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『編み物男子部』?ができるまで。
1 俺の想い人
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ダン!
目の前から大きな音がしたので、机から見上げると見知った顔があった。
懐かしい。
今日は此処、県立高校の入学式。
儀式を終え各自教室に戻り、張り出された席についてから、ホームルームがようやく終わってからのことだった。
「じょうちゃん?」
俺、鳴海翔琉は感極まって、目の前にいる男に昔の呼び名が口から出てしまっていた。
「は?何言ってんだ?な・る・み」
彼の顔がひきつる。眉間がピクピクしてるのがわかって恐ろしくなった。
「ゴメン……馴れ馴れしかったね。神崎川くん。こうやって会うのは久しぶりだね」
声がぎこちなくなる。
こうやって彼と話すのは小学六年生以来だ。
『じょうちゃん』『かけるくん』……なんて、呼びあって遊んでたのが嘘みたいだ。
「どうしたの?俺に何か用?」
机を叩いたのは俺に用があったんだよね?でも、いくら力が強いからって……そんなに強く叩かなくても。その音でどうやら注目を浴びたようだ。
皆の視線が痛いよ。なんか、クラスで突然注目されて心苦しい。
「中学のダチ皆別の高校行ったからさぁ。クラスで知ってるのん、鳴海だけだし。これから仲良くしようぜ」
嬉しいんだけど、はっきり言って全然嬉しくない。
昔のように仲良く出来るというのは幸運が舞い降りたようなものだが、やっぱり全然嬉しくない。
「お手柔らかに……お願いしたいです」
言葉が小さくなる。
何やってんだ?絶好の機会と思えないのか?
振られるの、覚悟してるのにさぁ、真横にずっといるのか?この一年。
俺にそんな苦痛を与えるのか?
頭が軽くパニクってる。
同じ学校に合格できた。
それさえ俺にとっては奇跡に近い努力の賜物だったのに……。
同じクラスになって、一人喜びを噛み締めていたのに……。
中学の時のように、挨拶を交わす程度のお付き合いだろうなと思っていたのに……。
小学生の頃に戻れないのに、仲良く昔のように接することが出来るのか?
「何他人行儀なこと言ってんだ?俺と仲良くしたくないってのか?ええ?」
「そんな訳ないから、全然。言葉怖いから。はい、宜しくお願い申し上げます」
「わかればいいんだ」
言葉はぞんざいなのに、にかっとした笑顔で俺を迎えてくれる。
この破壊力、俺には眩しすぎるよ……じょうちゃん。
神崎川城一。
中学時に出来た通り名が『皇帝』
そう呼ばれ出したのは、中学一年の夏休みが過ぎた頃だった。
勉強も運動も誰にも一位を譲らなかった絶対的王者として君臨してた男。
誰しもが認める男前の面をして女性のみならず男性からの支持も多かった。
それなのに嫌みがない。
本当に『皇帝』そのものだった。
でも、『皇帝』だから好きになったんじゃないんだ。
俺の想い人が『皇帝』と呼ばれるようになってしまっただけなんだ。
俺の想い人神崎川城一は、入学早々俺に爆弾を投げつけてきたのであった。
目の前から大きな音がしたので、机から見上げると見知った顔があった。
懐かしい。
今日は此処、県立高校の入学式。
儀式を終え各自教室に戻り、張り出された席についてから、ホームルームがようやく終わってからのことだった。
「じょうちゃん?」
俺、鳴海翔琉は感極まって、目の前にいる男に昔の呼び名が口から出てしまっていた。
「は?何言ってんだ?な・る・み」
彼の顔がひきつる。眉間がピクピクしてるのがわかって恐ろしくなった。
「ゴメン……馴れ馴れしかったね。神崎川くん。こうやって会うのは久しぶりだね」
声がぎこちなくなる。
こうやって彼と話すのは小学六年生以来だ。
『じょうちゃん』『かけるくん』……なんて、呼びあって遊んでたのが嘘みたいだ。
「どうしたの?俺に何か用?」
机を叩いたのは俺に用があったんだよね?でも、いくら力が強いからって……そんなに強く叩かなくても。その音でどうやら注目を浴びたようだ。
皆の視線が痛いよ。なんか、クラスで突然注目されて心苦しい。
「中学のダチ皆別の高校行ったからさぁ。クラスで知ってるのん、鳴海だけだし。これから仲良くしようぜ」
嬉しいんだけど、はっきり言って全然嬉しくない。
昔のように仲良く出来るというのは幸運が舞い降りたようなものだが、やっぱり全然嬉しくない。
「お手柔らかに……お願いしたいです」
言葉が小さくなる。
何やってんだ?絶好の機会と思えないのか?
振られるの、覚悟してるのにさぁ、真横にずっといるのか?この一年。
俺にそんな苦痛を与えるのか?
頭が軽くパニクってる。
同じ学校に合格できた。
それさえ俺にとっては奇跡に近い努力の賜物だったのに……。
同じクラスになって、一人喜びを噛み締めていたのに……。
中学の時のように、挨拶を交わす程度のお付き合いだろうなと思っていたのに……。
小学生の頃に戻れないのに、仲良く昔のように接することが出来るのか?
「何他人行儀なこと言ってんだ?俺と仲良くしたくないってのか?ええ?」
「そんな訳ないから、全然。言葉怖いから。はい、宜しくお願い申し上げます」
「わかればいいんだ」
言葉はぞんざいなのに、にかっとした笑顔で俺を迎えてくれる。
この破壊力、俺には眩しすぎるよ……じょうちゃん。
神崎川城一。
中学時に出来た通り名が『皇帝』
そう呼ばれ出したのは、中学一年の夏休みが過ぎた頃だった。
勉強も運動も誰にも一位を譲らなかった絶対的王者として君臨してた男。
誰しもが認める男前の面をして女性のみならず男性からの支持も多かった。
それなのに嫌みがない。
本当に『皇帝』そのものだった。
でも、『皇帝』だから好きになったんじゃないんだ。
俺の想い人が『皇帝』と呼ばれるようになってしまっただけなんだ。
俺の想い人神崎川城一は、入学早々俺に爆弾を投げつけてきたのであった。
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