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VOL.05 脱兎のごとく駆けていく
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「では、教皇様とのお約束に遅れては大変です。失礼いたしますわ!」
椅子から落ちて悶絶するレスモンドをよそに言い終わるや否や、オリビアはドレスを少したくし上げた。
「てぇい!!」
隙間の出来たドレス。そこからポーン!ポーン!扉に向かって飛び出してきたのはオリビアのヒール。
弾んだ声を出したオリビアはくるりと入り口を向いた。
「善は急げで御座いますわ。殿下!心からの感謝を!二度と会う事は御座いませんでしょうが末永くおッ元気でぇ!!」
聞こえる声はとても淑女の言葉選びとは思えない。
従者の足元に落ちて転がるヒール。
「あ、あのオリビア様!!ヒールが!」
「あげるわ!換金したらそれなりのお金になるわよぅ~」
「ありがとうございます」
「どぉぉ致しましてぇ!」
従者に声を掛けるとオリビアは脱兎の如く出入り口扉に向かって突進し、バーン!と勢いよく開かれた扉から飛び出した。
弾むスキップとはこの事か。
足の裏にバネでも装着しているかのように本当に飛び跳ねて廊下を走って行く。
「やったぁ!!これで自由よ!フリーダムッ!!キャッハー!」
オリビアの飛び跳ねる後ろ姿を見て衛兵は思った。
――良かったですね。お幸せに――
廊下を走りながらオリビアは心から喜んだ。
7歳でレスモンドとは婚約が結ばれて以来、辛い事と辛い事と辛い事の連続。
「国王に足らない所を王妃が補えばいいのです」
と王妃殿下(レスモンドの母)には事あるごとに言われたけれどその度に思った。
――足らない所しかないし、それが多すぎるのよ!――
他国の言語は「郷に入っては郷に従え」と言って覚えようともしない。隣国に表敬訪問した時は「通訳を用意しろ」とダブルスタンダード。
「結局、通訳がいても笑い者になるだけのくせに」
食べ物の好き嫌いも多く、国内で収穫した野菜の品評会では小さな一口だけでいいからパフォーマンスを見せねばならない所でも「こんなもの食えるか」と断固拒否。
学園の文学祭への表敬訪問でも学園生の発表中に「つまらん」と言って席を立ち、学園生の発表は中断。自分の発表が悪かったのか責任を感じる学園生のフォローは大変だった。
せねばならない事はしないのに、しなくていい事には尽力を注ぐ。
よく「酒、博打、女」は治らない病気だと言われる。
レスモンドはその3つ。合わせ技で持つ男だった。
「こんなのいくらお金があっても足りる訳がないわ」
何度レスモンドが賭け事でスってしまった国費の補填をしただろう。
勝ったときは自分の懐にいれるが、負けていると負け続ける分だけ国費に手を出す。手癖が悪いだけでは説明が追い付かない王子様だ。
ポルトー侯爵は実に賭け事の補填で領地を1つ失っている。
それでも侯爵が平気な顔をしているのは、財産分与でオリビアに与えるはずの領地だったのでいずれは手元から離れる領地だし、他の家族の財産ではないから。
それを聞かされた時オリビアは思った。
――マジか。私、丸っきりの文無しになっちゃうんだわ――
嫁ぐ際の持参金はその領地でもあったため、オリビアには財産らしい財産は無くなった。王家に嫁ぐのに死刑宣告に等しい父の言葉。
そんな事を思い出しながらもオリビアは軽い足取りで廊下を駆けていく。
「でもいいわ!これで私は晴れて自由の身だわ!」
今は急いで教皇の元に行かねばならない。淑女らしさなんてあと少しで夏裘冬扇、豚に真珠。
「万が一に備えるのは当たり前のこと。やってて良かった~」
オリビアは本当に背中に羽が生えたかのように軽やかに素足で廊下を走り抜けた。
椅子から落ちて悶絶するレスモンドをよそに言い終わるや否や、オリビアはドレスを少したくし上げた。
「てぇい!!」
隙間の出来たドレス。そこからポーン!ポーン!扉に向かって飛び出してきたのはオリビアのヒール。
弾んだ声を出したオリビアはくるりと入り口を向いた。
「善は急げで御座いますわ。殿下!心からの感謝を!二度と会う事は御座いませんでしょうが末永くおッ元気でぇ!!」
聞こえる声はとても淑女の言葉選びとは思えない。
従者の足元に落ちて転がるヒール。
「あ、あのオリビア様!!ヒールが!」
「あげるわ!換金したらそれなりのお金になるわよぅ~」
「ありがとうございます」
「どぉぉ致しましてぇ!」
従者に声を掛けるとオリビアは脱兎の如く出入り口扉に向かって突進し、バーン!と勢いよく開かれた扉から飛び出した。
弾むスキップとはこの事か。
足の裏にバネでも装着しているかのように本当に飛び跳ねて廊下を走って行く。
「やったぁ!!これで自由よ!フリーダムッ!!キャッハー!」
オリビアの飛び跳ねる後ろ姿を見て衛兵は思った。
――良かったですね。お幸せに――
廊下を走りながらオリビアは心から喜んだ。
7歳でレスモンドとは婚約が結ばれて以来、辛い事と辛い事と辛い事の連続。
「国王に足らない所を王妃が補えばいいのです」
と王妃殿下(レスモンドの母)には事あるごとに言われたけれどその度に思った。
――足らない所しかないし、それが多すぎるのよ!――
他国の言語は「郷に入っては郷に従え」と言って覚えようともしない。隣国に表敬訪問した時は「通訳を用意しろ」とダブルスタンダード。
「結局、通訳がいても笑い者になるだけのくせに」
食べ物の好き嫌いも多く、国内で収穫した野菜の品評会では小さな一口だけでいいからパフォーマンスを見せねばならない所でも「こんなもの食えるか」と断固拒否。
学園の文学祭への表敬訪問でも学園生の発表中に「つまらん」と言って席を立ち、学園生の発表は中断。自分の発表が悪かったのか責任を感じる学園生のフォローは大変だった。
せねばならない事はしないのに、しなくていい事には尽力を注ぐ。
よく「酒、博打、女」は治らない病気だと言われる。
レスモンドはその3つ。合わせ技で持つ男だった。
「こんなのいくらお金があっても足りる訳がないわ」
何度レスモンドが賭け事でスってしまった国費の補填をしただろう。
勝ったときは自分の懐にいれるが、負けていると負け続ける分だけ国費に手を出す。手癖が悪いだけでは説明が追い付かない王子様だ。
ポルトー侯爵は実に賭け事の補填で領地を1つ失っている。
それでも侯爵が平気な顔をしているのは、財産分与でオリビアに与えるはずの領地だったのでいずれは手元から離れる領地だし、他の家族の財産ではないから。
それを聞かされた時オリビアは思った。
――マジか。私、丸っきりの文無しになっちゃうんだわ――
嫁ぐ際の持参金はその領地でもあったため、オリビアには財産らしい財産は無くなった。王家に嫁ぐのに死刑宣告に等しい父の言葉。
そんな事を思い出しながらもオリビアは軽い足取りで廊下を駆けていく。
「でもいいわ!これで私は晴れて自由の身だわ!」
今は急いで教皇の元に行かねばならない。淑女らしさなんてあと少しで夏裘冬扇、豚に真珠。
「万が一に備えるのは当たり前のこと。やってて良かった~」
オリビアは本当に背中に羽が生えたかのように軽やかに素足で廊下を走り抜けた。
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