転移先は薬師が少ない世界でした

饕餮

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本編 2

なんだかんだと十年ちょっと経ちました

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 エアハルトさんと結婚して十年ちょっと経った。今では四人の子どもに恵まれて、賑やかに過ごしている。
 これまでの日々を簡単に説明すると……

 新婚旅行に行って帰ってきたら体調を崩してしまった。疲れかなあと思ったけど、なにかあると困るからとエアハルトさんと一緒に父の病院に行ったら妊娠が発覚。

「ほ~、初夜で一発か~」
「「……」」
「おめでとう!」
「ねえね、おめでちょ!」
「「ありがとうございます」」

 父にからかわれ、リョウくんと一緒におめでとうと言われて照れる。
 そっか、妊娠か~。

 私は暢気にそんなことを考えていたんだけど、周囲が大変だった。大変というか、過保護と溺愛が凄かったのだ。
 ま、まあそこは医師でもある父にがっつりと叱られたエアハルトさんと従魔たちと眷属たちなので、適度な溺愛&過保護に収まったのは言うまでもない。
 最初の子を妊娠している時に問題が起こったりもしたけど、それ以外は特に大きな問題もなく一年弱を過ごし、長男となるローデリヒを出産。そこから三年おきくらいずつ長女のクリスティン、次男のハーラルト、次女のアンナと次々に産んだのだ。
 次男を妊娠中に講師をしたこともあったなあ……
 ただ、近所の子に比べ、うちの子はなんだか成長が遅いような気がする……と心配していたら、エアハルトさんが教えてくれたんだけど。
 魔神族の成人年齢は、本来百年以上なんだって。特にこの国を含めた周辺国というか、この大陸にある魔神族の国は特に成長が遅くて、成人年齢が二百歳らしい。
 それもあって、近所にいる人族に比べたら子どもたちの成長は遅いけど、魔神族に比べたら早いそうだ。
 それを聞いて安心したのを覚えてる。
 エアハルトさんが「推測だが」と前置きして話してくれたんだけど、エアハルトさんが魔神族だし、私が魔神族と人族のハーフだから、それもあって他の魔神族に比べたら成長は早いけど、人族に比べたら遅いんじゃないかと言っていた。
 これぞ遺伝子の不思議ってやつだよね。

 そんな不安を抱えつつ、前世でも出産・子育てを経験している母やマドカさん、義理の母であるエレーナさんに話を聞いたり、手伝ってもらったりしてここまできた。そこは本当に感謝だよ。

 さて、そんな子どもたちだけど。
 長男が十歳で見た目は六歳ほど。
 長女が七歳で見た目は四歳ほど。
 次男が四歳で見た目は二歳ほど。
 次女が一歳で見た目は赤子。

 まあ、次女は去年生まれたばかりだから、そのままかな? そんな次女も離乳食になって、食べられるものが増えている。
 幸いにして子どもたちには食物アレルギーなどもなく、今のところ風邪をひいたりもせず元気に育っているのが嬉しい。
 私たちのところはこんな感じだけど、同じ時期に結婚した人たちも出産している。もちろん両親にもね。
 弟と妹が生まれてリョウくんは大喜びだし、アレクさんとナディさんのところも二人生まれている。
 同年齢の伯父と叔父、伯母と叔母なんて日本にいたときには考えられない状況だけど、さすがは長命種。平気でこんなことが起こるんだなあ……と遠い目になったのは言うまでもない。
 もちろんヨシキさん率いる『アーミーズ』のほうでも各カップルに一人か二人生まれていて、本当に出産ラッシュだったのだ。『アーミーズ』と『フライハイト』が集まってご飯を食べることもあったけど、大人の人数もさることながら子どもの人数も多い。
 だからお互いが助け合ってこれまでやってこれたことも大きいかな。
 とはいえ、私以外は基本的に冒険者をしているわけで、十人近い赤子を連れてダンジョンなんて潜れるはずもない。どうするかと話し合った結果、店の二階で預かることに。
 とはいえ、二階部分だと階段から落ちても困るし、薬草などが置いてあるから、危険がいっぱい。なので、以前ココッコたちの小屋があったところに小さな家を建てることにした。
 作ったのはミナさんとカヨさん。
 見た目の大きさとしては、日本にもあった六畳くらいのプレハブハウスだから、ココッコたちの小屋よりも小さいのだ。だけどここは異世界、魔法が存在する世界なわけで。
 馬車のように中の空間を広げることで、安心・安全な場所を確保した。中の広さは学校の教室くらいはあるんだから驚くよね。
 そんな場所ができたおかげで、『フライハイト』も『アーミーズ』も安心してダンジョンに潜れるようになったのだ。いわば託児所のようなものだね。
 当然のことながら、子どもたちだけにするなんてことはしない。
 普段は店をやっている私の従魔たちが監視をしつつ、母と交代で様子を見たり、暇を持て余しているご近所のおばさまや子育てが終わったお姉様。あとはたま~にハインツさんやマルクさんが来て、様子を見てくれたりしている。
 というか、ハインツさんもマルクさんも引退したとはいえ貴族だよね!? なんでうちに来るのかな!?
 
「「儂らの孫同様のリンの子なんだから、面倒を見るのは当然じゃ」」

 と、胸を張って言われたときは絶句した。
 確かに可愛がってもらったしお世話にもなったけどさあ……。なんとなくモヤモヤしつつ、ハインツさんとマルクさんがいるときは気持ちが軽くなったし、お世話も楽だったのだからとなんとか自分を納得させたのも懐かしい。
 今ではおじいちゃんたちが来ると子どもたちが喜んでくれるし、従魔たちや眷属たちと一緒に遊んだり言葉や文字の勉強をしたりしているので、正直助かっている。

 そんな感じでこの十年ちょっとを過ごした。

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