婚約破棄を強要されたら甘い日々が始まりました

cyaru

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VOL.23  罪深さを知ったが遅かった

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宮に幽閉をされたレスモンドは国王も王妃もなんだかんだ言って自分を可愛がってくれていたし、臣下の手前暫く大人しくしていろパフォーマンスだろうと楽観していたのも最初の頃だけだった。


オリビアとの婚約が教皇によって婚約解消となってしまったのは想定外だが、もう一度婚約をすれば問題がないだろうし、再婚約をする頃にはポルトー侯爵も「若気の至りだ」とまた金を支援してくれると考えた。

それまでは2人の令嬢の家から金を回してもらえばいいだけ。

「娘がとんだ粗相を!!申し訳ございません」

謝罪に来た2家の伯爵家当主は娘のしでかしたことは宮への支給金で相殺、それでお咎めなしと説明をされたが顔色が悪かった。

――それが一番面倒じゃないか――

世の中、金で事が済むなら安いものと言うが相手次第。
レスモンドに一生寄生されるのだから、干乾びて骨と皮だけになってもまだ寄生は続く。

言い渡された「それだけで済む」通達は地獄に落とされるよりも辛い生活の幕開けだった。

開口一番に先に気を飛ばしていた令嬢の父親は減額を申し出て来たのでレスモンドは一蹴した。

元々経営状況もあまりよくなかった伯爵家は「これでご勘弁を」とかき集めた金を提示したのだが、その金をレスモンドは1週間で使い切った。

むしゃくしゃするし、することもない宮の幽閉生活。
憂さ晴らしになんと宮の中に賭博場を開き、全てスってしまったのだ。

1週間後にまた呼びつけられた当主は「お待ちください」と言って宮を出て行ったあと行方知れず。
一家で逃げてしまった。夜逃げならぬ日のあるうちに逃げたのだ。

馬車ではなく荷馬車で逃げたと思われ、捜索をしようにも丁度時期は生誕祭前で王都に人が一番集まる時期。地方からくる者、地方に行く者もいつもの数倍。

「捜索をするなら好きにしろ、ただし自腹」と国王に言われたレスモンドは捜索をしなかった。捜索費用を出すくらいなら遊んだほうがいいし、金は出せる所に出してもらえばいいと判断したためだ。

家族が逃げた事を伝えると令嬢は立っているのもようようだった。


「お父様が?!お母様も…お姉様も弟もいないのですか?!」

「もぬけの殻だそうだ、で?お前はどう落とし前を付けてくれるんだ?」

「そんな…私は何も…」

「母親の実家、それから両親の兄弟姉妹に出してもらうしかないな。お前のいとこも含めれば問題ない」

「それだけは!関係ない家を巻き込むのはお願いですからおやめください!」

「関係ない?どの口が言っているんだ?お前の不始末を親族も償うのが当たり前だろう」


もう1人の令嬢はその様子を見て心から悔いた。
次は自分。それは考えなくても解る事。

ほんの少しの間、いい気になっていた代償はあまりにも大きかった。
自分の家だけではなく、親族にまで迷惑をかけてしまう。

父親が詫びに来た、当面の金を工面したという事は国王からも手を離されて、見捨てられたということ。
命を絶ったところで親族が迷惑を被るのを止めることも出来ない。

「どうしよう…オリビア様にあんなことしなきゃよかった…」


幽閉されてから逃げようと何度も考えたが、その後が恐ろしくて実行できない。
宮を抜け出し、実家に戻れば両親に折檻される。いや、実家に戻るのにどうやって戻ればいいのか。

馬車を使えばすぐにバレるだろうし、実家に戻っても宮に連れ戻されるか、放逐されるか。

浴びせられる暴力は親かレスモンドかの違いだけ。
暴力をする側に何度もなったが、される側になるとその恐怖は言葉で言い表せない。

どっちにしても地獄しかなかった。
自分の身に跳ね返ってきて、やっとしてきたことの罪深さを知ったが、知った時には遅かった。


今日を生きるにはレスモンドに媚びるしかない。

賭博に興じるレスモンドに反省の色があったのは初日くらい。

――こんなドクズと10年も婚約していたオリビア様を尊敬するわ――


反省をする令嬢2人だが、夜は恐怖だった。
賭博でずっと勝ち続けていてくれれば。勝っている間はレスモンドも賭博だけをしてくれる。

――勝ち続けますように――

神に祈った。

そうでなければ恐ろしい事が身の上に降りかかってくる。
オリビアが婚約者だった頃は、子供が出来る行為をしても避妊具は使用してくれていた。

が、今は…。

レスモンドは第2王子が4歳である事から、懐妊をさせれば生まれて来る子供と第2王子の年齢差はほぼないに等しい。自身はもう表舞台に返り咲くことは出来ないと諦めても子供は違うと考えているようで避妊をしてくれなくなったのだ。

行為が終わった後、2人の令嬢は恐ろしくて執拗に洗い流す。
効果もあるかどうかわからない怪しげな「事後避妊」の手法や薬湯に縋るしかなかった。


2人の令嬢の家、双方から金が用立てられない日は早くやって来た。

2週間で逃げた1家。親族の家も夜逃げをしてしまい、もう1人の令嬢の家も持てるもの全て担保に入れて金を借りたので出せる金が無くなった。

時間にして2か月。
毎日賭博に明け暮れ、勝てば自分の懐、負ければ勝つまで令嬢の家に夜中でも使いを走らせて金を持ってこさせていればあっという間だ。

そこにポルトー侯爵家が他国の王子とオリビアを結婚させようとしている話が聞こえて来た。
秘匿をしていてもこんな話はどこかから漏れてしまうもの。

聞いてしまったレスモンドはここ数日手が付けられない程に荒れていた。

「オリビアを連れてこい!今すぐッ!ここに連れてこい!俺のおかげで知恵がついたと思ってるんだ!他国に嫁ぐだ?ふざけるのも大概にしろ!!」


従者たちも手に負えず、国王と王妃に泣きつくも「宮から出なければそれでいい」と取りつく島もなかった。


職を失ってしまうが命を失うよりずっとマシ。
1人、2人と使用人も逃げ出していく。

閑散としてきた宮には今日もレスモンドの怒号が響いていた。
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