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救出
しおりを挟む夜が明けて、朝方5時に2人は目が覚める。
2人はベットから起き上がり、ガーゼア国の軍服に着替える。
陛下は戦闘前の威圧的な顔つきになっており、早朝から威厳を放っていた。
来客用の寝室を出て、リビングに降りる陛下の後を彼女は何も言わずについていく。
地下帝国の入り口前までのワープゾーンまでは近く、まだ時間に余裕があるため陛下はリビングのソファーに腰掛けて、両足を広げて座り、目を閉じて戦闘イメージを浮かばせる。
彼女は日常と変わらない様子で、やかんに水を入れてお湯を沸かしてから、紅茶を2杯入れる。
彼女は、陛下の座る前のテーブルに紅茶を運び置くが、陛下は集中しきっているので全くそのことに気づかなかった。
昨夜の陛下が嘘だったかのように、国王のオーラを身に纏っていた。
6時の15分前になると、測っていたかのように陛下はパッと目を開ける。
「行くぞ。」
陛下は立ち上がり、真っ直ぐを見据えていた。
「えぇ。一応、このネックウォーマーを口元まで巻いて、身バレ対策をしていきましょう。」
彼女は、リビングで見つけたネックウォーマーを1つ陛下に渡す。
陛下は言われるがままに首元に巻きつけて、ネックウォーマーで鼻上部分まで隠す。
そして2人は、一晩過ごした男の家を後にし、雪の降る山道を道なりに進み、ワープゾーンまで進んでいく。
山道では、上級兵のバッチをつけた軍人たちが黙々と歩み進んでおり、体格の良い男たちがゾロゾロと列を成していたが、陛下はその中でも頭1つ飛び抜けるほど身長が高く威厳を放ち、目立っていた。
彼女は女だとバレないように、帽子を深く被り、長い髪の毛は軍服の背中側に仕舞い込んで、カモフラージュしていた。
2人は、兵士たちの流れに沿いながら、ワープゾーンを潜り抜けて、シェルター前の入り口まで行く。
シェルター前にいた警備の兵士たちは、上級兵士たちが来るやいなや、敬礼をしながらシェルターに入れ込む。
そして、2人は難なくシェルター内に入り込んだ。
男が話していた時間が来ると、【ウーー】という警報音を発しながら、シェルターの音を鳴り響かせながら、入り口の扉が閉じて、みんなが居る移動空間ボックスが地下100Mまで下っていった。
3000人近くの上級兵士の集団に囲まれながら、彼女も陛下も全く動じて居なかった。
移動空間ボックスが地下に着き、扉が開くと、そこには男が言っていた通りの、地上へと繋がる円柱バルブがいくつも無数に並んでおり、その円柱の中には人が1人ずつ埋め込まれており、先が見えないほど続いて居た。
「ねぇ、これから…」
彼女が小声で陛下に話しかけようとした次の瞬間に、陛下は一気に魔力を暴発させて、奥まで続く円柱を割っていった。
周囲にいた上級兵士たちは、警戒体制に入り、陛下を中心に取り囲み魔力で一気に攻撃に入ろうとするが、陛下は一瞬にして陛下の持つ無効空間に送り込み、姿を消させた。
その行動はあまりにも早く、敵国の上級兵士たちも何が起こっているのか理解不能のまま陛下の支配領域の無効空間にて魔力を使い、脱出しようと足掻いていた。
莫大な魔力を纏いながら、陛下は円柱から滑り落ちてきた生命維持装置に繋がれている兵士たちに目をやる。
「お前、ここに乗り込む前の条件で攻撃魔法はしないという事だったが、こいつらの保護は頼んでも良いのか?」
陛下は、無効空間に閉じ込めている兵士たちへの防御魔法を効かせながら、彼女へ指示を出す。
「えぇ。いいわ。私の持つ無効空間にみんなを送るわ。全員を保護出来たら、私はその無効空間でみんなの治療に回るわね。」
陛下は頷き、魔力にて宙に浮遊しながら加速していき中央のガーゼア国王の居ると思われる魔吸水タンクの入り口へと向かって突き進む。
彼女もまた、それに並走しながら進み、瞬時に次々へ、同国や同盟国の生命維持装置に入れられた兵士たちを彼女の持つ無効空間へと送り込んでいく。
中央に向かって円柱はどんどん増えていき、街下と思われる地下は、円柱だらけだった。
地下中央の魔吸水タンクの地上地点には、ガーゼア国の城が建つ場所である。
中央地点に着くと、彼女は一気に魔力を膨張させて、遠心から求心にかけて、何万という兵士を無効空間へと一気にワープさせた。
陛下は彼女の方に目をやり、2人のいる地下フロア空間に、魔力が彼女と自分の分しかないことを確認する。
「俺は、これから1人で乗り込む。お前は兵士たちの治療を頼む。」
陛下はそう言って、中央の魔吸水タンク入り口に乗り込もうとするが、彼女は陛下の手を掴んで止める。
「待って!」
彼女は目を閉じて、自分の無効空間内に魔力を向ける。
陛下は静止して、彼女の方を向き耳を傾ける。
「ここの地下にいた兵士たちは全てワープさせたけれど、いるのは他国の軍服を着た兵士ばかりで、あなたの国の兵士たちがほとんどいないわ。」
彼女は目を開けて、陛下を真っ直ぐ見つめる。
「…っ!このタンク下に閉じ込めてやがるのか。」
彼女は、陛下の言葉に反応し、素早く頷く。
「魔力感知ができないから、タンク内の魔吸水の中に閉じ込められているのかもしれないわね。」
「あぁ。急ぐぞ!」
「えぇ。」
陛下と彼女が立つ地下全体の下は、シースルーになっており、紫色の魔吸水でタンク内を埋め尽くしていた。
彼女と陛下は、即座に中央のタンク内へと繋がる中央管の入り口を開けて、ガーゼア国王の基地へ乗り込んで行った。
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