婚約破棄を強要されたら甘い日々が始まりました

cyaru

文字の大きさ
9 / 45

VOL.09  追い出されるのも予定通り

しおりを挟む
教皇との茶の席を立ったオリビアは「ふん!!」気合を入れ侯爵家の馬車に乗り込んだ。

オリビアにとって王家は問題ではない。
レスモンドが先に用意をした婚約解消届。オリビアが強制をしたわけでもないし、力関係は誰も目から見ても明らかで強制したところでレスモンドが頷くはずもないと誰もが思うだろう。

何より世に1つしかない上に、レスモンド以外が触れる事も許されない王子印が押されている。

「案外教皇様も神様が教えてくれたんじゃなくて王子印を見たからかもね」

気合を入れたのはオリビアにとっての本丸は父親でありポルトー侯爵家だからである。

父親が激昂するのは当然として、どれだけ荷物を持ち出せるか。
盗むわけではない。

父親から最低限持っておけと揃えられたドレスなどは持ち出す必要がない。
ドレスは売れそうで余り売れない事は小耳に挟んでいた。

新しいドレスを仕立てる時の下取りに出すなら仕立て屋がそれなりの値で買い取ってくれるが、汗は吸わないし宝飾品や、宝飾品に見立てたガラス玉を縫い付けるので意外と穴だらけ。

ドレスを欲しがるのは貴族くらいでこれから平民の生活をするのに必要な品ではない。平民が必要としないのだからウェスとしてもドレスはあまり買い取っては貰えないのである。

「お婆様から貰ったイヤリングと…本は暇つぶしになるから2、3冊かな。バザーで服を買っておいて良かったわ」

視察に行く教会などには刺繍したものを寄付したりするが、次期王太子妃が来る!となれば集客にもなる。所謂客寄せだ。

オリビアは寄付すると同時に個人的にも子供たちに頼んで販売をしてもらい、その売り上げでバザーで売られていた服を買った。金銭としては結局教会の収益となったがオリビアには平民服が2着残った。

侯爵家の使用人に見つかれば「こんな襤褸」と捨てられてしまうので「祖父母からの形見分け」を貰った箱の中に押し込んである。

祖母には申し訳ないが、良い思い出もない。
厳しいというよりも祖母も父ににて強欲で癖が強かった。

父ではなく母親に似たオリビアの事は「どこの種が芽吹いたんだろうね」と散々に嫌味を言われたし、髪色だけは父と同じだったが「泥棒」と言われたことがある。

取り敢えず持ち出すものは最小限。それもトランクではなく背中に背負えるリュックに入る分だけ。

オリビアが持ち出す品を決めた時、馬車は侯爵家の正門をくぐった。


ポルトー侯爵家では王宮で起こった出来事をまだ誰も知らない。

「お帰りなさいませ」

家令がオリビアを出迎えてくれた。いつもならここで家令に王宮でのことを報告する。その報告をもとに家令が父親に報告をして問題があればオリビアが呼び出される。

だが今日は違う。

「お父様は御在宅?」

「はい。お嬢様?王宮での報告は?」

「直接お父様に伝えるわ。執務室?サロン?」

「旦那様は執務室で御座います」

「ならお客様もいないわね」

「で、ですが、旦那様は執務の最中ですので私がお伝えします」

「気にしないで。自分で言えるから」

父親の子飼いでもある家令はオリビアの報告をそのままに父に伝えない。いつもどこか着色して伝えるのでオリビアとしては信用できない人間の1人である。

オリビアの歩みを止めようと必死な家令を振り切り、オリビアは父親の執務室の扉をノックと同時に開けた。


「なんだ。いきなり」

「お父様に大事な話がありましたので」

「そんな事はジェイムズに言えばいい。お前が直接来ることでもないだろう」

「直接お伝えした方が良いと判断したから来たのです」


オリビアはツカツカと執務机で作業をする父親の元に行き、書面を差し出した。
文字を全部読まずともポルトー侯爵の表情は険しくなり顔色は一気に赤くなった。

「どういう事だ!」

「どうも何も。本日王宮に上がったのは来訪中の教皇様よりお茶の誘いを頂いていたからですが、レスモンド第1王子殿下より火急と呼び出され、出向きましたら婚約解消を言い渡され、拒否する事も出来ませんでしたので同意した次第です」

「そ、それを教皇に?」

「はい。レスモンド第1王子殿下は大変急がれていたようなので、丁度教皇様ともお約束が御座いましたし手間を取らせるよりはと」

「ばっ!馬鹿者!なんてことを!お前はっ!お前は!!」

「お怒りのようですけども、婚約解消を強く望まれたのはレスモンド第1王子殿下です。私に拒否権があったとでもお父様はお考えですか?」

「だとしてもだ!何故そのままっ!!えぇい!!お前など娘でも何でもない!侯爵家の面汚しだ!出て行け!さっさと出て行け!二度と顔を見せる事は許さん!」

「そうですか。承知いたしました。早速仰せの通――」

予想通りに激昂したポルトー侯爵はさっきまで執務をしていた書類の束をオリビアに向かって投げつけた。

父に向かって発する言葉は何もない。
冷たい娘と言われようが、自分の事を道具としか思っていない父に情はない。

オリビアは我を忘れ、怒りに任せて手当たり次第手に触れる物を投げつけるポルトー侯爵に一礼すると執務室を出て、馬車の中で持って行くと決めた荷物をリュックに詰め込むと正門ではなく裏口から侯爵家を後にした。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています

鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」 そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。 お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。 「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」 あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。 「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。   戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」 ――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。 彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。 「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」 「……本当に、離婚したいのか?」 最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。 やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

魔法が使えなかった令嬢は、婚約破棄によって魔法が使えるようになりました

天宮有
恋愛
 魔力のある人は15歳になって魔法学園に入学し、16歳までに魔法が使えるようになるらしい。  伯爵令嬢の私ルーナは魔力を期待されて、侯爵令息ラドンは私を婚約者にする。  私は16歳になっても魔法が使えず、ラドンに婚約破棄言い渡されてしまう。  その後――ラドンの婚約破棄した後の行動による怒りによって、私は魔法が使えるようになっていた。

呪いを受けたせいで婚約破棄された令息が好きな私は、呪いを解いて告白します

天宮有
恋愛
 伯爵令嬢の私キャシーは、夜会で友人の侯爵令息サダムが婚約破棄された場面を目撃する。  サダムの元婚約者クノレラは、サダムが何者かの呪いを受けたと説明をしていた。  顔に模様が浮き出たことを醜いと言い、呪いを受けた人とは婚約者でいたくないようだ。  サダムは魔法に秀でていて、同じ実力を持つ私と意気投合していた。  呪いを解けば何も問題はないのに、それだけで婚約破棄したクノレラが理解できない。  私はサダムの呪いを必ず解き、告白しようと決意していた。

処理中です...