと1歩前に踏み込んで発射されていたら体内に弾が留まってしまっていただろう。
倒れた振りをするのはもしもの時は相手方に潜入したほうがやりやすいと判断したからだった。
どちらかは当初から拘束される予定だったが、想定外は2人とも拘束されたこと。
「くっそ。思い切り鞭打ちやがって。あのクソガキっ」
「言っとくけどそこまで打たれたら普通は死んでるからな?そこそこの兵士でも起き上がれないからな?」
「エリアス、なら俺も言わせてもらうがあんな狒々爺にぺろぺろされたらそれだけで俺は死ぬ。耐えられるお前の神経が信じられない」
「逆だろう。お前の場合は腹の中に毛玉が出来るから相手が――」
「そこまで毛深くない!失礼だな。帰ったら脱毛ワックスするわ!」
ハッキリ言おう。
パンディトンで体毛が確認できない部位は先ず顔の中央部から上。
拘束されて1週間目となる今日で無精髭も無精髭となって顎ともみあげは完全に繋がっている。
その他は手のひらと足の裏。
フッサフサのモッサモサ。かたや頭皮以外の薄毛に悩んだ事のないエリアスはツルツル。
「冬場の地下牢なら重宝されそうだが、夏場は一緒にいたくないな」
「失礼だな!!水を弾くから溺れないんだぞ!北極の白クマも溺れてないだろうがっ」
「グラシアナには溺れてるくせに~イキっちゃってまぁ♡」
拘束具を外されたエリアスは手首を撫でながら騎士が湯を運んでくるのを待った。
「臭っさ!あの親父、涎・・・グアァァー!臭っさ!」
「涎だらけだな。ご愁傷様」
「うわぁ‥どこもかしこも舐めやがって!ベチョベチョじゃないか!」
自分の肌が重なるとベチョベチョするのでエリアスが案山子のような態勢で文句を言っていると聞きなれた声がした。
「それだけ元気なら心配ないですよね」
「アリー!!やっと来てくれたか」
「来ましたよ~。ここは天井裏がないのでメアリーは議長の所に潜入してます」
壁に目アリー。壁のある所ならどこでも神出鬼没なアリーがそこにいた。
桶を抱えた騎士の隣でアリーはスポンジをクシャクシャと泡立てながら話しかける。
「そんな物何処からだしたんだ?!」
「やだなぁ。旦那様が水を含ませると膨らむって言ってた圧縮スポンジですよ。さ、体洗いますので」
珍しいものを見ればグラシアナが楽しめるかと思って取り寄せた圧縮スポンジ。こんな所で役に立つとはエリアスも思っていなかった。
裸になって、体を異性であるアリーに洗われてもエリアスは恥ずかしさはない。
それを見るパンディトンもよくある光景で幼い頃から両親もそうして使用人に体を洗って貰っていたので見た所で何も思わない。桶を抱える騎士も然り。
「ところでグラシアナにはお前とメアリーを連れて帝国の領事館に行けと伝えたんだが聞かなかったのか?」
「聞きましたよ~。はい、お尻洗いますので足上げてください」
「優しくな。最近馬車であちこちいってて窄まりが痛いんだ」
「いぼ痔・・・悪化しましたか?座薬持って来てないんです」
美丈夫なのにいぼ痔。いや、いいのだ。いぼ痔と美醜は関係ない。
アリ―に体を洗ってもらい、湯で最後に泡を流すと床がびしょびしょになった。
「デッキブラシ持って来ましょうか」と騎士。
足元の泡立つ水に議長の涎が含まれているかと思うとエリアスとパンディトンは即答した。
「頼んだ。アリ―も手伝ってくれ」
「えぇーっ?!私に清掃をしろと?!」
そうだった。アリ―はメアリーと同じ。
料理もだが、世間一般で「家事」と呼ばれる仕事には不向きな侍女だった。
頼めばより酷くなる惨状しか思い描けない。
「掃除は私とパンディトンで行なう。ここに来たのは・・・執事の命ではないな?」
「違います。お嬢様のお願いです」
「グラシアナの?!」
「言っておきますけど、命令ではないです。お願いですからね。お二人のこと、心配してましたよ。敵を騙すには味方からと言いますけど可哀想です」
「心配させたくなったし2人一緒にここで仮住まいになるとは思ってなかったんだ」
「だとしてもです。ま、おかげでお風呂の約束取り付けたんでいいですけど」
「長く家を空ける訳じゃない。のんびり過ごせと伝えてくれ」
「はーい。じゃ、お掃除頑張ってくださいね」
返事をするや否やアリーは壁に溶け込むように消えていく。
メアリーは闇に紛れる衣装だが、アリーの衣装は石柄。
アリ―の気配が消えたあとエリアスとパンディトンはデッキブラシで汚水を通路側にせっせと流したのだった。
「行きました。大丈夫ですか?」
「大丈夫な訳がない・・・キッショ!グアァァ!気っ色い!」
「直ぐ湯を持ってきます。お待ちください」
騎士が駆け足で湯を持って来る!とその場を離れるとパンディトンもむくりと起き上がる。首をコキコキ。そしてグルリと回して、「ハァー」溜息と息を吐き出すと立ち上がりエリアスが繋がれている拘束具を外す。
「私よりお前の方がよっぽど怪我をしているのに元気だな」
「こんなところで死ねませんから」
ポイっと拘束具と一緒に何かを投げたパンディトン。石の床にカランコロンと音がする。
「取れたのか?」
「まぁ…掘りましたけど、なんとか取れました」
「掘り出っ?!」
「だって防具の切れ目だったんで入り込んでたんですよ」
念には念を入れたエリアスは帝国で開発中の防弾着をパンディトンには装着をさせていた。エリアスも胸はベスト型になった防弾着をつけていたが、太ももから脹脛に装着すると違和感があり歩きにくかったので外していた。
パンディトンは「着心地最高な防弾着があるわけないでしょうに」とちゃんと装着していたのだが、1発だけは切れ目から体内に銃弾がめり込んでしまった。
「帝国は開発してるんですよね。これ、至近弾には使えませんよ。背中はギリで止まってましたから。俺が金属アレルギーだったら今頃背中が湿疹だらけだ」
背中側から発射された弾丸は先端部分が防弾着を突き抜けていた。
あと1歩前に踏み込んで発射されていたら体内に弾が留まってしまっていただろう。
倒れた振りをするのはもしもの時は相手方に潜入したほうがやりやすいと判断したからだった。
どちらかは当初から拘束される予定だったが、想定外は2人とも拘束されたこと。
「くっそ。思い切り鞭打ちやがって。あのクソガキっ」
「言っとくけどそこまで打たれたら普通は死んでるからな?そこそこの兵士でも起き上がれないからな?」
「エリアス、なら俺も言わせてもらうがあんな狒々爺にぺろぺろされたらそれだけで俺は死ぬ。耐えられるお前の神経が信じられない」
「逆だろう。お前の場合は腹の中に毛玉が出来るから相手が――」
「そこまで毛深くない!失礼だな。帰ったら脱毛ワックスするわ!」
ハッキリ言おう。
パンディトンで体毛が確認できない部位は先ず顔の中央部から上。
拘束されて1週間目となる今日で無精髭も無精髭となって顎ともみあげは完全に繋がっている。
その他は手のひらと足の裏。
フッサフサのモッサモサ。かたや頭皮以外の薄毛に悩んだ事のないエリアスはツルツル。
「冬場の地下牢なら重宝されそうだが、夏場は一緒にいたくないな」
「失礼だな!!水を弾くから溺れないんだぞ!北極の白クマも溺れてないだろうがっ」
「グラシアナには溺れてるくせに~イキっちゃってまぁ♡」
拘束具を外されたエリアスは手首を撫でながら騎士が湯を運んでくるのを待った。
「臭っさ!あの親父、涎・・・グアァァー!臭っさ!」
「涎だらけだな。ご愁傷様」
「うわぁ‥どこもかしこも舐めやがって!ベチョベチョじゃないか!」
自分の肌が重なるとベチョベチョするのでエリアスが案山子のような態勢で文句を言っていると聞きなれた声がした。
「それだけ元気なら心配ないですよね」
「アリー!!やっと来てくれたか」
「来ましたよ~。ここは天井裏がないのでメアリーは議長の所に潜入してます」
壁に目アリー。壁のある所ならどこでも神出鬼没なアリーがそこにいた。
桶を抱えた騎士の隣でアリーはスポンジをクシャクシャと泡立てながら話しかける。
「そんな物何処からだしたんだ?!」
「やだなぁ。旦那様が水を含ませると膨らむって言ってた圧縮スポンジですよ。さ、体洗いますので」
珍しいものを見ればグラシアナが楽しめるかと思って取り寄せた圧縮スポンジ。こんな所で役に立つとはエリアスも思っていなかった。
裸になって、体を異性であるアリーに洗われてもエリアスは恥ずかしさはない。
それを見るパンディトンもよくある光景で幼い頃から両親もそうして使用人に体を洗って貰っていたので見た所で何も思わない。桶を抱える騎士も然り。
「ところでグラシアナにはお前とメアリーを連れて帝国の領事館に行けと伝えたんだが聞かなかったのか?」
「聞きましたよ~。はい、お尻洗いますので足上げてください」
「優しくな。最近馬車であちこちいってて窄まりが痛いんだ」
「いぼ痔・・・悪化しましたか?座薬持って来てないんです」
美丈夫なのにいぼ痔。いや、いいのだ。いぼ痔と美醜は関係ない。
アリ―に体を洗ってもらい、湯で最後に泡を流すと床がびしょびしょになった。
「デッキブラシ持って来ましょうか」と騎士。
足元の泡立つ水に議長の涎が含まれているかと思うとエリアスとパンディトンは即答した。
「頼んだ。アリ―も手伝ってくれ」
「えぇーっ?!私に清掃をしろと?!」
そうだった。アリ―はメアリーと同じ。
料理もだが、世間一般で「家事」と呼ばれる仕事には不向きな侍女だった。
頼めばより酷くなる惨状しか思い描けない。
「掃除は私とパンディトンで行なう。ここに来たのは・・・執事の命ではないな?」
「違います。お嬢様のお願いです」
「グラシアナの?!」
「言っておきますけど、命令ではないです。お願いですからね。お二人のこと、心配してましたよ。敵を騙すには味方からと言いますけど可哀想です」
「心配させたくなったし2人一緒にここで仮住まいになるとは思ってなかったんだ」
「だとしてもです。ま、おかげでお風呂の約束取り付けたんでいいですけど」
「長く家を空ける訳じゃない。のんびり過ごせと伝えてくれ」
「はーい。じゃ、お掃除頑張ってくださいね」
返事をするや否やアリーは壁に溶け込むように消えていく。
メアリーは闇に紛れる衣装だが、アリーの衣装は石柄。
アリ―の気配が消えたあとエリアスとパンディトンはデッキブラシで汚水を通路側にせっせと流したのだった。
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