転移先は薬師が少ない世界でした

饕餮

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番外編

眷属たちと上級北ダンジョン 前編

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 今日も今日とて、冬の二週間の休みを利用してダンジョンに来ている。なんと、今日は元ココッコたち眷属と、引率としてロキが一緒に来ているのだ。
 今回は五日間の予定で来ているんだけど、どうして北ダンジョンに来たのかというと、上級西ダンジョンで魚貝類を狩りたかったんだけど、最近は貴族たちや平民にも人気だとかで、冒険者がひしめきあっているのだ。
 だけど、北ダンジョンの最下層までこれる冒険者は限られているし、私たちは攻略しているから一気に行きたい階層にいけるということで、北ダンジョンに来たってわけ。
 まあ、眷属たちのレベル上げも兼ねているので、こっちに来たというのもある。
 特別ダンジョンでもよかったんだけど、あそこも第七階層まで攻略している人も増えてきたからね~。できれば、眷族たちには思う存分暴れてレベル上げしてほしかったのだ。
 眷属たちが終わったら従魔たちとも行く約束をしているから、従魔たちが拗ねるということはない。
 まずは三十階層まで飛ぶ。三十一階層から三十五階層までは洞窟タイプのダンジョンで、主にゴーレムが出る。
 引率にロキがいるとはいえ今回眷属たちだけで来たのは、前回罠にかかったこともあって、できれば誰かにのって移動するためでもあるのだ。解除できるキヨシさんがいないからこその措置だね。
 三十三階層までは罠がないので、地図を見ながら最短距離を歩く。もちろん私はラグナレクを装備しているよ~。
 ゴーレムのような魔法生物すらも、魔力を流しておけば簡単に斬れるからね、ラグナレクだと。さすが外神話オーパーツだよね。
 眷属たちと一緒に戦闘しつつ、下へと下りる階段を目指す。眷属たちのレベルも上がっているからなのか、ロキが満足そうに頷いていた。
 そして階段を見つけると、すぐに下りていく。眷属たちとたまに私も戦わせてもらいつつ、ゴーレムが落とした金属を拾う。金属はライゾウさんとゴルドさんに売るつもりだ。
 そして罠が出始める三十四階層に着くと私はロキに跨り、移動を開始する。戦闘は眷属とロキに任せていて、ドロップ品もロキが回収してくれた。
 そのままの状態で三十五階層のセーフティーエリアまで移動し、お昼にする。休憩を終えるとまたロキに跨り、ゴーレムを倒しながら移動した。そして三十六階層に着く。
 ここからは洞窟タイプのダンジョンで、ゴーレムの他にもホブゴブリンと、ビッグバットという大きなコウモリが出る。三十八階層からはこれらの魔物に加えて、ロックワームというミミズが大きくなったような魔物が追加されるから厄介だ。
 ロックワームとゴーレムは私が担当して、ビッグバットとホブゴブリンは眷属たちが担当することに。ロキはいざというときのための監視です。
 ホブゴブリンは常に五匹の集団で出てくるから、ちょっと厄介なのだ。そしてビッグバットも十匹単位で出るから、これも厄介だしね。
 しかも、ホブゴブリンは冒険者や騎士と同じように連携してくるから、気をつけないといけない。ホブゴブリンたちに交じって二体出たゴーレムをさくっと倒し、眷属たちの戦いを見守る。
 すると、彼らは【火炎魔法】を使って炎を吐いたり、【土魔法】を使って無数の槍を出して串刺しにしたり、【樹木魔法】を使って切り刻んだり、【氷魔法】を使って全身を凍らせたあとでそれを破壊し、粉々にしたりと、自分の得意な魔法を使って倒している。
 おおう……なんという凶悪な攻撃なんだろう! とっても頼もしいね!

《リン、ホブゴブリンが武器を落としたよ!》
《こっちはビッグバットの血がたくさん!》
「ありがとう。怪我はない? 魔力は大丈夫?」
『怪我してないし、魔力もまだ大丈夫!』
「そっか。怪我したらすぐに治して、それでもダメなら私に言うんだよ?」
『はーい!』

 片方の羽を上に上げて、元気に返事をする眷属たち。くぅ~! なんて可愛いんだろう!
 ロキたちの眷属になったとはいえ、もともとは私を主として認めてついてきてくれたココッコたちだ。だからこそいつも私を優先しいてくれるし、なにかあれば報告してくれる……今のように。
 ダンジョンにいるからあからさまに身悶えることはしないけど、できることなら全員を撫で回したい。それは夜やることに決め、四十階層を目指した。
 そしてあっという間に四十階層に着く。
 前回はヴリトラというヘビだったけど、今回はどうかな? 以前来たときはスタンピード直前だったから仕方ないってエアハルトさんもヨシキさんも言っていたけど、どうかな?
 そっと扉を開けるとすぐに閉まって、中からボスが出てきた。ボスはロキよりは小さいけど、それでもそれなりに大きくて翼が生えたトラ。

窮奇きゅうきとは厄介だな>
「へえ……窮奇きゅうきっていうトラなんだ」
<ああ。人食いのトラだから、リンはむやみに近づくなよ?>
「うん」

 なんと、窮奇きゅうきという人食いトラだった!
 ロキにしっかり注意されて頷くと、ラグナレクを構える。すると、窮奇がすぐに咆哮を放つ。
 ロキの咆哮に比べたら怖いと思わなかったのか、眷属たちはすぐに動いて攻撃を始めた。そこにロキが正しい判断をしてそれぞれに指示し、それに従って動く眷属たち。
 自分の攻撃が通らないからなのか、だんだんイライラし始める窮奇に対してロキも眷属たちも余裕で、翼を切り落としたりして飛ぶことさえ許さないみたい。最後は、私を除いた全員で首を攻撃し、見事に斬り落としていた。
 光の粒子となった窮奇を見つめ、ホッと息をはく。凄いなあ、みんな! 感動した!
 ドロップ品は尻尾の先にあったふさふさと翼から落ちたらしい大量の羽、そして毛皮と牙、爪と魔石だ。羽はダウンとフェザーが混じっているし、かなり大量に出たから、布団か枕にしてもいいかも!
 毛皮もかなり大きいし、これは敷物にしようかな。暖炉の前に敷くとあったかいと思うんだよね。猫のように毛並みがめっちゃいいし。
 どうするかはあとで考えるとして、四十階層のボスに窮奇が出たことをエアハルトさんとヨシキさんに報告して、冒険者ギルドに報告したほうがいいかどうか聞こう。それは夜でもいいかな。
 ボス戦が終わったので奥の扉が開き、そのまま下に降りる。四十一階層からは草原が広がっているから、薬草採取ができるのだ。
 前回きたときはビッグシープの色違いやレッドバイソン、キマイラとワイバーンを見たけど、他にもビーン各種がいるみたいで、あちこち歩いているのが見える。
 あのときはモンスターハウスになっていて、どんな魔物がいるのかなんて、目の前にいたのしか確認できなかったからなあ。

「よし。ここならみんな空を自由に飛べるね。まずはセーフティーエリアに向かってから休憩したあとで、自由行動にしようか」
『やったー‼』

 両方の翼を広げて喜ぶ眷属たちに、ロキと顔を見合わせて苦笑する。まあ、今回の目的はそれも兼ねているからいいんだけどね。
 みんなを落ち着かせたあとでセーフティーエリアに向かい、【ハウス】を大きくして小さめの一軒家にする。冒険者が誰もいないし、ロキやみんなのリクエストだからね~。しっかり話を聞きますとも。
 今日はこの階でひと暴れして一泊し、四十二階層を目指す。そこでも採取したあとで四十四階層に飛んで、そこで一泊するのだ。
 休憩したあと、眷属たちが方々に飛んでいく。私はセーフティーエリア周辺で採取をするし、ロキは私の護衛として残ってくれている。もちろん、一緒に採取もしてくれる。
 そうこうするうちにビーン各種が揃った状態で襲われたけど、ロキがさくっと倒してドロップを拾う。まさか、緑のビーンも一緒に出て襲われるとは思わなかった。
 そして今回初めてみた金色のビーンは、なんと大豆油を落とした。しかも、一リットルは入っているくらいの大きさの瓶の状態で。

「お~、大豆油か~。今日の夜は揚げ物ができるかも!」
<なら、もっとビーンを狩るか?>
「お願いしてもいい?」
<承知!>

 頷くないなや、ロキが駆け出していく。私はこのまま採取をすることにして、みんなをのんびりと待つことにした。レッドバイソンとワイバーンのお肉が手に入るかもしれないからね。そのお肉を使って唐揚げにしよう。
 薬草は特別ダンジョンとあまり変わらないし、なぜかレタスやキャベツ、白菜といった野菜も採取できる。どれも料理に使えるからと採取をして、あとで『アーミーズ』にもお裾分けしよう。
 途中でビッグシープの黒と赤、黄色と緑に襲われたけどラグナレクで難なく倒し、ドロップを拾う。ドロップはそれぞれの系統の毛糸が出た。
 赤なら赤だけじゃなくてピンクとかね。グラデーションのような感じでいろんな色の毛糸が出て、思わず笑ってしまった。
 これはユーリアさんにも送ってあげようと思う。

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