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第14話 口は悪いけど優しい
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「アッハッハ。そんな事があったのか。災難だったな」
遂に窯の火入れが終わり冷却期間になった日、先日の事をジョシュアさんに話をすると笑われてしまったわね。
決して笑い話ではなかったんだけど。
ちなみに翌日も師匠のジョシュアさんの所に夜明け前に出掛けたので離縁書はもう1枚増えた。
たった2日で10日も離縁の日が近づいたかと思うと感慨深い。
「離縁の日、私、泣いちゃうかも?」
ただでさえ貯まりに貯まった離縁書で3カ月も離縁の日まで短縮になっているのにまた10日。
ブレン伯爵にはもう感謝しかない。が、ふと気が付いた。
「ねぇ。何もなく3年の満了日に使える離縁書が18枚だったじゃない?」
「そうですね。どうしました?」
「その時点で18枚だから3カ月短縮でしょう?って事は3カ月短縮した時から見れば枚数増えない?」
「それもそうですね…一応確認しましょうか?正規の期日が動くならあと7枚は追加になりますし」
「7枚も?!7枚って35日よ?下手したらもう明日にでも離縁出来るんじゃない?」
「奥様、ハンナに走って貰いますから焦らないで」
これが焦らずにいられようか。
池で溺れた日から今日で2カ月。つまり60日経過してる。
そこに期日が前倒しになるなら125日分と先日の10日が引かれるので、離縁の条件は満たしている事になる。
「でも奥様、仮に条件が満たされていたら出て行くことになりますよね」
「それもそうね」
現実を考えると35日の短縮はなくてもいいかな?と思える。
父も兄も遠くの領地にいるし、落ち穂事業は赤字のまま。事業には私の持参金を投入しているし、貸付分は不貞の慰謝料として相殺するにしても本当に身1つで伯爵家を出ることになってしまう。
マリエンさんは「がっつり慰謝料貰えば良いんですよ」と言うけれど、「私の金で離縁後も生活する気か」とか言われそうなので、私としては慰謝料と貸付分を相殺してもらってオサラバ!のほうが都合がいい。
お金って後々まで言われるし、関係ない人まで「出戻りの癖に」とか他人の懐を試算して嫌味を言う人もいるしね。
「どうした。遂に愛人に乗っ取られるのか?」
「違います~。愛人に進呈するんです~。あ、師匠。離縁したらここで働いても良いですか?」
「構わないが、思っているほどの給料は出せないぞ」
「お給金は儲けた時で良いです。その代わり住み込みで。一応実家で料理も掃除もしてたので出来ますよ?」
「住み込み?冗談は顔だけにしろ」
(顔…そんな冗談顔なのかしら?)
師匠はなんだかんだで優しいのを私は気が付いてしまった。
口が悪いのは置いといて、売るための炭を減らして私の言う落穂で作る炭のスペースを作ってくれた。
半人前以下なので、落ち穂の炭はまだ先かと思っていたけどわざわざ落ち穂を固めてくれていたし、用意をしている事も窯の中に積むまで私は知らなかった。
「師匠、冗談じゃなくて離縁したら永久の弟子にしてくれます?」
「は?何を言ってるんだ。男に冗談でもそんな事を言うな」
こつんと軽く拳骨を食らったけれど、師匠のジョシュアさんは「窯を見て来る」と離れて行ってしまった。
「そんな事、冗談でも言うな!まったく…」
ジョシュアさんの呟きは聞こえなかった。
窯を冷ましている間は炭を出したあとの窯の掃除。
ヨハンさんが現役も現役の時は常に3つの窯が休みなく稼働していたそうだけど、今は注文が一定数貯まるまでは窯に積み込むことも火を入れる事もない。
そう考えると、今、冷ましている窯も本当ならまだ火を入れる時ではなかったのだろうなと思えるのは、扉のない玄関前に「もうすぐ炭の販売開始」を知らせる看板をジョシュアさんが出したから。
古びた看板はあまり使われることがないようで埃を被っていた。
「お前が頼んだ炭を焼いたから」とジョシュアさんは言わない。
(口は悪いけど優しいのよね)
次に積み込む端材や薪を用意しているジョシュアさんの背を見つつ窯の中の灰を出しているとハンナさんが戻ってきた。
「どうだった?短くなりそう?」
「ダメですね。満了する期日からの計算だそうです」
「そうかぁ。何事も思い通りにはならないわね」
となれば残りは1カ月ほど。
家、探さないとなぁ。
そう考えつつ、窯の中の灰を集めたのだった。
遂に窯の火入れが終わり冷却期間になった日、先日の事をジョシュアさんに話をすると笑われてしまったわね。
決して笑い話ではなかったんだけど。
ちなみに翌日も師匠のジョシュアさんの所に夜明け前に出掛けたので離縁書はもう1枚増えた。
たった2日で10日も離縁の日が近づいたかと思うと感慨深い。
「離縁の日、私、泣いちゃうかも?」
ただでさえ貯まりに貯まった離縁書で3カ月も離縁の日まで短縮になっているのにまた10日。
ブレン伯爵にはもう感謝しかない。が、ふと気が付いた。
「ねぇ。何もなく3年の満了日に使える離縁書が18枚だったじゃない?」
「そうですね。どうしました?」
「その時点で18枚だから3カ月短縮でしょう?って事は3カ月短縮した時から見れば枚数増えない?」
「それもそうですね…一応確認しましょうか?正規の期日が動くならあと7枚は追加になりますし」
「7枚も?!7枚って35日よ?下手したらもう明日にでも離縁出来るんじゃない?」
「奥様、ハンナに走って貰いますから焦らないで」
これが焦らずにいられようか。
池で溺れた日から今日で2カ月。つまり60日経過してる。
そこに期日が前倒しになるなら125日分と先日の10日が引かれるので、離縁の条件は満たしている事になる。
「でも奥様、仮に条件が満たされていたら出て行くことになりますよね」
「それもそうね」
現実を考えると35日の短縮はなくてもいいかな?と思える。
父も兄も遠くの領地にいるし、落ち穂事業は赤字のまま。事業には私の持参金を投入しているし、貸付分は不貞の慰謝料として相殺するにしても本当に身1つで伯爵家を出ることになってしまう。
マリエンさんは「がっつり慰謝料貰えば良いんですよ」と言うけれど、「私の金で離縁後も生活する気か」とか言われそうなので、私としては慰謝料と貸付分を相殺してもらってオサラバ!のほうが都合がいい。
お金って後々まで言われるし、関係ない人まで「出戻りの癖に」とか他人の懐を試算して嫌味を言う人もいるしね。
「どうした。遂に愛人に乗っ取られるのか?」
「違います~。愛人に進呈するんです~。あ、師匠。離縁したらここで働いても良いですか?」
「構わないが、思っているほどの給料は出せないぞ」
「お給金は儲けた時で良いです。その代わり住み込みで。一応実家で料理も掃除もしてたので出来ますよ?」
「住み込み?冗談は顔だけにしろ」
(顔…そんな冗談顔なのかしら?)
師匠はなんだかんだで優しいのを私は気が付いてしまった。
口が悪いのは置いといて、売るための炭を減らして私の言う落穂で作る炭のスペースを作ってくれた。
半人前以下なので、落ち穂の炭はまだ先かと思っていたけどわざわざ落ち穂を固めてくれていたし、用意をしている事も窯の中に積むまで私は知らなかった。
「師匠、冗談じゃなくて離縁したら永久の弟子にしてくれます?」
「は?何を言ってるんだ。男に冗談でもそんな事を言うな」
こつんと軽く拳骨を食らったけれど、師匠のジョシュアさんは「窯を見て来る」と離れて行ってしまった。
「そんな事、冗談でも言うな!まったく…」
ジョシュアさんの呟きは聞こえなかった。
窯を冷ましている間は炭を出したあとの窯の掃除。
ヨハンさんが現役も現役の時は常に3つの窯が休みなく稼働していたそうだけど、今は注文が一定数貯まるまでは窯に積み込むことも火を入れる事もない。
そう考えると、今、冷ましている窯も本当ならまだ火を入れる時ではなかったのだろうなと思えるのは、扉のない玄関前に「もうすぐ炭の販売開始」を知らせる看板をジョシュアさんが出したから。
古びた看板はあまり使われることがないようで埃を被っていた。
「お前が頼んだ炭を焼いたから」とジョシュアさんは言わない。
(口は悪いけど優しいのよね)
次に積み込む端材や薪を用意しているジョシュアさんの背を見つつ窯の中の灰を出しているとハンナさんが戻ってきた。
「どうだった?短くなりそう?」
「ダメですね。満了する期日からの計算だそうです」
「そうかぁ。何事も思い通りにはならないわね」
となれば残りは1カ月ほど。
家、探さないとなぁ。
そう考えつつ、窯の中の灰を集めたのだった。
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