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VOL.08 実はオカルト?
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席に案内をされて待っていると約束の時間丁度に教皇がやって来た。
「突然お呼び立てして申し訳ありません。一度、貴女に会って話をしてみたかったのです」
「私とですか?」
「えぇ。聖マリア教会の神父から貴女の事はよく話に聞くのですよ。孤児たちに当たり障りのない声を掛けていくかと思いきや膝をついて子供と目線を合わせ話をするだけでなく、抱きしめたり。なんなら土いじりの話も伺っておりますよ」
「(うわぁ‥神父様、何で言っちゃうかなぁ)そうでございましたか。ホホホ」
オリビアは顔が引き攣ってしまった。
神父がどこまで教皇に話をしてしまっているのか。
それを問えるような相手ではない。
神父には問われたことがある。視察に来て実際に孤児に触れる王族やその婚約者など今まで1人もいなかった。レスモンドの婚約者であり、近い将来の王太子妃、そして王妃としてオリビアは視察や慰問もこなしていた。
その立場を抜きにしてもオリビアはポルトー侯爵家の令嬢で、高位貴族の令嬢が親がどんな素性の人間かも判らない子供たちの前で膝をつくなどあり得ない行為に見えたのだろう。
――仕方ないわよね。貴族ってそういう生き物だもの――
万が一の生き方をする日に備えてオリビアは全てのモノの見方を変えた。
すると不思議だった。
目に見えないものに誰もが雁字搦めに絡み取られているように見えたのである。
それがどれほど詰まらないもので、掃いて捨てても構わないものなのか。
国境沿いで未だに過去の戦争の後始末をしている兵士が帰還した慰問会で嫌というほど思い知らされた。
戦争は既に終結しているけれど、塹壕などはそのまま放置されている事で命を落とす領民がいる。誰も補償などしてくれず不自由な生活を強いられていた。
そんな彼らは未だに続く戦後処理に訪れる兵士に怒りをぶつける。
言葉なら聞き流せばよいが、時に武器を持って関係ないと解っていながらも「国から派遣されてきた」それだけを理由にして襲い掛かる。
その地に赴いた者は自国の国民に敵視され刃を向けられる。思いと形を変えてまだ戦争は続いていて兵士たちは死ぬか生きるかの瀬戸際を経験する。
すると不思議な事に、身分を超えての絆が生まれる。
任務を終えた後、疎遠になりまた貴族だ、平民だと今までの生き方をする者もいればそれまで会話を交わすことも憚られた2人が肩を組んで1つのカップにある食べ物や酒を交互に飲み食いする仲になることもある。
「俺は、こいつがいなかったら死んでたんだ」
「そう、こいつは俺が居なきゃ今頃神様の靴磨きをしていたんだ」
大きな口を開けて笑い、酒を酌み交わす2人は片方は片親が罪人の貧民窟出身、片方は裕福な伯爵家の次期当主。
今、その伯爵家は貧しさ故に犯罪に手を染めそうな者に仕事を与え、得た利益のほとんどを貧民窟の生活改善のために事業を興している。
王都で生活をずっとしていれば、知っていてもそちらを見ず、手を取り合う事もなかっただろう。
――人は人、なんだわ――
極限に至らなくてもたったそれだけ自分の心の中にストンと落ちれば手を握ったり、抱きしめたりすることに抵抗は感じない。感じるのは相手も生きている人間なのだという体温だけ。
オリビアはその事を教皇に話すと、教皇は嬉しそうな顔をした。
教皇だって身分制度があるのは解っていて「神の元ではみな平等」とダブルスタンダード。
大人になれば本音と建て前を使い分ける事も必要だし、その国によって問題はあるので余程でない限り口出しも出来ない。
性善説に基づいた聞こえの良い話を民衆に説くだけだ。
ただ、教皇も1人の人間。
慈善活動に勤しむ伯爵のようにジレンマを抱えて生きる人間だった。
穏やかな話が続く中、オリビアはいつ切り出そうかとドレスの隠しポケットに捻じ込んだ【婚約解消届】にそっと手を置いた。
「何かあるのですか?」
教皇は穏やかに問う。
オリビアは迷うことなく、隠しポケットから【婚約解消届】を引き抜き、教皇に差し出した。
「殿下から預かって参りました。認可して頂きたく存じます」
「レスモンド殿から?拝見しても?」
「はい」
折りたたまれた【婚約解消届】を手にし、広げて教皇は内容に目を走らせた。
オリビアの心臓はどくどくと激しく拍動を打った。
「認めましょう。署名も本人のモノですし問題はありません」
「わ、判るのですか?本人のものだと」
「神が教えてくれますから」
――そ、そうなんだ?意外にオカルト?――
教皇はにっこりと笑って従者に紙とペンを頼むと書面を作成してくれた。それはレスモンドとの婚約解消を正教会が教皇の名のもとに認めた書面だった。
「突然お呼び立てして申し訳ありません。一度、貴女に会って話をしてみたかったのです」
「私とですか?」
「えぇ。聖マリア教会の神父から貴女の事はよく話に聞くのですよ。孤児たちに当たり障りのない声を掛けていくかと思いきや膝をついて子供と目線を合わせ話をするだけでなく、抱きしめたり。なんなら土いじりの話も伺っておりますよ」
「(うわぁ‥神父様、何で言っちゃうかなぁ)そうでございましたか。ホホホ」
オリビアは顔が引き攣ってしまった。
神父がどこまで教皇に話をしてしまっているのか。
それを問えるような相手ではない。
神父には問われたことがある。視察に来て実際に孤児に触れる王族やその婚約者など今まで1人もいなかった。レスモンドの婚約者であり、近い将来の王太子妃、そして王妃としてオリビアは視察や慰問もこなしていた。
その立場を抜きにしてもオリビアはポルトー侯爵家の令嬢で、高位貴族の令嬢が親がどんな素性の人間かも判らない子供たちの前で膝をつくなどあり得ない行為に見えたのだろう。
――仕方ないわよね。貴族ってそういう生き物だもの――
万が一の生き方をする日に備えてオリビアは全てのモノの見方を変えた。
すると不思議だった。
目に見えないものに誰もが雁字搦めに絡み取られているように見えたのである。
それがどれほど詰まらないもので、掃いて捨てても構わないものなのか。
国境沿いで未だに過去の戦争の後始末をしている兵士が帰還した慰問会で嫌というほど思い知らされた。
戦争は既に終結しているけれど、塹壕などはそのまま放置されている事で命を落とす領民がいる。誰も補償などしてくれず不自由な生活を強いられていた。
そんな彼らは未だに続く戦後処理に訪れる兵士に怒りをぶつける。
言葉なら聞き流せばよいが、時に武器を持って関係ないと解っていながらも「国から派遣されてきた」それだけを理由にして襲い掛かる。
その地に赴いた者は自国の国民に敵視され刃を向けられる。思いと形を変えてまだ戦争は続いていて兵士たちは死ぬか生きるかの瀬戸際を経験する。
すると不思議な事に、身分を超えての絆が生まれる。
任務を終えた後、疎遠になりまた貴族だ、平民だと今までの生き方をする者もいればそれまで会話を交わすことも憚られた2人が肩を組んで1つのカップにある食べ物や酒を交互に飲み食いする仲になることもある。
「俺は、こいつがいなかったら死んでたんだ」
「そう、こいつは俺が居なきゃ今頃神様の靴磨きをしていたんだ」
大きな口を開けて笑い、酒を酌み交わす2人は片方は片親が罪人の貧民窟出身、片方は裕福な伯爵家の次期当主。
今、その伯爵家は貧しさ故に犯罪に手を染めそうな者に仕事を与え、得た利益のほとんどを貧民窟の生活改善のために事業を興している。
王都で生活をずっとしていれば、知っていてもそちらを見ず、手を取り合う事もなかっただろう。
――人は人、なんだわ――
極限に至らなくてもたったそれだけ自分の心の中にストンと落ちれば手を握ったり、抱きしめたりすることに抵抗は感じない。感じるのは相手も生きている人間なのだという体温だけ。
オリビアはその事を教皇に話すと、教皇は嬉しそうな顔をした。
教皇だって身分制度があるのは解っていて「神の元ではみな平等」とダブルスタンダード。
大人になれば本音と建て前を使い分ける事も必要だし、その国によって問題はあるので余程でない限り口出しも出来ない。
性善説に基づいた聞こえの良い話を民衆に説くだけだ。
ただ、教皇も1人の人間。
慈善活動に勤しむ伯爵のようにジレンマを抱えて生きる人間だった。
穏やかな話が続く中、オリビアはいつ切り出そうかとドレスの隠しポケットに捻じ込んだ【婚約解消届】にそっと手を置いた。
「何かあるのですか?」
教皇は穏やかに問う。
オリビアは迷うことなく、隠しポケットから【婚約解消届】を引き抜き、教皇に差し出した。
「殿下から預かって参りました。認可して頂きたく存じます」
「レスモンド殿から?拝見しても?」
「はい」
折りたたまれた【婚約解消届】を手にし、広げて教皇は内容に目を走らせた。
オリビアの心臓はどくどくと激しく拍動を打った。
「認めましょう。署名も本人のモノですし問題はありません」
「わ、判るのですか?本人のものだと」
「神が教えてくれますから」
――そ、そうなんだ?意外にオカルト?――
教皇はにっこりと笑って従者に紙とペンを頼むと書面を作成してくれた。それはレスモンドとの婚約解消を正教会が教皇の名のもとに認めた書面だった。
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