愛、焦がれ

環流 虹向

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慾張

自律

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家出を心に決めた私はこっそりと寮がある大学を調べつつ、新しいバイト先でデート代を稼ぐために愛嬌を売る。

優愛「らみゅの“もちしゅわわん白玉入りフルーツポンチ”お持ちしましたぁ♡」

一目惚れしたチャイナドレスの制服を着る私はフルーツポンチが入ったパフェグラスをお客さんのテーブルに置き、無い愛を送る。

「ありがとー。ライブの後、絶対チェキ撮ろうね。」

優愛「うんっ!一緒にらびりん作ろうねー♡」

私を推してくれるお客さんに手を振り、一度舞台用の衣装に着替えるために更衣室へ行くと一緒に舞台で踊るナココ先輩が先に着替えていた。

優愛「お疲れ様です。」

ナココ「おつ。時間ある?」

と、ナココ先輩は私を食事に誘うよう、手に透明のスプーンを持って空気をかきこむ。

 優愛「一応…、1時間くらいなら。」

休日のバイト後は別の駅で桃樹さんと待ち合わせしてデートするから夕方でシフトは終えるようにしてる。

けど、最近一緒に踊ることが多いナココ先輩はエネルギー補給をしてからまた別の仕事に行くらしく、私を道連れにしようとするのがお決まり。

ナココ「また彼氏?熱いねぇ。」

優愛「付き合って大体3ヶ月なので。」

ゴールデンウィークが終わってすぐが私たちの記念日。

だからその休みで桃樹さんのドライブで温泉旅行をすることになっている。

ナココ「魔の3ヶ月じゃん。」

優愛「マ?」

私は何のことか分からず首を傾げるとナココ先輩は頭にツノを生やして3番人気の可愛い笑顔をした。

ナココ「悪魔の“魔”。3の倍数の期間に入ると恋人は別れやすいんだよ。」

優愛「…根拠、あるんですか?」

ナココ「んー。ないけど、友達は大体3ヶ月、半年、長くもって3年で別れることが多いかな。」

…なにそれ。

今、聞きたくなかった。

ナココ「恋の消費期限は3年以下らしいから理屈はあってるかも。」

そう言ってナココ先輩はよく分からない大学の研究結果を携帯画面に出し、私に見せてきた。

優愛「愛の消費期限はあるんですか?」

ナココ「ないんじゃない?ムショーの愛っていうじゃん。」

優愛「そのムショーは消費の“消”じゃないですよー。」

私は適当なナココ先輩に適当な返事をして舞台用の衣装に着替え終える。

ナココ「まあ、愛に消費期限があったら生き物は生き残ってないんじゃない?」

優愛「…確かに。」

意外にまともなことを言ったナココ先輩を私は見直し、一緒に舞台に上がって有名アイドルグループの曲や可愛いボカロの曲をバックに3曲踊り、今日の1番大変な仕事は終わり。

後は私に課金してくれるお客さんたちと舞台衣装のままチェキを撮って、月々入るお給料とは別に店長からお駄賃を貰う。

みんなはこのお駄賃が少な過ぎと言うけれど、普通のバイトをしてた私にとっては5枚撮ったら1時間分の給料になるのは有難い。

なので笑顔で受け取り、最近のルーティンになったナココ先輩とのスピーディブランチを終えて5つ先の駅で待ち合わせしている桃樹さんに駆け寄る。

桃樹「バイトお疲れ。」

優愛「遅くなってごめんなさい。」

いつも私より早く来ている桃樹さんに謝ると、桃樹さんは全く気にしてないように手を繋ぎ、今日の目的地になっている映画館へ向かうけれど私は激しい運動と炭水化物のダブルパンチで睡魔に襲われ、信号待ちでうっかり殺されかける。

桃樹「…眠い?」

優愛「今日は全部観れないかも。」

せっかく街に出てきてもらったけどデートで寝たり事故ったりしたら別れられると思い、私はうるさいゲームセンターをお願いしたけれど桃樹さんは帰ろうと言ってくる。

けど、私はもうあの家に帰りたくない。

その気持ちはずっと前からあったものだけど、この間のことで前以上に強くなってしまったから明日の1日休みは別の家で目を覚ましたい。

だから…

優愛「桃樹さんの家行きたい。」

桃樹「えっ!?」

桃樹さんはとても驚いて声が裏返ったのを恥ずかしそうにし、足元に目を向けてモジモジする。

優愛「ゴロゴロしたーい。ゆあ、ちゅかれたぁ。」

恋人らしいことはデートという遊びをしてる中で手を繋ぐことしかしてくれない桃樹さんの腕に私は抱きつき、誘ってみる。

優愛「ねみゅうぃ…。よだれたれるぅ…。」

私はわざとヨダレを吸う音をさせると、桃樹さんは私のほっぺを鷲掴みして握りつぶした。

桃樹「女の子なんだから汚い音出さないの。今日は僕の家でのんびりしよ。」

そう言って桃樹さんは耳を赤くしたまま、電車に乗って自分の家の扉を開けると勢いよく階段を駆け上がってすぐに自分の部屋へ私を投げ入れた。

桃樹「ジュース持ってくるから待ってて。」

桃樹さんは家の人へ私が挨拶をする暇を与えないよう、階段を駆け足で降りて小さく聞こえるお母さんらしき声の人と少し言い争っている。

けど、それは喧嘩じゃなくて女性が一方的にする質問をやめてと桃季さんは言っていてとっても仲がいい家族なんだなぁと思っていると、まだ下で桃樹さんの声が聞こえるのに扉が開いた。

私はそれに全身に鳥肌が立ち、固まっていると桃樹さんのお姉さんという人が私にマシンガントークをしてきて頭が真っ白になる。

「バイト先の子?それとも塾の子?それかー…、あ!同じ高校の子?」

優愛「えっ…あ…こ…」

モジモジ桃樹さんのお姉さんとは思えない前のめりな姿勢に私が言葉を失っていると、ジュースを取りに行っていた桃樹さんが綺麗な女性と戻ってきた。

桃樹「もー…、来ないでって。」

「いいじゃん、いいじゃんっ!」

「彼女ちゃん可愛い。食べたい。付き合いたい。」

桃樹「もうっ!出てって!」

そう言って桃樹さんは2人の綺麗な女性を部屋から押し出して私と2人っきりの空間を作った。


環流 虹向/愛、焦がれ
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