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VOL.03 豹変するオリビア
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「ペ、ペンを…」
俯き、肩を小さく揺らすオリビアの視界の中にはレスモンドの足が見える。
署名欄を指でなぞり、ペンを近づけるがペンを持つ手が震えていた。
その様子をレスモンドと2人の令嬢は更に顔を紅潮させてニヤ付きながら見ていた。
「サインをする前に言うことがあるんじゃないか?」
「わ、私が…(うぐっ)殿下に…で御座いましょうか」
緊張しているのか。
それとも、婚約を破棄されることで自身の身がこの先どうなるのだろうと恐怖に慄いているのか。震え、息を飲み、言葉を詰まらせるオリビアにレスモンドは得意げに言い放った。
「王妃になれるかもと夢を見たんだ。感謝の言葉くらい述べてもバチは当たらないと思うがな」
「は、はい…。何から何まで…本当にありがとうございます。殿下の御心遣いに…(うぐっ)…心からの感謝を」
「フハハ。良く出来ました。じゃ、サインしろ」
「・・・・」
言葉にならないのかオリビアは小さく震えながら署名欄にサインを済ませた。
「この書類は私から父上に渡し――」
オリビアのサインが終わった書類を取ろうと背もたれに預けた体をゆったり起こしたレスモンドだったが、終始俯いて体を震わせていたオリビアはバッと顔をあげ素早く書類を手に取った。
さっきまでの恐怖に体を震わせていたオリビアは何処に?!
レスモンドの目の前には満面の笑み、しかもうれし涙なのか?目に光るものがあるオリビアがいた。
「いいえ!そこまでの御手間を掛けさせるわけには参りません!今すぐ!陛下ではなく教皇様にお渡ししたいと思いますわ!」
「え?いや、ちょ、ちょっと待て。何も言いたいことはないのか?」
「えーっと。あります!ありがとうございます!もうこの瞬間を何度夢見た事か!諦めていたんです。でも殿下から言い出してくださってありがとうございます!本当に!本当に!この感謝を忘れる事は御座いませんわ!」
「ちょ、オリビア!なんでそんなに嬉しそうなんだ!」
「それはもう、今、この世の幸福を全てこの身に受けているからですわ」
「震えていたじゃないか!声も詰まらせて!反論があるんだろう?」
「反論?御座いませんわ。体が震え、声を詰まらせたのはこの大きな喜びをここで爆発させて良いものかと。あぁ、本当に今日は最良の日ですわ!」
レスモンドは焦った。
この婚約破棄は「お仕置き」だったのだ。
婚約を破棄どころか、解消するつもりなど全くない。
そんな事をしてしまったら自分で自分の首を絞めるだけ。
それが解っているだけに2人の署名、そしてレスモンドの印が押され保留される事なく受理される書面を奪い取ろうとしたのだが、タッチの差で書面はオリビアの手に渡ってしまった。
「ち、違うんだ。これは冗談で――」
「何を仰います。こんな重要な事をオフザケで行う者などいる筈が御座いませんわ。丁度30年に一度、教皇様が王宮に滞在されておられます。この後、茶の席にも呼ばれておりますのでお渡ししておきますわ」
「なんだと?!俺が呼ばれていないのになんでお前が…」
「さぁ?私は招かれた側なので理由は教皇様にお聞きくださいませ」
貴族は教会に届け出れば済むが、王族の婚約や婚姻はその教会の総本山と言える正教会が絡んでくる。全ての教会、そして正教会のトップに立つのが教皇。
どの国も正教会には一目置いており、歯向かうものなどいない。
かつての戦争を「いい加減にしろ」と終わらせ、終戦時に於いて獲得している領地はその国のもの!と発表したことで今の国土の形がある。
敵に回せばまず勝ち目がない。
その上、正教会は「認める」事しかしないので一旦受理したものを覆す事は至難の業。しかもレスモンド以外が手にする事の出来ない王子印が押されているので偽物と思われ保留される事は先ずない。
弁明しようと面会をしようにも約束がないと教皇とは会えるわけがない。
レスモンドの父である国王でさえ滞在中の教皇に会うのには伺いを立てねばならないし、数日かかる。
この後、オリビアは茶に招かれていると言う。
この時点でほぼ詰みだった。
これは不味いことになったとレスモンドは書類を取り返そうとしたが、長い脚は時として邪魔になるもの。
執務机の上に置いてあって、椅子を勢いよく引いたものだから思いっきり椅子から落ちて腰を強く打ち付けてしまった。
俯き、肩を小さく揺らすオリビアの視界の中にはレスモンドの足が見える。
署名欄を指でなぞり、ペンを近づけるがペンを持つ手が震えていた。
その様子をレスモンドと2人の令嬢は更に顔を紅潮させてニヤ付きながら見ていた。
「サインをする前に言うことがあるんじゃないか?」
「わ、私が…(うぐっ)殿下に…で御座いましょうか」
緊張しているのか。
それとも、婚約を破棄されることで自身の身がこの先どうなるのだろうと恐怖に慄いているのか。震え、息を飲み、言葉を詰まらせるオリビアにレスモンドは得意げに言い放った。
「王妃になれるかもと夢を見たんだ。感謝の言葉くらい述べてもバチは当たらないと思うがな」
「は、はい…。何から何まで…本当にありがとうございます。殿下の御心遣いに…(うぐっ)…心からの感謝を」
「フハハ。良く出来ました。じゃ、サインしろ」
「・・・・」
言葉にならないのかオリビアは小さく震えながら署名欄にサインを済ませた。
「この書類は私から父上に渡し――」
オリビアのサインが終わった書類を取ろうと背もたれに預けた体をゆったり起こしたレスモンドだったが、終始俯いて体を震わせていたオリビアはバッと顔をあげ素早く書類を手に取った。
さっきまでの恐怖に体を震わせていたオリビアは何処に?!
レスモンドの目の前には満面の笑み、しかもうれし涙なのか?目に光るものがあるオリビアがいた。
「いいえ!そこまでの御手間を掛けさせるわけには参りません!今すぐ!陛下ではなく教皇様にお渡ししたいと思いますわ!」
「え?いや、ちょ、ちょっと待て。何も言いたいことはないのか?」
「えーっと。あります!ありがとうございます!もうこの瞬間を何度夢見た事か!諦めていたんです。でも殿下から言い出してくださってありがとうございます!本当に!本当に!この感謝を忘れる事は御座いませんわ!」
「ちょ、オリビア!なんでそんなに嬉しそうなんだ!」
「それはもう、今、この世の幸福を全てこの身に受けているからですわ」
「震えていたじゃないか!声も詰まらせて!反論があるんだろう?」
「反論?御座いませんわ。体が震え、声を詰まらせたのはこの大きな喜びをここで爆発させて良いものかと。あぁ、本当に今日は最良の日ですわ!」
レスモンドは焦った。
この婚約破棄は「お仕置き」だったのだ。
婚約を破棄どころか、解消するつもりなど全くない。
そんな事をしてしまったら自分で自分の首を絞めるだけ。
それが解っているだけに2人の署名、そしてレスモンドの印が押され保留される事なく受理される書面を奪い取ろうとしたのだが、タッチの差で書面はオリビアの手に渡ってしまった。
「ち、違うんだ。これは冗談で――」
「何を仰います。こんな重要な事をオフザケで行う者などいる筈が御座いませんわ。丁度30年に一度、教皇様が王宮に滞在されておられます。この後、茶の席にも呼ばれておりますのでお渡ししておきますわ」
「なんだと?!俺が呼ばれていないのになんでお前が…」
「さぁ?私は招かれた側なので理由は教皇様にお聞きくださいませ」
貴族は教会に届け出れば済むが、王族の婚約や婚姻はその教会の総本山と言える正教会が絡んでくる。全ての教会、そして正教会のトップに立つのが教皇。
どの国も正教会には一目置いており、歯向かうものなどいない。
かつての戦争を「いい加減にしろ」と終わらせ、終戦時に於いて獲得している領地はその国のもの!と発表したことで今の国土の形がある。
敵に回せばまず勝ち目がない。
その上、正教会は「認める」事しかしないので一旦受理したものを覆す事は至難の業。しかもレスモンド以外が手にする事の出来ない王子印が押されているので偽物と思われ保留される事は先ずない。
弁明しようと面会をしようにも約束がないと教皇とは会えるわけがない。
レスモンドの父である国王でさえ滞在中の教皇に会うのには伺いを立てねばならないし、数日かかる。
この後、オリビアは茶に招かれていると言う。
この時点でほぼ詰みだった。
これは不味いことになったとレスモンドは書類を取り返そうとしたが、長い脚は時として邪魔になるもの。
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