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シャロンの溜息
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「お嬢様、明日はどうされます?」
伯爵家に戻ったシャロンはお付きのメイドであるリーナに
髪を透かれながら問われる。
「明日は王立図書館にでも行こうかしら」
「では、明日はあまり香る物は付けないように致しますね」
「助かるわ。ありがとう。貴女も早く休みなさいね」
「いえいえ。まだこれからお嬢様にはマッサージを受けて頂きます」
リーナの後ろにはシャロンを磨こうとマッサージするために
メイドが準備万端で今か今かと待っています。
「いいのよ。出戻りなんだから磨いたところで意味がないわ」
「いいえ!お嬢様をピッカピカにして差し上げます!」
5年の同棲、引き続いて2年の結婚生活でシャロンの髪は傷んでいました。
リーナはたっぷりの髪油をつけてゆっくりと透いていきます。
王国でも3本の指に入ると言われたシャロンの髪は
美しいプラチナブロンドで男性だけでなく女性も見惚れる程でした。
「こんなに傷んで・・お労しい」
「そんなに言わないで。納得して過ごした7年だもの」
「ですがっ!それをあの男はっ!」
「そんなに怒ると髪を引っ張ってしまうわ」
「あっ、申し訳ございませんっ。痛かったですか?」
「ウフフ・・まだ引っ張られてないわ。大丈夫」
髪を透き終えると、こじんまりとしたエステ用ベッドにうつ伏せになり
メイドたちのマッサージを受けます。
「プルプルのゆで卵よりも麗しい肌にいたしますからね!」
「適当でいいわよ。あなた達も早く休まないと」
「何を言ってるんですか。手もこんなに荒れて!許せませんっ」
指先にまでたっぷりのオイルを塗ってマッサージを受けます。
痛くもなくとても気持ちいい時間が過ぎていきます。
シリウスとの結婚生活ではメイドを雇う余裕などあるはずもなく
蝶よ花よと育てられたシャロンはお遊び程度のお菓子が
料理人の手伝い程度で作れるだけでしたが、
近所の奥さん連中にも教えてもらい始めて包丁で肉や野菜を切り、
井戸から水を汲みあげて運び、火を起こして料理をしたり、
寒い雪の日も雑巾で掃除をしたりでアカギレやひび割れの跡が
残ってしまっていたのです。
シャロンは家事の他に文字が読み書き出来、計算もできたので
市場でも経理の仕事に雇ってもらい働きました。
刺繡は令嬢の嗜みとしてやっていたので、休みの日や空き時間に
刺繍を施し、少ない稼ぎにもなっていました。
最初の頃は、服を縫うのは出来なくて、簡単なほつれを直したり
ボタンを付け替える程度でしたが、貧乏であるがゆえに
売り物にはなりませんが簡単なワンピース程度なら縫えるほどにまで
上達しておりました。
「わたくしね、お金を稼ぐのがどんなに難しいのか
それがわかっただけでも満足をしているのよ」
その言葉に、涙ぐむメイド。
「本当ならそのような事、お嬢様はしなくてよいのですよ」
「あら?ダメよ。当たり前だと思ってはダメだって知れたのだもの
本当に良い経験になったわ」
「そうは言っても、私達はあの男を許しませんっ!」
「そうですよ。こう言っては何ですけど・・お子様が出来なかったのは
不幸中の幸いだと思っているんですよ!」
そう、シャロンとシリウスの間に子供はいませんでした。
関係がなかったという事はないのですが、恵まれませんでした。
「お嬢様、神殿に行くのは来月なのですよね・・大丈夫ですか?」
「えぇ。その日はお姉様もジャスティンも一緒に来てくれるって」
「旦那様は行かれないのですか?」
「お父様が来たら大変な事になっちゃうわ」
「うーん・・そうですね。一番効果はありそうですけど
猟銃で撃ち殺しそうですもんね。違う意味で修羅場ですね」
1人のメイドが物騒な事を言いますが、他のメイドは大きく頷きます。
それだけ伯爵は怒っているという事なのです。
マッサージが終わるとシャロンはメイド1人1人に礼を言って
お茶を淹れてもらうと部屋で独り言ちます。
「君だけを愛しぬくと言ったくせに・・ウソつき」
窓に映る自分を見てため息を吐くのでした。
伯爵家に戻ったシャロンはお付きのメイドであるリーナに
髪を透かれながら問われる。
「明日は王立図書館にでも行こうかしら」
「では、明日はあまり香る物は付けないように致しますね」
「助かるわ。ありがとう。貴女も早く休みなさいね」
「いえいえ。まだこれからお嬢様にはマッサージを受けて頂きます」
リーナの後ろにはシャロンを磨こうとマッサージするために
メイドが準備万端で今か今かと待っています。
「いいのよ。出戻りなんだから磨いたところで意味がないわ」
「いいえ!お嬢様をピッカピカにして差し上げます!」
5年の同棲、引き続いて2年の結婚生活でシャロンの髪は傷んでいました。
リーナはたっぷりの髪油をつけてゆっくりと透いていきます。
王国でも3本の指に入ると言われたシャロンの髪は
美しいプラチナブロンドで男性だけでなく女性も見惚れる程でした。
「こんなに傷んで・・お労しい」
「そんなに言わないで。納得して過ごした7年だもの」
「ですがっ!それをあの男はっ!」
「そんなに怒ると髪を引っ張ってしまうわ」
「あっ、申し訳ございませんっ。痛かったですか?」
「ウフフ・・まだ引っ張られてないわ。大丈夫」
髪を透き終えると、こじんまりとしたエステ用ベッドにうつ伏せになり
メイドたちのマッサージを受けます。
「プルプルのゆで卵よりも麗しい肌にいたしますからね!」
「適当でいいわよ。あなた達も早く休まないと」
「何を言ってるんですか。手もこんなに荒れて!許せませんっ」
指先にまでたっぷりのオイルを塗ってマッサージを受けます。
痛くもなくとても気持ちいい時間が過ぎていきます。
シリウスとの結婚生活ではメイドを雇う余裕などあるはずもなく
蝶よ花よと育てられたシャロンはお遊び程度のお菓子が
料理人の手伝い程度で作れるだけでしたが、
近所の奥さん連中にも教えてもらい始めて包丁で肉や野菜を切り、
井戸から水を汲みあげて運び、火を起こして料理をしたり、
寒い雪の日も雑巾で掃除をしたりでアカギレやひび割れの跡が
残ってしまっていたのです。
シャロンは家事の他に文字が読み書き出来、計算もできたので
市場でも経理の仕事に雇ってもらい働きました。
刺繡は令嬢の嗜みとしてやっていたので、休みの日や空き時間に
刺繍を施し、少ない稼ぎにもなっていました。
最初の頃は、服を縫うのは出来なくて、簡単なほつれを直したり
ボタンを付け替える程度でしたが、貧乏であるがゆえに
売り物にはなりませんが簡単なワンピース程度なら縫えるほどにまで
上達しておりました。
「わたくしね、お金を稼ぐのがどんなに難しいのか
それがわかっただけでも満足をしているのよ」
その言葉に、涙ぐむメイド。
「本当ならそのような事、お嬢様はしなくてよいのですよ」
「あら?ダメよ。当たり前だと思ってはダメだって知れたのだもの
本当に良い経験になったわ」
「そうは言っても、私達はあの男を許しませんっ!」
「そうですよ。こう言っては何ですけど・・お子様が出来なかったのは
不幸中の幸いだと思っているんですよ!」
そう、シャロンとシリウスの間に子供はいませんでした。
関係がなかったという事はないのですが、恵まれませんでした。
「お嬢様、神殿に行くのは来月なのですよね・・大丈夫ですか?」
「えぇ。その日はお姉様もジャスティンも一緒に来てくれるって」
「旦那様は行かれないのですか?」
「お父様が来たら大変な事になっちゃうわ」
「うーん・・そうですね。一番効果はありそうですけど
猟銃で撃ち殺しそうですもんね。違う意味で修羅場ですね」
1人のメイドが物騒な事を言いますが、他のメイドは大きく頷きます。
それだけ伯爵は怒っているという事なのです。
マッサージが終わるとシャロンはメイド1人1人に礼を言って
お茶を淹れてもらうと部屋で独り言ちます。
「君だけを愛しぬくと言ったくせに・・ウソつき」
窓に映る自分を見てため息を吐くのでした。
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