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騎士の夫人会
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シリウスに聞かなければ・・と思いつつも聞けない日が続く。
そうしているうちに、騎士団は定期的に遠征があるので
シリウスは遠征に出てしまう。
遠征は短いときで1週間程だが、同棲中に一番長い3か月という
期間になった事もあった。
『妻帯者は短期で良いそうなんだ』
そう言っても、2,3か月おきに1~3週間の遠征はある。
聞けないままシリウスは2週間の遠征に出ていった。
騎士は身の回りの事は自分でほぼできるので
嵩張らないリュック型の袋に必要最低限の着替えを詰めるのも
シリウスは自分でやってしまう。
トイレで吐いた日からシリウスは今まで以上に優しくはなったが
帰宅時間などが変わる事はなかった。
ただ、夕食を共にする回数は減った。
『具合が悪いときは、無理に作らなくていいから』
そう言って早番の時も出がけに夕食は不要だという事が増えたのだ。
そしてそんな時は帰宅が深夜になる事も増えた。
ベッドは1つしかないので一緒に寝るが、
求められる事がなくなった。少なくなったのではなく、なくなったのだ。
カリナはあの日から3か月の間来ることはなかった。
ーーちゃんとお金を貰ってるからなのかしらーー
そして
ーーもしかして、あの子が歩き始める頃だから帰りが遅いの?ーー
1人で取る食事は昼食はシリウスが休みの時以外はいつもの事だが
夕食もとなると食べる気がなくなった。
そんな日は朝食だけしか取らない事もあってシャロンは
見る間に痩せていった。
元々細身だったが、さらに細くなり、そのせいか月のものも止まった。
そんなシリウスの遠征期間中に、年に2回の騎士団の夫人会があった。
夫が班長である以上、余程の事がないと休むわけにはいかずに
仕事も休暇を貰って参加をする。
『リンデルさん、離縁したんですって』
噂話の好きなご夫人の集まりにはゴシップは付き物である。
流行の役者の話題も盛り上がるが、一番はやはり人の不幸である。
ーーそういうのは平民も貴族も同じなんだわーー
シャロンはそう思いつつ聞きたくもない噂話を聞かされる。
『リンデルさん、遠征先で花を買ったそうなのよ』
『まぁ、仕方ないとは言え・・不潔ですわ』
『で、半年後に妊娠したって娼婦が乗り込んできたそうよ』
『まぁ!するべき事をされてなかったのね』
『そりゃもう聞くに堪えない罵り合いでしたそうよ』
この場合、大抵は男性側ではなく女性の娼婦の方が
避妊の薬や用具を使ってなかったのだと非難をされるのである。
遠征先で精を出すことは致し方ないと思われていても
こうやって醜聞となると聞きたくもない。
『そういえばルワンドさんのところもですわよ』
『あの方は奥様に一途ではありませんでしたこと?』
『それがね、鍛錬場近くの食堂の女の子に入れ上げたそうですわ』
『まぁ、それで?』
『休日なのに仕事だと出かけたり、帰宅時間が遅くなったりで
大げんかしておりましたわ』
聞く気のなかった噂話だったがシャロンは耳を欹てた。
『食堂ってあのエルマ食堂ですの?』
『そうそう、最近若い女の子を雇ったって。
だけど、そんな修羅場を店でやったものだからクビにしたとか』
『人様の旦那に手を出さなくてもねぇ』
『でも独身の騎士だと良いとこのお坊ちゃんじゃない限り薄給でしょう?
少々花やら貰っても今時の女の子は靡きませんわ』
『あらやだ、ウチ気をつけなくちゃ』
『オホホホホ』
既視感のあるような話が途切れるとお開きの準備が始まる。
シャロンは慌てて年配の女性たちを送り出すため席を立つ。
「本日はありがとうございました」
1人1人に丁寧に礼を言うとその中の1人の夫人が話しかける。
『ワーグナーさんのところも気を付けたほうがいいわ』
「と、申しますと?」
『早くお子さんを作らないとよそ見しちゃうわよ』
『ダメですわよ。そんな事を言っては』
『あら、本当よ。特に班長さんは子供好きですもの。
つなぎとめておくには一番効果がありますわ』
そんな夫人たちを引きつった笑い顔で見送り
シャロンは力なく誰もいない家に帰ったのでした。
そうしているうちに、騎士団は定期的に遠征があるので
シリウスは遠征に出てしまう。
遠征は短いときで1週間程だが、同棲中に一番長い3か月という
期間になった事もあった。
『妻帯者は短期で良いそうなんだ』
そう言っても、2,3か月おきに1~3週間の遠征はある。
聞けないままシリウスは2週間の遠征に出ていった。
騎士は身の回りの事は自分でほぼできるので
嵩張らないリュック型の袋に必要最低限の着替えを詰めるのも
シリウスは自分でやってしまう。
トイレで吐いた日からシリウスは今まで以上に優しくはなったが
帰宅時間などが変わる事はなかった。
ただ、夕食を共にする回数は減った。
『具合が悪いときは、無理に作らなくていいから』
そう言って早番の時も出がけに夕食は不要だという事が増えたのだ。
そしてそんな時は帰宅が深夜になる事も増えた。
ベッドは1つしかないので一緒に寝るが、
求められる事がなくなった。少なくなったのではなく、なくなったのだ。
カリナはあの日から3か月の間来ることはなかった。
ーーちゃんとお金を貰ってるからなのかしらーー
そして
ーーもしかして、あの子が歩き始める頃だから帰りが遅いの?ーー
1人で取る食事は昼食はシリウスが休みの時以外はいつもの事だが
夕食もとなると食べる気がなくなった。
そんな日は朝食だけしか取らない事もあってシャロンは
見る間に痩せていった。
元々細身だったが、さらに細くなり、そのせいか月のものも止まった。
そんなシリウスの遠征期間中に、年に2回の騎士団の夫人会があった。
夫が班長である以上、余程の事がないと休むわけにはいかずに
仕事も休暇を貰って参加をする。
『リンデルさん、離縁したんですって』
噂話の好きなご夫人の集まりにはゴシップは付き物である。
流行の役者の話題も盛り上がるが、一番はやはり人の不幸である。
ーーそういうのは平民も貴族も同じなんだわーー
シャロンはそう思いつつ聞きたくもない噂話を聞かされる。
『リンデルさん、遠征先で花を買ったそうなのよ』
『まぁ、仕方ないとは言え・・不潔ですわ』
『で、半年後に妊娠したって娼婦が乗り込んできたそうよ』
『まぁ!するべき事をされてなかったのね』
『そりゃもう聞くに堪えない罵り合いでしたそうよ』
この場合、大抵は男性側ではなく女性の娼婦の方が
避妊の薬や用具を使ってなかったのだと非難をされるのである。
遠征先で精を出すことは致し方ないと思われていても
こうやって醜聞となると聞きたくもない。
『そういえばルワンドさんのところもですわよ』
『あの方は奥様に一途ではありませんでしたこと?』
『それがね、鍛錬場近くの食堂の女の子に入れ上げたそうですわ』
『まぁ、それで?』
『休日なのに仕事だと出かけたり、帰宅時間が遅くなったりで
大げんかしておりましたわ』
聞く気のなかった噂話だったがシャロンは耳を欹てた。
『食堂ってあのエルマ食堂ですの?』
『そうそう、最近若い女の子を雇ったって。
だけど、そんな修羅場を店でやったものだからクビにしたとか』
『人様の旦那に手を出さなくてもねぇ』
『でも独身の騎士だと良いとこのお坊ちゃんじゃない限り薄給でしょう?
少々花やら貰っても今時の女の子は靡きませんわ』
『あらやだ、ウチ気をつけなくちゃ』
『オホホホホ』
既視感のあるような話が途切れるとお開きの準備が始まる。
シャロンは慌てて年配の女性たちを送り出すため席を立つ。
「本日はありがとうございました」
1人1人に丁寧に礼を言うとその中の1人の夫人が話しかける。
『ワーグナーさんのところも気を付けたほうがいいわ』
「と、申しますと?」
『早くお子さんを作らないとよそ見しちゃうわよ』
『ダメですわよ。そんな事を言っては』
『あら、本当よ。特に班長さんは子供好きですもの。
つなぎとめておくには一番効果がありますわ』
そんな夫人たちを引きつった笑い顔で見送り
シャロンは力なく誰もいない家に帰ったのでした。
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