オカマ上司の恋人【R18】

饕餮

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圭視点

吉祥天女

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 リトアニア語。
 その言語はリトアニアやポーランドの一部で使用されている公用語であり、EU――欧州連合の公用語である。移民を含めれば、北欧やベラルーシ、エストニア、ロシアなどで使わている言語だ。
 ――ちなみに国際連合の公用語は、英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、中国語、アラビア語の六ヵ国である。
 それはともかく。

「保、リトアニア語は?」
「多少は話せるが、せいぜい挨拶程度だ。ビジネスとなるとさっぱりわからん」
「……お前でも苦手なのがあったんだな」
「ヨーロッパ圏を担当してるくせに、どの国の言葉も全く話せないたかしにだけは言われたくはない!」

 在沢室長と長崎部長は同期であるためか、常日頃からこんな感じだった。

「ロシア語でとばかり思ってたから……まさかEUの公用語を使うとは……」
「やっこさんはそっち方面にも進出したいんだろ」
「だよなあ……」

 そんな会話が耳を通り過ぎて行くけれど、私は今、あるものを必死になって探してした。

(うーん……確か、ちょっと前に作ったツールがあったはずなんだけれど……)

 在沢室長や長崎部長、横沢や中山たちの会話を聞きながらUSBが入っているポーチをあさるのだけれど、お目当てのものがなかなか見つからない。

「在沢さん……何やってんだ?」
「USBをあさっています」
「そうじゃなくて……」
「うーん……ないなあ……今刺さってるやつの中かな……?」
「おーい、在沢さぁん……?」

 三島への返事もそこそこに、USBの中身を次々にマウスで開いて行くと、目当てのツールを見つけたのでそのまま文書作成にかかる。
 いきなり高速で文書を作成しはじめた私に周囲は呆気にとられていたけれど、何気なく画面を見ていた在沢室長が驚いた。

「圭!? それ、リトアニア語か!?」
「えっ!?」

 在沢室長の言葉に、横沢と中山が画面を覗く。

「あ! 本当だ!」
「なんでそんなツール持ってんだ?」
「え? これですか? 作りました」
「……は?」

 私の「作りました」発言に、その場にいる全員が固まっている。

「父さ……在沢室長は覚えていませんか? 一ヶ月くらい前だったと思うのですが、母と一緒に勉強していましたよね?」
「ん? ……あれか? 家でリトアニア語の勉強してる時か?」
「そうです。その時、『単語帳代わりのツールがほしいなぁ』って言ったのを覚えていますか? あの時、一緒に聞きながらコレを作っていました」

 その時のことを思い出したのか、「ああ、あれな!」と頷く。

「そう言えば、そういったやつ作るのをよく頼んでたっけな」

 そして再び、在沢室長の言葉に他の者が固まる。

「あー……そう言えば、『娘に翻訳ツール作らせたんだけどさ、崇、試してくれないか?』ってちょくちょく頼んで来てたな……まさか……今も重宝してるあれって……」
「ああ、むすめが作った」

 長崎部長と在沢室長の会話に、「ええっ!?」という声があちこちから上がる。

「長崎部長が秘書要らずなのって……」
「翻訳ツールのお陰だな。ネット上で公開されてるツールとほとんど変わらんから、楽なんだよ。ネットに繋げる時間を考えれば、かなりの時間短縮になる」

 長崎部長の言葉に、企画室メンバーは「ずりぃ……」「俺らもほしい」とぼやく。

「おや、企画室には既に導入してあるはずですが?」

 ちょうど話が聞こえたのか、電話を終えて戻って来た葛西専務の言葉に、企画室メンバーは三度みたび固まる。

「特殊な言語の単語帳的な翻訳ツールがありますよね? あれは全て彼女が作ったものですよ? 中には私が作った物もありますが」
「そんなに簡単にできるものなのか……?」
「できますよ?」

 私がそう答えると、企画室メンバー全員からの「教えてくれ!」という言葉にあっさりと頷き、先に文書を完成させる。フォルダを作って一旦保存をし、文書をプリントアウトをすると一度見直した。

「お待たせ致しました」
「「速っ!」」

 横沢と中山の言葉に、「在沢室長はもっと速いです」と話し、見直したプリントを渡す。

「一応確認はしましたが不備があると困るので、クライアントには不慣れな人が作ったこと、添削できる人が居ないのでそのままであることを必ず伝えたほうがよろしいかと思います」

 そう伝えると中山は「助かった!」と言って必要書類を揃え始める。
 初期化済みの新しいUSBにツールのコピーと文書のフォルダごとUSBに入れ、中山にそれごと渡す。「いいのか?」の問いに「構いません」と答え、他に仕事がないか聞くと別のものを頼まれたので、席に戻ってまた文書を作り始める。

「間に合ったな……帰るか。葛西専務、先日の続きを」
「そうだった。先ほど電話が来まして……」

 長崎部長と葛西専務が話をしながら企画室をあとにする。

「三島、秘書課に戻るぞ。俺の手伝いをしてくれ」
「わかりました。皆さん、申し訳ありませんでした」

 そう言って三島は在沢室長と一緒に出て行った。
 クライアントが来るのを待っている合間の企画室でツールの作り方を説明することになったのだけれど、簡単に説明すると「……こんな単純だったなんて……」と言われ、唖然とされた。

「ただ、あくまでも単語帳的なものです。それ以上のものとなると、さすがにネットを開いたほうが便利ですよ?」
「だが、自分自身で使うとなれば、このやり方で文章そのものを加えて行けば文書も作れる、ってことだよな?」
「おそらくは。やったことはありませんが」
「それさえわかれば、あとは試すだけだから」

 そう言って企画室メンバーは自分の仕事をするべく各自の机に戻ったのを確認したあと、室内のコーヒーが残り少なくなっていたので「少し席を外します」と席を立ち、気分転換がてらコーヒーを淹れに行った。


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