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『編み物男子部』?ができるまで。
48 決戦は金曜日? 1 ☆朔田side1
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朔田side
今週火曜日から鳴海君は始業時間ギリギリに登校している。
それって僕からしたら変なんだけど。
理由はたぶん……噂のせい。
噂は水曜日から始まったんだけど。
火曜日からギリギリ登校っていうことはきっと月曜日には何か事件があったんだと。
僕は今日も鳴海君が教室に入る前から守ることにしている。
だから登校五分前には渡り廊下に出て鳴海君が来るのを待っている。
僕が皇帝様の代わりに鳴海君を守ろうと誓ったんだ。
鳴海君が普通に居てくれないと僕は皇帝様の傍に居られなくなるから。
僕にとって鳴海くんは皇帝様との繋がりだから。
渡り廊下で校門先を眺めていると……皇帝様が登校するのが見えた。
え……。
うそ……。
やっと……会えた……。
嬉しさとどうしようもない苦しみがごちゃ混ぜになった感情を制御出来ないまま……
僕は数分間、渡り廊下で立ち尽くしたままだった。
鳴海君を待たずにふらふらっと引かれるように教室に入ると、皇帝様がキョロキョロと教室を見渡しているところだった。
きっと……鳴海君を探しているんだ。
そう思った。
僕は皇帝様のところに行って叫んだ。
「こ……皇帝様!遅すぎます!遅すぎます!……」
感情が昂って皇帝様を叩きまくる。
全然力が入ってないけど。でも、叩かずにはいられなかった。
だって……本当に遅すぎたんだもん。
涙が零れる。
もう、鳴海君の両端に皇帝様と僕とのまったりとしたあの時間は……戻らない。
きっと、きっと戻らない。
そう思うと、涙が止まらなかった。
「どうしたんですか?……どうして……。もう……。本当に……。もう……」
言葉にならない。
でも、あの噂は僕の口から……言えない。
皇帝様の顔を見上げながらどうしようもない気持ちを押さえることが出来なかった。
皇帝様の手が僕の頭を撫でてくれる。
「すまんな……」
と一言。
僕は嬉しさよりも悔しさでいっぱいだった。
いつもなら嬉しくて笑顔で皇帝様を見つめ返してる筈なのに……!
鳴海君が教室に入ってきた。
しまった!
まだ皇帝様は何も知らない。
クラスメイトから好奇の目から言葉から守らなきゃ!
僕が守らなきゃ……誰が鳴海君を守れる?
僕しかいないじゃないか!
何がなんでも守るんだ。
皇帝様のためにも。鳴海君を……!
僕は皇帝様が鳴海君の傍に行くのを両手一杯広げて全力で阻止した。
「近寄らないで!そっとしてあげて!」
僕にはそれしか言えない。
真実は……周囲から聞かされるのも違うと思うけど、僕からも違うと思うんだ。
鳴海君が自分から真実を皇帝様に言うしかないんだ。
でも、時間……必要だと思うから。
多少の猶予は欲しいと思うから。
だから僕は皇帝様からも鳴海君を守るよ。
鳴海君を守ることは、皇帝様の傍に居られることに繋がるから。
鳴海君を安心させるために抱きつく。
僕は小さいからギュッて抱きつかなきゃ、僕の意図は通じない。
「鳴海君、大丈夫?無理しなくていいから……ね?僕たちがついてるから……」
僕だけじゃない。
鳴海君を守りたいと思ってるのは……。
「さくた……おい!」
皇帝様の言葉が聞こえる。
それから僕たち……鳴海君に抱きつく僕の姿をみて野次が飛ぶ。
「うわぁー浮気だよ」
「やばいんじゃね?」
「キャー!朔田が鳴海をとるってマジ?」
「キャプテンにいいつけるぞ!朔田ぁ」
「鳴海はもうお手付きされてるんだからてめぇのもんじゃねーぞ!」
「朔田、勇気あるー!」
「鳴海君も貞操はちゃんと守らなきゃー!」
聞こえない、聞こえない!
聞かせたくない!聞かせたくない!
皇帝様にも。
鳴海君にも……。
野次は毎日のことだ。
今日で三日目。
その度に僕は鳴海君に抱きついて、一生懸命「僕がいるよ」って全身で表現してる。
「朔田君、ありがとう。心配しなくても平気だから……ね?」
本当は平気じゃないくせに……。
僕を安心させる言葉だってわかってるから。
「でも……でも……」
不安で仕方がないんだ。
「やっぱり朔田君はやさしいね!」
そう言って抱き締め返してくれる鳴海君。
優しいのは鳴海君の方だ。
僕は邪な理由で鳴海君を守ってるだけなんだから!
「見つかったらやべーって。朔田、離れろって。まだこっちに来たことがないからって……や、やべーってマジ!朔田ぁあ!!」
今週火曜日から鳴海君は始業時間ギリギリに登校している。
それって僕からしたら変なんだけど。
理由はたぶん……噂のせい。
噂は水曜日から始まったんだけど。
火曜日からギリギリ登校っていうことはきっと月曜日には何か事件があったんだと。
僕は今日も鳴海君が教室に入る前から守ることにしている。
だから登校五分前には渡り廊下に出て鳴海君が来るのを待っている。
僕が皇帝様の代わりに鳴海君を守ろうと誓ったんだ。
鳴海君が普通に居てくれないと僕は皇帝様の傍に居られなくなるから。
僕にとって鳴海くんは皇帝様との繋がりだから。
渡り廊下で校門先を眺めていると……皇帝様が登校するのが見えた。
え……。
うそ……。
やっと……会えた……。
嬉しさとどうしようもない苦しみがごちゃ混ぜになった感情を制御出来ないまま……
僕は数分間、渡り廊下で立ち尽くしたままだった。
鳴海君を待たずにふらふらっと引かれるように教室に入ると、皇帝様がキョロキョロと教室を見渡しているところだった。
きっと……鳴海君を探しているんだ。
そう思った。
僕は皇帝様のところに行って叫んだ。
「こ……皇帝様!遅すぎます!遅すぎます!……」
感情が昂って皇帝様を叩きまくる。
全然力が入ってないけど。でも、叩かずにはいられなかった。
だって……本当に遅すぎたんだもん。
涙が零れる。
もう、鳴海君の両端に皇帝様と僕とのまったりとしたあの時間は……戻らない。
きっと、きっと戻らない。
そう思うと、涙が止まらなかった。
「どうしたんですか?……どうして……。もう……。本当に……。もう……」
言葉にならない。
でも、あの噂は僕の口から……言えない。
皇帝様の顔を見上げながらどうしようもない気持ちを押さえることが出来なかった。
皇帝様の手が僕の頭を撫でてくれる。
「すまんな……」
と一言。
僕は嬉しさよりも悔しさでいっぱいだった。
いつもなら嬉しくて笑顔で皇帝様を見つめ返してる筈なのに……!
鳴海君が教室に入ってきた。
しまった!
まだ皇帝様は何も知らない。
クラスメイトから好奇の目から言葉から守らなきゃ!
僕が守らなきゃ……誰が鳴海君を守れる?
僕しかいないじゃないか!
何がなんでも守るんだ。
皇帝様のためにも。鳴海君を……!
僕は皇帝様が鳴海君の傍に行くのを両手一杯広げて全力で阻止した。
「近寄らないで!そっとしてあげて!」
僕にはそれしか言えない。
真実は……周囲から聞かされるのも違うと思うけど、僕からも違うと思うんだ。
鳴海君が自分から真実を皇帝様に言うしかないんだ。
でも、時間……必要だと思うから。
多少の猶予は欲しいと思うから。
だから僕は皇帝様からも鳴海君を守るよ。
鳴海君を守ることは、皇帝様の傍に居られることに繋がるから。
鳴海君を安心させるために抱きつく。
僕は小さいからギュッて抱きつかなきゃ、僕の意図は通じない。
「鳴海君、大丈夫?無理しなくていいから……ね?僕たちがついてるから……」
僕だけじゃない。
鳴海君を守りたいと思ってるのは……。
「さくた……おい!」
皇帝様の言葉が聞こえる。
それから僕たち……鳴海君に抱きつく僕の姿をみて野次が飛ぶ。
「うわぁー浮気だよ」
「やばいんじゃね?」
「キャー!朔田が鳴海をとるってマジ?」
「キャプテンにいいつけるぞ!朔田ぁ」
「鳴海はもうお手付きされてるんだからてめぇのもんじゃねーぞ!」
「朔田、勇気あるー!」
「鳴海君も貞操はちゃんと守らなきゃー!」
聞こえない、聞こえない!
聞かせたくない!聞かせたくない!
皇帝様にも。
鳴海君にも……。
野次は毎日のことだ。
今日で三日目。
その度に僕は鳴海君に抱きついて、一生懸命「僕がいるよ」って全身で表現してる。
「朔田君、ありがとう。心配しなくても平気だから……ね?」
本当は平気じゃないくせに……。
僕を安心させる言葉だってわかってるから。
「でも……でも……」
不安で仕方がないんだ。
「やっぱり朔田君はやさしいね!」
そう言って抱き締め返してくれる鳴海君。
優しいのは鳴海君の方だ。
僕は邪な理由で鳴海君を守ってるだけなんだから!
「見つかったらやべーって。朔田、離れろって。まだこっちに来たことがないからって……や、やべーってマジ!朔田ぁあ!!」
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