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VOL.06 スタートは0か1か
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万が一は起こらない。
そう考えた時もあったが護衛をしてくれていた兵士の言葉に気付かされた。
その兵士は恋人でも気を許した男性でもなく単なる護衛兵士だったが「もしもに備えてあらゆる武器を使いこなせるように訓練をしている」とオリビアに言った。
剣の腕は騎士の中でも5本の指に入ると言われているのに、鍛錬も全く違う武器も使えるようにと訓練を受けていた兵士。
「剣は刃こぼれをしますし、折れる事だってあります。その場に剣の代わりになるものがない場所だってあります。例えば森を抜ける時に襲撃にあった場合、格闘中に池や湖に落ちた時なんかでしょうか。護衛対象が取り返しがつかない状態となった時、責任を問われます。その時に剣が折れたので守れませんでしたなんて言い訳は聞いてもらえませんから」
そう言って木の枝、石、池に泳ぐ魚やメイドの持っているトレイなど色んなものを武器として使うには?と考えて兵士は訓練をしていた。
「やったことは無駄になりません。無駄になるのは身に付く前にやめた時です。無駄以前の問題はやってみようともしなかった時です」
オリビアはハッとしたのだ。
――そうね。武器と思えないものを武器とするのよ――
その日からオリビアは王宮や屋敷で働く使用人たちの行動を観察するようになった。
恥ずかしい事にオリビアは何も知らなかった。
腰の高さほどある石を積み上げた丸い穴に紐のついた桶を落とし手繰り寄せる。
最初に見た時は「どうせ手繰り寄せるなら落とさなければいいのに」と思ったが、その行為が水を汲み上げる物だと知った時は目から鱗だった。
それまで水は使用人が桶に入れて持ってくるもの。それがオリビアの概念だった。
夜中に厨房に行き、箱の蓋を開けると葉のついた長い塊や、ごつごつとした石礫より大きな物体。それが人参であり大根であり、ジャガイモだと知ったのは教会預かりとなった孤児の視察でいつもなら組み込まれない畑作業を無理を言って加えて貰った時だった。
厨房で見た物体が実は食品で、しかも土の中から出て来た時は度肝を抜かれた。
貴族令嬢として生まれ、どこかの当主夫人、オリビアの場合は王妃。その位置に就く者は知らなくても何の問題もない事だが、オリビアは庭師に話しかけて野菜を育てる事を教えてもらった。
そこも恥ずかしい事に草木が生えて来るのはそこに枝なり花なりを置いておけば良いと思っていた。
花が実をつけ種になり、土に植えれば芽が出て茎が伸び、蕾となって花が咲く。そんな自然界の当たり前なサイクルですら「蕾と花」だけ切り取った世界に生きていた事が恥ずかしくなった。
レスモンドが遊び惚けている間、オリビアは空き時間を見つけては「万が一」に備えて自分一人でも生きていけるよう、知恵と経験を積んだ。
ただ、それだけではぬくぬくと育てられた令嬢の浅はかな思いでしかないが、やらずに言い訳をする事はしたくなかった。
今では誰も知らないが、竈に火を入れる事も出来るし井戸から水を汲み上げることも出来る。出来ないふりをしているが1人で着替えも出来るし湯あみも出来る。
ナイフで芋の皮を剥くことも、なんなら薪割りをするために樹皮を剥ぐ事も出来る。
レスモンドに婚約を解消されれば父の怒りを買い、家からも追い出されるのは火を見るよりも明らか。ならその日に備え、草の露を啜りながらでも生きて行ける折れない心を作ろうと勤しんできた。
最低限にも足らなくても、ゼロではない。
ゼロからのスタートと1からのスタートは同じようで大きく違う。
「やってて良かった!」
オリビアは心からそう思った。
そう考えた時もあったが護衛をしてくれていた兵士の言葉に気付かされた。
その兵士は恋人でも気を許した男性でもなく単なる護衛兵士だったが「もしもに備えてあらゆる武器を使いこなせるように訓練をしている」とオリビアに言った。
剣の腕は騎士の中でも5本の指に入ると言われているのに、鍛錬も全く違う武器も使えるようにと訓練を受けていた兵士。
「剣は刃こぼれをしますし、折れる事だってあります。その場に剣の代わりになるものがない場所だってあります。例えば森を抜ける時に襲撃にあった場合、格闘中に池や湖に落ちた時なんかでしょうか。護衛対象が取り返しがつかない状態となった時、責任を問われます。その時に剣が折れたので守れませんでしたなんて言い訳は聞いてもらえませんから」
そう言って木の枝、石、池に泳ぐ魚やメイドの持っているトレイなど色んなものを武器として使うには?と考えて兵士は訓練をしていた。
「やったことは無駄になりません。無駄になるのは身に付く前にやめた時です。無駄以前の問題はやってみようともしなかった時です」
オリビアはハッとしたのだ。
――そうね。武器と思えないものを武器とするのよ――
その日からオリビアは王宮や屋敷で働く使用人たちの行動を観察するようになった。
恥ずかしい事にオリビアは何も知らなかった。
腰の高さほどある石を積み上げた丸い穴に紐のついた桶を落とし手繰り寄せる。
最初に見た時は「どうせ手繰り寄せるなら落とさなければいいのに」と思ったが、その行為が水を汲み上げる物だと知った時は目から鱗だった。
それまで水は使用人が桶に入れて持ってくるもの。それがオリビアの概念だった。
夜中に厨房に行き、箱の蓋を開けると葉のついた長い塊や、ごつごつとした石礫より大きな物体。それが人参であり大根であり、ジャガイモだと知ったのは教会預かりとなった孤児の視察でいつもなら組み込まれない畑作業を無理を言って加えて貰った時だった。
厨房で見た物体が実は食品で、しかも土の中から出て来た時は度肝を抜かれた。
貴族令嬢として生まれ、どこかの当主夫人、オリビアの場合は王妃。その位置に就く者は知らなくても何の問題もない事だが、オリビアは庭師に話しかけて野菜を育てる事を教えてもらった。
そこも恥ずかしい事に草木が生えて来るのはそこに枝なり花なりを置いておけば良いと思っていた。
花が実をつけ種になり、土に植えれば芽が出て茎が伸び、蕾となって花が咲く。そんな自然界の当たり前なサイクルですら「蕾と花」だけ切り取った世界に生きていた事が恥ずかしくなった。
レスモンドが遊び惚けている間、オリビアは空き時間を見つけては「万が一」に備えて自分一人でも生きていけるよう、知恵と経験を積んだ。
ただ、それだけではぬくぬくと育てられた令嬢の浅はかな思いでしかないが、やらずに言い訳をする事はしたくなかった。
今では誰も知らないが、竈に火を入れる事も出来るし井戸から水を汲み上げることも出来る。出来ないふりをしているが1人で着替えも出来るし湯あみも出来る。
ナイフで芋の皮を剥くことも、なんなら薪割りをするために樹皮を剥ぐ事も出来る。
レスモンドに婚約を解消されれば父の怒りを買い、家からも追い出されるのは火を見るよりも明らか。ならその日に備え、草の露を啜りながらでも生きて行ける折れない心を作ろうと勤しんできた。
最低限にも足らなくても、ゼロではない。
ゼロからのスタートと1からのスタートは同じようで大きく違う。
「やってて良かった!」
オリビアは心からそう思った。
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