騎士団長!!参る!!

cyaru

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副官は比較をしてしまう

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その頃、第二騎士団では実戦を見据えた訓練を模擬刀で行っております。

ワーワー!!カンカンカンッ!!

「お前はここに意識をするんだ。相手が構えたからといって腰を引くな」

グッと腕の位置と腰を据えるようにフェリックスに指導される新人騎士。
はいと大きく返事をするとまた組み手を始めていますね。

「やはり実戦はまだ無理のようですねぇ」
「うむ。だが仕方あるまい。今度の警備は王妃様の視察の警護だったな。そろそろ人員を選ばねばならんな」
「今回は再編された第二騎士団の初陣でもありますから団長は外せませんよ」
「わかっている。苦渋の判断をせねばなるまい」
「わかってないじゃないですか。実行を伴ってください。さっさと苦渋の決断をしてください」

リカチャは手にしたボードにある遂行員の名前の一番上にあるフェリックスの文字を指さしてフフンと笑います。

稽古場を後にして廊下を歩いていると数人の女性とすれ違います。
リカチャを見ると思わずポッと頬を赤らめて恥ずかし気に俯きますが、隣にある大きな置物のようなフェリックスを見るなり壁に張り付くほど距離を取る女性達。
いつもの事なので気にしないフェリックスと、少し女性の態度にムっとするリカチャ。

「失礼な。あとで指導しておきます」
「ん?だが彼女たちは団員ではないだろう?」
「向こうで演習しているヤツラの奥方ですよ。全く、夫の上司だというのに!」
「だが、彼女たちは何をしにここにきているのだ?」
「あぁ、もうすぐ昼ですからね。弁当でも持ってきたんでしょう」
「弁当?食堂があるのにか?」

学園の騎士科でもですが、騎士になってそういう経験がないフェリックス。
食事と女性‥‥というと食堂のオバちゃんくらいでしょうか。

「食堂のメシも美味いのにな。今日の日替わりは鮭のバター炒めらしいぞ」
「団長、サケが好きなんですか?」
「あぁ、遠征で行った地区に鮭が遡上する川があってな。手づかみで獲った事もあるぞ。旨いぞ」

オパールが聞いたらめっちゃ喜びそうですな。獲り尽くすまで川に入れられそうです。
あぁ・・・光景が想像できて怖い。

「まぁ、彼女たちは食堂は利用させないでしょうね」
「何故だ?安いし旨いのに」
「牽制してんですよ。自分の男に色目を使う女を」
「色目で見る?相手がいるような男にすり寄っても時間の無駄だろうが」
「相手がいるからですよ。それだけ有望株という事です。彼女らには将来結婚した時にどれだけ楽と贅沢が出来るかってのが基準なんです。それに騎士は遠征で留守も多いし、若くして死ぬ確率も高い。有望株はもしもの時に出る見舞金の額もそれなりにありますからね。他の男でも寝取ってしまえば儲けモン。そういうのを牽制してるんですよ。折角捕まえた男を横取りされちゃたまんないってね」

フェリックスは遠い日を思い出します。
学園でも3本の指に入る令嬢から告白をされたものの、その場で返事をするより家を通した方がいいだろうと即答を控えた事が幸いして、ご令嬢の本心を聞いてしまったあの日。
令嬢に対してではなく、浮かれた自分がいた事が悔しくて樫の木に怒りをぶつけてしまったあの日。
木の幹が直径40センチほどの固い樫の木に拳を一発!そのまま倒れてしまった樫の木。

「枝に巣を作っていた小鳥には悪い事をしたな…八つ当たりはいかん。いかん」

小さく呟いて首をふるフェリックスを見てリカチャ。

「団長も奥様に弁当作ってもらったらどうです?ほら、そこの広場でみんな食ってますし」
「オパールと…昼飯…」
「そうですよ。奥様も温かい昼飯とか団長に食べて欲しいんじゃないっすかね」

思わず想像をしてしまう絶対的経験値が少ない男、フェリックス。

♡~♡ぽわ~ん♡~♡

「フェル♡いけませんわ。お残しはだめでございましょう?」
「何を言ってるんだ。トマトも全部食べだろう?」
「残っておりますわ…ほら…わたくしがまだ♡」
「あぁっ!こんな所でっ!また俺を試しているのか!」
「試していませんわ。愛を確かめているのです」
「それは期待に応えるようにしないといけないな…」

♡~♡ぽわ~ん♡~♡

「団長!どうしたんです??団長!!」
「ハッ!(ブルル)いかん、オパールが不足している」
「え?奥様どうしたんです?部屋が別になったとか?」
「いや、毎晩俺の下に…いや昨夜は上だったな」
「なっ、何を言ってんですか!!」
「あぁ、だがオパールと昼飯は食えない」
「なんでですか?団長なら団長室で食う事もできますよ」
「だからだ。夜まで抑えが利かなくなる。半勃ちになったじゃないか」

そう言いながら何食わぬ顔で歩いて行く上司。広い背中が遠ざかります。
持っていたボードを落としてしまうリカチャ。
そして自分の下半身へ視線を落とします。

「半勃ちでアレって‥‥反則だろ」

リカチャの呟きは、向こうから聞こえる騎士たちの演習の声とともに風に流されていきました。
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