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VOL.43 甘い生活
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ムスッとした表情を浮かべるのはレスモンドだった。
国王に呼び出されたのである。
実にオリビアに愚行を働いて馬車を使って ”ドア TO ドア” の様なものだが5か月ぶりに宮の外に出た。
なのに国王の待つ部屋に行き、ドカリとソファに座り込むと国王から信じられない言葉を聞いた。
「宮を出してやろう」
「ホントか!?いやぁ…あの計画書、やっと認められたか~。待ちくたびれたよ」
レスモンドはディチ子爵が捕縛をされたことを知らなかった。
使用人も少なくなった宮で、レスモンドは何を切欠にキレるか判らない。言われた事だけして話しかけるような事は全員がしなかった。
――知らない事は幸せなのか、不幸なのか――
国王はレスモンドの横柄な態度を見て、従者に目くばせをし兵士を部屋の中に入れた。兵士の姿にレスモンドは大して驚かなかった。
「新しい部屋に連れて行ってもらうといい」
「え?なに?俺はまだ自分で歩けるけど?呼び出されただけだし、荷物は宮にあるけど…え?もしかして宮も変わるってことか?」
「あぁそうだ」
「別にそこまで気を使ってもらう必要はないんだけどな。街に近い白離宮?あ~でも琥珀宮でもいいけどなぁ」
暢気な事を言っていたのはそこまでだった。
兵士は力づくでレスモンドの腕を掴むと立たせて、部屋から連れ出そうとした。
どうもおかしいと気が付いたレスモンドは国王に「どういう事だ?」と叫んだ。
「お前が今から行くのは塔だ。数日のうちに手続きは済ませる」
「と、塔?!なんでだよ!俺何かしたのか?!」
「解らなければあの世でゆっくり考えろ」
レスモンドが「病死」と発表されたのはそれから10日後の事だが5か月も宮に幽閉をされていた第1王子の事など民衆には何の興味もない。
病死を知らせる貼り紙は風に吹かれ、止めピンが外れるとひらひらと飛んで市井の民が生活排水を流す溝に落ちると水を吸って沈んでいった。
ポルトー侯爵は馬車が戻って来ると空の庫内に悲鳴を上げた。
「なんでオリビアがいないのだ!!まさかレスモンド殿下に?!許可していないぞ!」
御者はオリビアのヒールを無言でポルトー侯爵に差し出した。
「まさか…自死を?」
御者は何も答えなかった。
「ポティト王国との話はどうなるんだ?!代わりっ…代わりの娘を…未婚の姪は…えぇっと‥」
最後までポルトー侯爵にとってオリビアは道具だった。
代わりの「道具」を必死に探したポルトー侯爵だったが、何度目かの訪問でポティト王国の駐在大使は任期満了で帰国してしまい、次の大使には話が通じない。
婚約の話を聞いてくれる者は誰もいなくなった。
「あなた、おやめください。ありもしない事を吹聴すれば相手国も王家なのですよ」
「そうですよ。父上。これ以上恥をかかせないでください」
呆けたとされたポルトー侯爵は蟄居となりオリビアの兄がポルトー侯爵となって家を継いだ。
その兄‥‥。
夜会でスピア伯爵に問われた時。
「オリビア…あぁ王妃になったのなら妹として関りもあったでしょうが、除籍ですからね。他人ですよ」
父親が除籍をしたのだと自分の記憶からも抹消しようとしていた。
よく似た親子だとスピア伯爵はポルトー侯爵家関係の事業は契約満了後、結ぶ事はなかった。
★~★
「うわぁ…歩きにくいわねっ」
ペンギンのようにヨタヨタと歩いてオリビアは西地区にやって来た。
「もう限界。もう限界よ…裸足の方がずっと楽かも」
そう思って靴を脱いで地面に素足を降ろして「だめ」短く言葉を吐くと直ぐ靴に足を戻した。
幾つかの路地を曲がり、やっと住み慣れたあの路地にやってくると「もう一息」と飲み屋キタの前を通り、クーヘンの店の前まであと2,3歩。
突然扉が開き、クーヘンが飛び出て来た。
「オリビアっ!!」
「あら?出かける所だったの?」
「オリっ…オリビアッ!!」
クーヘンは駆け寄ってきてオリビアを抱きしめた。
「ごめんっ。俺、知らなくて。親と話せば判りあえるとか思ってしまった。オリビアはそうじゃなかったんだよな。ごめん。本当にごめん」
「うん。いいの。説明しなかった私も悪いの。でも…どこかに行くの?」
「ポルトー家にオリビアを迎えに行こうと思って」
ポルトー家のある方向を指さしたクーヘンの手を見てオリビアは顔色を変えた。
「私を?…ん?怪我してるの?」
「これは…怪我の内に入らないよ。大丈夫だ」
「待って。見せて。‥‥酷い火傷。何をしたの?」
「オリビアちゃんを思ってて空焚き~だよな?」
ミルクなどの買い物を頼まれたハンスは遅れて出てきて抱き合う2人を見て声を掛けて来た。
「空焚きですって?危ないじゃない!放火とは言え火事があったばかりでしょう?火の取り扱いは気を付けようって!あぁもう!!」
「ごめんよ。でも調理するのに問題は――」
「大あり!もう…こんな火傷までして…」
「ごめん。二度と心配かけないようにするから」
「約束だからね?解ってる?」
「解ってる。そんでもって…二度と離れない。絶対にオリビアを手放すような事はしないよ」
「大丈夫よ。クーヘンさんのご飯じゃないと私、生きていけないもの」
「ははっ。餌付け成功だ」
「成功したからって釣った魚に餌をあげなかったら怒るわよ?」
「そこは安心してくれ。でも甘いデザートを先に貰うとするか」
クーヘンはオリビアにキスをした。
のだが‥‥。
ぐいっと胸を突かれて距離が出来た。
「あのね!寄り合い所でもそうだけど、キスっ!!キスもね!場所を考えてよ!ハンスさんは見てるし、排水溝は掃除出来てないし!胸がどきどきするようなの!考えてよ!」
「ぁぃ」
小さく返事をしたクーヘンだったが、オリビアを横抱きにするとブカブカの御者と交換した靴がポーンポーンと直ぐ近くに脱げて飛んでしまった。
「だからぁ!横抱きにすると手!怪我してるでしょ!」
「まぁまぁ。じゃ、俺は頼まれた買い物済ませてくるから2人は店に入りなって」
プンプンと怒るオリビアにハンスは声を掛けて「買い出しに行く」と去っていった。
☆彡☆彡
「うーん。美味しいんだけど…」
クーヘンにアイスクリームを作って貰ったオリビアは出来たてを頬張ったがイマイチ。
「どうした?」
「ざらつくっていうか‥‥前にカボチャと一緒に食べたのとちょっと舌触りが違うわ」
「急いで作っちゃったからな。でも…これからはずっと一緒だ。納得するまで作りますよ。奥さん」
「期待してますわ」
ざらつくアイスクリームもキスをすれば滑らかな味だった。
――婚約破棄だって言われたけど‥こんな甘い生活が始まるならされてよかったわ――
そう思いつつ、翌日から出て来るクーヘンの料理をオリビアは食べまくる。
1週間で3kg太ってしまい、クーヘンはダイエットメニューを考える事になるのだった。
Fin
お付き合い頂きありがとうございました<(_ _)>
国王に呼び出されたのである。
実にオリビアに愚行を働いて馬車を使って ”ドア TO ドア” の様なものだが5か月ぶりに宮の外に出た。
なのに国王の待つ部屋に行き、ドカリとソファに座り込むと国王から信じられない言葉を聞いた。
「宮を出してやろう」
「ホントか!?いやぁ…あの計画書、やっと認められたか~。待ちくたびれたよ」
レスモンドはディチ子爵が捕縛をされたことを知らなかった。
使用人も少なくなった宮で、レスモンドは何を切欠にキレるか判らない。言われた事だけして話しかけるような事は全員がしなかった。
――知らない事は幸せなのか、不幸なのか――
国王はレスモンドの横柄な態度を見て、従者に目くばせをし兵士を部屋の中に入れた。兵士の姿にレスモンドは大して驚かなかった。
「新しい部屋に連れて行ってもらうといい」
「え?なに?俺はまだ自分で歩けるけど?呼び出されただけだし、荷物は宮にあるけど…え?もしかして宮も変わるってことか?」
「あぁそうだ」
「別にそこまで気を使ってもらう必要はないんだけどな。街に近い白離宮?あ~でも琥珀宮でもいいけどなぁ」
暢気な事を言っていたのはそこまでだった。
兵士は力づくでレスモンドの腕を掴むと立たせて、部屋から連れ出そうとした。
どうもおかしいと気が付いたレスモンドは国王に「どういう事だ?」と叫んだ。
「お前が今から行くのは塔だ。数日のうちに手続きは済ませる」
「と、塔?!なんでだよ!俺何かしたのか?!」
「解らなければあの世でゆっくり考えろ」
レスモンドが「病死」と発表されたのはそれから10日後の事だが5か月も宮に幽閉をされていた第1王子の事など民衆には何の興味もない。
病死を知らせる貼り紙は風に吹かれ、止めピンが外れるとひらひらと飛んで市井の民が生活排水を流す溝に落ちると水を吸って沈んでいった。
ポルトー侯爵は馬車が戻って来ると空の庫内に悲鳴を上げた。
「なんでオリビアがいないのだ!!まさかレスモンド殿下に?!許可していないぞ!」
御者はオリビアのヒールを無言でポルトー侯爵に差し出した。
「まさか…自死を?」
御者は何も答えなかった。
「ポティト王国との話はどうなるんだ?!代わりっ…代わりの娘を…未婚の姪は…えぇっと‥」
最後までポルトー侯爵にとってオリビアは道具だった。
代わりの「道具」を必死に探したポルトー侯爵だったが、何度目かの訪問でポティト王国の駐在大使は任期満了で帰国してしまい、次の大使には話が通じない。
婚約の話を聞いてくれる者は誰もいなくなった。
「あなた、おやめください。ありもしない事を吹聴すれば相手国も王家なのですよ」
「そうですよ。父上。これ以上恥をかかせないでください」
呆けたとされたポルトー侯爵は蟄居となりオリビアの兄がポルトー侯爵となって家を継いだ。
その兄‥‥。
夜会でスピア伯爵に問われた時。
「オリビア…あぁ王妃になったのなら妹として関りもあったでしょうが、除籍ですからね。他人ですよ」
父親が除籍をしたのだと自分の記憶からも抹消しようとしていた。
よく似た親子だとスピア伯爵はポルトー侯爵家関係の事業は契約満了後、結ぶ事はなかった。
★~★
「うわぁ…歩きにくいわねっ」
ペンギンのようにヨタヨタと歩いてオリビアは西地区にやって来た。
「もう限界。もう限界よ…裸足の方がずっと楽かも」
そう思って靴を脱いで地面に素足を降ろして「だめ」短く言葉を吐くと直ぐ靴に足を戻した。
幾つかの路地を曲がり、やっと住み慣れたあの路地にやってくると「もう一息」と飲み屋キタの前を通り、クーヘンの店の前まであと2,3歩。
突然扉が開き、クーヘンが飛び出て来た。
「オリビアっ!!」
「あら?出かける所だったの?」
「オリっ…オリビアッ!!」
クーヘンは駆け寄ってきてオリビアを抱きしめた。
「ごめんっ。俺、知らなくて。親と話せば判りあえるとか思ってしまった。オリビアはそうじゃなかったんだよな。ごめん。本当にごめん」
「うん。いいの。説明しなかった私も悪いの。でも…どこかに行くの?」
「ポルトー家にオリビアを迎えに行こうと思って」
ポルトー家のある方向を指さしたクーヘンの手を見てオリビアは顔色を変えた。
「私を?…ん?怪我してるの?」
「これは…怪我の内に入らないよ。大丈夫だ」
「待って。見せて。‥‥酷い火傷。何をしたの?」
「オリビアちゃんを思ってて空焚き~だよな?」
ミルクなどの買い物を頼まれたハンスは遅れて出てきて抱き合う2人を見て声を掛けて来た。
「空焚きですって?危ないじゃない!放火とは言え火事があったばかりでしょう?火の取り扱いは気を付けようって!あぁもう!!」
「ごめんよ。でも調理するのに問題は――」
「大あり!もう…こんな火傷までして…」
「ごめん。二度と心配かけないようにするから」
「約束だからね?解ってる?」
「解ってる。そんでもって…二度と離れない。絶対にオリビアを手放すような事はしないよ」
「大丈夫よ。クーヘンさんのご飯じゃないと私、生きていけないもの」
「ははっ。餌付け成功だ」
「成功したからって釣った魚に餌をあげなかったら怒るわよ?」
「そこは安心してくれ。でも甘いデザートを先に貰うとするか」
クーヘンはオリビアにキスをした。
のだが‥‥。
ぐいっと胸を突かれて距離が出来た。
「あのね!寄り合い所でもそうだけど、キスっ!!キスもね!場所を考えてよ!ハンスさんは見てるし、排水溝は掃除出来てないし!胸がどきどきするようなの!考えてよ!」
「ぁぃ」
小さく返事をしたクーヘンだったが、オリビアを横抱きにするとブカブカの御者と交換した靴がポーンポーンと直ぐ近くに脱げて飛んでしまった。
「だからぁ!横抱きにすると手!怪我してるでしょ!」
「まぁまぁ。じゃ、俺は頼まれた買い物済ませてくるから2人は店に入りなって」
プンプンと怒るオリビアにハンスは声を掛けて「買い出しに行く」と去っていった。
☆彡☆彡
「うーん。美味しいんだけど…」
クーヘンにアイスクリームを作って貰ったオリビアは出来たてを頬張ったがイマイチ。
「どうした?」
「ざらつくっていうか‥‥前にカボチャと一緒に食べたのとちょっと舌触りが違うわ」
「急いで作っちゃったからな。でも…これからはずっと一緒だ。納得するまで作りますよ。奥さん」
「期待してますわ」
ざらつくアイスクリームもキスをすれば滑らかな味だった。
――婚約破棄だって言われたけど‥こんな甘い生活が始まるならされてよかったわ――
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