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VOL.24 オリビアが売ったもの
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ゴミの仕分けから始まったクーヘンの店の大清掃。
ブラシで本格的に床を洗う作業に入ると、ようやく売り場から住居スペースに住処を移した。
商品を並べて置いておく棚も全て取り払って何もなくなった売り場。
ブラシで丁寧に洗った床をそのまま使うかと言えば違う。クーヘンが家を買って修繕はしたけれどところどころ板が反り返ってしまっている個所も多かった。
それに板の下は土。
この季節は足元から冷えてしまうので現在の床の上に更に床を作ることにした。
敷藁も貰ってきて断熱材代わりに敷き込む。
建付けの悪かった扉は床の高さが上がる分、下部を少しカットする。するとコツを使わなくてもスムーズに開くようになった。
そして今回から床となる材料を調達。
小雪の舞う中、木材の製材所に行き、捨ててしまう製材の切れ端を貰ってきてフローリングとして敷くのだ。
貰えた切れ端の量と床の広さは一致していない。
「どうしようか。全然足らないぞ」
「足りるようにするのよ。全部を板にしようとするから足らないの。板2枚分の幅に石を敷きましょう。滑り止めにもなるし、床材が腐った時に補修するにしても入れ替えるにしても量が少なくて済むわ」
「そうだな。なら…こんな感じに石を配置して売り場と区別したらどうだろう」
クーヘンは紙に炭を使って模様を描いた。
説得をしたわけではなかったけれど、クーヘンは菓子だけに拘る事をやめた。
店では菓子だけではなくパンも売ることにしたのだ。そして2組しかスペースはないが飲食ブースも設けた。石で区画をすれば解りやすい。
また別の日に2人はハンスに荷車を借りて雪が積もる河原に行き、雪に埋もれていたが掻き分けて出来るだけ平らな石を拾ってきた。敷き詰めて、間に板を嵌めこんでいく。
そしてまた別の日には雪が踏みしめられて凍った道を歩き、草むらに行ってテカリ草を2人で摘む。
煮だして冷ました煮汁を磨き上げた住居用の床にドバー!っと撒いてワックス代わり。1度や2度では光沢は出ないので乾けばまた煮だして冷ました煮汁を撒いた。
今日はほぼ仕上がって来た売り場の壁紙を張っている。
「そっち!ちゃんと押さえてくれてる?」
「押さえてるよ。ちょっと引っ張るよ!」
2人が押さえている間に魚屋の店主カジーキと、肉屋の店主ブータコマが手早くローラーで貼り付けていく。
「ふぅ…あとは木箱を解体して棚を作って設置ね。ちゃんと洗ってくれた?」
「勿論だ。新しい木箱はハンスが市場から貰ってきてくれたしな」
棚に並べるのは食品なのでコードネームGが寛いでいた木箱を利用するのは気が引ける。
以前の売り場にあったもので残っているのは壁と床、そして天井くらい。
それもかなり洗浄して壁紙も床材も天井材も交換した。
「だけど…本当にごめんな…」
クーヘンはオリビアに頭を下げた。
「いいのよ。軽くなって快適!どう?似合う?」
「うん、似合ってる。可愛いよ」
「ならいいの。謝ったりしないで」
オリビアが祖母の形見のイヤリングを売った金はとっくに尽きていて、壁紙や天井材を購入する費用はなかった。そこでオリビアが考えたのはずっと伸ばしていたままの髪を売る事だった。
クーヘンは当然反対をした。
「切ってもまた伸びて来るわ」
「だけど…女性が髪を切るなんて、やっぱりだめだ」
オリビアの意思は固く、クーヘンの反対を押し切って髪を売ってしまったのだ。
状態も良く、長さもあったので髪は高値で買い取って貰えた。
それまで頭の後ろで丸めていた髪は顎のラインで揃えられたボブヘアーになった。
「ちょっと首筋がスースーするけど直ぐに慣れるわ。ふふっ」
「・・・・」
「もう!黙らないでよ。ほらスカーフをね、こうやって頭にメイドさん風にすると売り子っぽく見えない?どう?」
「うん…」
「どう?」微笑みながら頭にスカーフを巻くオリビアの指には皸があった。
クーヘンの所に来るまでは皸など無縁の生活を送っていたであろうオリビア。連日、水を使ったりの作業で「ピキ!」と割れてしまったのだ。
「痛っ!!」
「どうした?!」
「モップ掛けしようと思ったら指が…」
「皸だな。傷むだろう。白及の粉があったはずだ」
「大丈夫よ」と貴重な薬もオリビアは塗ろうとしない。それどころか「皸ってこうなるのね」と自分の指を珍しそうに眺めていた。
クーヘンはスカーフの端を抓んでいるオリビアの指を手で包むようにして握った。
「ヒュゥゥ♡」
==忘れてた!こいつらがいるんだった!==
魚屋の店主カジーキと、肉屋の店主ブータコマがニヤリ。
「お邪魔かしらぁん?」とおどけた声を出した。
しかし!空気を読まないのは高位貴族に令嬢として生まれた女性の特性なのか。
「邪魔?とんでもないわ!試食!試食をしてもらわないと!」
この2か月間。店の中を片付け、掃除をしながらクーヘンは試作品を幾つか作った。
カジーキとブータコマは壁紙張りの手伝いの他に生贄…いや毒味…いや試食の使命も兼ねて今日は来てくれていたのだった。
「さぁ、食べてみて。どうかしら」
「おぉ~これってクーヘンが作ったのか?」
「なんだこれ…柔らかいな…これが菓子か?」
「そうよ。可愛いでしょう?」
皿に盛られていたのは菓子は菓子でもカジーキもブータコマも見たことがない菓子だった。
ブラシで本格的に床を洗う作業に入ると、ようやく売り場から住居スペースに住処を移した。
商品を並べて置いておく棚も全て取り払って何もなくなった売り場。
ブラシで丁寧に洗った床をそのまま使うかと言えば違う。クーヘンが家を買って修繕はしたけれどところどころ板が反り返ってしまっている個所も多かった。
それに板の下は土。
この季節は足元から冷えてしまうので現在の床の上に更に床を作ることにした。
敷藁も貰ってきて断熱材代わりに敷き込む。
建付けの悪かった扉は床の高さが上がる分、下部を少しカットする。するとコツを使わなくてもスムーズに開くようになった。
そして今回から床となる材料を調達。
小雪の舞う中、木材の製材所に行き、捨ててしまう製材の切れ端を貰ってきてフローリングとして敷くのだ。
貰えた切れ端の量と床の広さは一致していない。
「どうしようか。全然足らないぞ」
「足りるようにするのよ。全部を板にしようとするから足らないの。板2枚分の幅に石を敷きましょう。滑り止めにもなるし、床材が腐った時に補修するにしても入れ替えるにしても量が少なくて済むわ」
「そうだな。なら…こんな感じに石を配置して売り場と区別したらどうだろう」
クーヘンは紙に炭を使って模様を描いた。
説得をしたわけではなかったけれど、クーヘンは菓子だけに拘る事をやめた。
店では菓子だけではなくパンも売ることにしたのだ。そして2組しかスペースはないが飲食ブースも設けた。石で区画をすれば解りやすい。
また別の日に2人はハンスに荷車を借りて雪が積もる河原に行き、雪に埋もれていたが掻き分けて出来るだけ平らな石を拾ってきた。敷き詰めて、間に板を嵌めこんでいく。
そしてまた別の日には雪が踏みしめられて凍った道を歩き、草むらに行ってテカリ草を2人で摘む。
煮だして冷ました煮汁を磨き上げた住居用の床にドバー!っと撒いてワックス代わり。1度や2度では光沢は出ないので乾けばまた煮だして冷ました煮汁を撒いた。
今日はほぼ仕上がって来た売り場の壁紙を張っている。
「そっち!ちゃんと押さえてくれてる?」
「押さえてるよ。ちょっと引っ張るよ!」
2人が押さえている間に魚屋の店主カジーキと、肉屋の店主ブータコマが手早くローラーで貼り付けていく。
「ふぅ…あとは木箱を解体して棚を作って設置ね。ちゃんと洗ってくれた?」
「勿論だ。新しい木箱はハンスが市場から貰ってきてくれたしな」
棚に並べるのは食品なのでコードネームGが寛いでいた木箱を利用するのは気が引ける。
以前の売り場にあったもので残っているのは壁と床、そして天井くらい。
それもかなり洗浄して壁紙も床材も天井材も交換した。
「だけど…本当にごめんな…」
クーヘンはオリビアに頭を下げた。
「いいのよ。軽くなって快適!どう?似合う?」
「うん、似合ってる。可愛いよ」
「ならいいの。謝ったりしないで」
オリビアが祖母の形見のイヤリングを売った金はとっくに尽きていて、壁紙や天井材を購入する費用はなかった。そこでオリビアが考えたのはずっと伸ばしていたままの髪を売る事だった。
クーヘンは当然反対をした。
「切ってもまた伸びて来るわ」
「だけど…女性が髪を切るなんて、やっぱりだめだ」
オリビアの意思は固く、クーヘンの反対を押し切って髪を売ってしまったのだ。
状態も良く、長さもあったので髪は高値で買い取って貰えた。
それまで頭の後ろで丸めていた髪は顎のラインで揃えられたボブヘアーになった。
「ちょっと首筋がスースーするけど直ぐに慣れるわ。ふふっ」
「・・・・」
「もう!黙らないでよ。ほらスカーフをね、こうやって頭にメイドさん風にすると売り子っぽく見えない?どう?」
「うん…」
「どう?」微笑みながら頭にスカーフを巻くオリビアの指には皸があった。
クーヘンの所に来るまでは皸など無縁の生活を送っていたであろうオリビア。連日、水を使ったりの作業で「ピキ!」と割れてしまったのだ。
「痛っ!!」
「どうした?!」
「モップ掛けしようと思ったら指が…」
「皸だな。傷むだろう。白及の粉があったはずだ」
「大丈夫よ」と貴重な薬もオリビアは塗ろうとしない。それどころか「皸ってこうなるのね」と自分の指を珍しそうに眺めていた。
クーヘンはスカーフの端を抓んでいるオリビアの指を手で包むようにして握った。
「ヒュゥゥ♡」
==忘れてた!こいつらがいるんだった!==
魚屋の店主カジーキと、肉屋の店主ブータコマがニヤリ。
「お邪魔かしらぁん?」とおどけた声を出した。
しかし!空気を読まないのは高位貴族に令嬢として生まれた女性の特性なのか。
「邪魔?とんでもないわ!試食!試食をしてもらわないと!」
この2か月間。店の中を片付け、掃除をしながらクーヘンは試作品を幾つか作った。
カジーキとブータコマは壁紙張りの手伝いの他に生贄…いや毒味…いや試食の使命も兼ねて今日は来てくれていたのだった。
「さぁ、食べてみて。どうかしら」
「おぉ~これってクーヘンが作ったのか?」
「なんだこれ…柔らかいな…これが菓子か?」
「そうよ。可愛いでしょう?」
皿に盛られていたのは菓子は菓子でもカジーキもブータコマも見たことがない菓子だった。
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