婚約破棄を強要されたら甘い日々が始まりました

cyaru

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VOL.25  踊るオリビア、区画大改革発動

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あの芋を食べた翌日、オリビアにミルクと卵を頼んだクーヘン。

「悪いんだけど卵は出来るだけ新鮮で良いやつ。ちょっと高価なんだけどいいかな?」

「いいわよ?ミルクはどうする?ヤギにする?」

「今回は牛乳で良い。ヤギミルクはこの時期あるか解らないからさ」


そう言い残してハンスの店に行ったのになかなか帰ってこなかった。

往復10分ないし15分もあれば戻って来るはずなのに3時間も帰ってこなかったのだ。

「ただいま~。ひゃぁ。寒かった」

「どこに行ってたの?って…氷?まさか川に?」

「そう。だって川にしか氷は無いしさ。雪だとちょっと無理かなと思ってさ」


桶に入っていたのは川に張っている氷で、買い物かごの中にはカボチャが入っていた。

それで生クリームを作るのかと思いきや生クリームも作るのだがそれだけではなかった。

「ずっと前に一度だけ食べた事があるんだ。11歳の時だったかな」

「何を作るの?」

「アイスクリームだ。ただ昔、作り方をちょっと聞きかじっただけだから上手くできるか解らないんだけどさ」


湯を沸かし、カボチャを蒸し器に入れると「さて!作りますかね」と言って生クリームを作り始めた。

生クリームが出来上がるとミルクを合わせる。

「ゆっくり加熱するからポコポコ泡が出てきたら教えて」

そう言って鍋の番をオリビアに頼むとボウルに卵黄と砂糖を入れて混ぜ始めた。
甜菜糖はまだ加工が始まったばかりなので今回は砂糖を使った。

「ポコポコしてきたけど…どうするの?」

「混ぜるんだ。ゆっくり…少しづつ…だったと思う」

――思うって…大丈夫かしら――

泡だて器で優しく混ぜながら数回に分けて卵黄と砂糖を混ぜたものをミルクと生クリームを混ぜた中に流していく。

「氷はどうするの?ここに入れるの?」

「違うよ。冷やさないといけないんだけど雪だとボゥルを置いた部分は溶けてしまうだろう?その度に場所を移さなきゃいけないから氷も使おうと思ったんだ」

金属のボゥルに流し込こむと、住居スペース側にある狭い洗濯干し場に行き、氷に塩を振って雪で周囲を固めボゥルを置くとゴミが入らないように全体を囲った。

「ちょっと置いといて、時々混ぜるんだ」

「カボチャはどうするの?」

「蒸したカボチャはペーストにするんだ。アイスクリームに砂糖も使ってるから今回はそのままペーストしようと思う」

「ふーん…それでどうするの?」

「まぁ、見てなって。失敗しても試作だからな。毎日カボチャになるだけだ」

――えぇー…毎日カボチャ…まぁいいかな――


クーヘンはカボチャをペーストしつつ、時々外に行きアイスもどきを混ぜてまたカボチャペーストを作る。

ドロドロではなく形成できる程度の固さを持ったペーストを山型にした。

そこに外のアイスもどきをスプーンで掬って添える。

「もうちょっと…アイスがあった方がいいかな」

スプーンでもう一度掬って皿に盛りつける。

「食べてみて」

「うん」

出会った日に食べた兵器クラスのクッキーの味を忘れている訳ではないが厄介になっている間、食事を作ってくれるのはクーヘン。オリビアは「お菓子職人じゃなく料理人に向いてるんじゃ?」と思っている。

一口食べたオリビア。

「どう?」

「うーん‥‥いいんだけど‥なんて言うか…ペーストにするより蒸したのを崩したほうがいいような‥あと、カボチャはもっと温かい方がいいかも。丁度ね、このアイスクリームの溶けた部分とペーストの混じってるところ。ここが一番美味しいかなって思うのよね。それにカボチャもいいけど…ジャガイモの方が私は好きかも」

「そうか…」

「文句ばかりでごめんなさい」

「良いんだよ。素直な意見が聞きたいんだ。お世辞はいらないからさ」

それから試行錯誤を繰り返し、ペーストではなく蒸して荒く砕いたカボチャ、ジャガイモを動物や山、俵型などに成形し、更にアツアツにするため焦げ目がほんのりつくまでオーブンで焼いてアイスクリームを添える。

ウェハースは作れなかったのでジャガイモをチップ状に切って菜種油で揚げたものを代わりに添えた。



試食はカジーキとブータコマにも「旨い!」と言って貰えた。
これは飲食ブースで提供する菓子で持ち帰りは出来ない上に冬限定、ジャガイモ、カボチャそれぞれ1日5食のみ。

クーヘンはこの他にもピーマンやニンジン、ゴボウを使ったパウンドケーキ風のパンも作った。

「さて、これでお店は出来たわね」

「え?まだあるのか?」

クーヘンはこれで店が再開できる。
そう思ったのだがオリビアはそうは思っていなかった。

「大ありよ!これからが正念場!気合を入れていくわよ!」

「どこに行くと言うんだ?」

「決まってるじゃない。お隣さんよ」

「え?…隣?」


クーヘンの店は飲み屋に挟まれている。それに細い路地を通って来た場所なので年若い女の子が3、4人であったとしても「行こうか」となった時に躊躇してしまう。

折角美味しいスィーツがあると解っても、酔っぱらいや破落戸のいそうな場所に行きたいとは思わないのだ。

「言ったでしょう?作る前、作った後、そして作る環境!大事なのよ」

フフンとオリビアは鼻を鳴らす。

「勿論、手ぶらで話を付けようなんて思ってないわ」

ドカ!っとオリビアは何やら液体の入った瓶をテーブルに置いてドヤ顔。


「これ…なに?」

「何って…甜菜から作った蒸留酒!ウォッカよ!」

「ウォッカぁ?!」

「いい?単なる飲み屋じゃ時代に乗り遅れるわ。ご近所さんもお洒落なバーにするのよ!ソルティドッグにスクリュードライバー、ブラッディメアリー!!いい?完全大人向けのお酒の入ったお菓子も作ってもらうわよ?そうすれば!!」

「そうすれば…なんだ?」

「お隣さんとも共存できる!!ハンスさんの青果店もウハウハ!おつまみの小魚チップを使った焼きパティでカジーキさんもウハウハ!燻製肉を大量納品でブータコマさんもウッ!ハッ!ウッ!ハッ!ジンッ!ジンッ!ジンギ――」

「わかーった!解ったから!踊らなくていいから!」

「そう?Heyブラザーなのよ?」

「解ったから!全く…どこでそんなの覚えてクんだよ…」


ウォッカの瓶を抱えてオリビアはクーヘンを従え、お隣さんの大衆酒場に向かったのだった。

クーヘンの「どこで覚えた」の言葉にブータコマとカジーキが親友クーヘンに言えない秘密を抱えた事をクーヘンは知らない。
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