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第二章
掌握する者
しおりを挟む──…
その頃、王宮の北に構える神殿で議会が開かれていた。
本来ここは太陽神を祭る場所であり、水の社と並ぶ聖域である。
しかし侍従長の権限で、六年前に王宮からここへ議会の場所は移された。
コリント式の二重列柱廊が側廊と交差する場所で、半円状に並べられた椅子に王はおらず、侍従達だけが座っていた。
彼等は何度めかわからない問答を今という今も繰り返している。先日の議会でも、またその前も、議題は変わらない。
「何故帝国の要求を退ける?今すぐ国境の兵を引き上げ、壊れたカナートの修復を許可すればよかろう!」
左に座る初老の男が唱える。
すると、ちょうど彼と対角線上に座る男が嘲笑とともに首をふった。
「まだそんな事を仰っているのですか?何度もお伝えしたとおり、これは帝国の策略です。もし我が国に奴らの侵入を許そうものなら、一気に攻め込まれ、カナートを横どられてしまいます」
それはふた月ほど前にさかのぼる。
キサラジャから隣の帝国へ水を運ぶカナート(地下用水路)が何者かの手で破壊されたのだ。
頑丈な用水路をどのように破壊したのか、その方法はわかっていない。ただ瓦礫が積み上がった現場には、何か嗅いだことのない異様な臭いが立ち籠めていたらしい。
当然、帝国は修復を求めた。
だがそれを拒み、国境に兵を置いて帝国の視察を妨害するよう指示したのが、キサラジャの為政者であるラティーク・タラン・ウル ヴェジール(侍従長)だ。
「これが帝国の策略だと?タラン殿はまだ、カナートを破壊したのが帝国だと仰るのか?何の根拠もありますまいに!」
「落ち着かれて下さい。先のクーデターで新しい皇帝が即位して以来、帝国の態度はますます高圧的になっています。ですから、奴らの繁栄は我らキサラジャの水の恩恵にすぎないのだと…思い知らせてやる良い機会なのですよ」
「……!」
タラン侍従長は、貴族の中でも数少ない公爵家のひとつ──ラティーク家の当主として、もう十年もの間この議会を掌握している。にも関わらず歳は三十五と、長年侍従長を務めているにしては異例の若さであった。
いまや彼に反論できるのは、同じく公爵の爵位を持つサルジェ家くらいだ。
「その仰りよう──…っ、まさか、この騒ぎはタラン殿の仕業ではありますまいな…!?」
「…ふふ」
「…っ…答えたまえ!」
「残念ながら私は無関係で御座います。サルジェ家当主ともあろう御方が、そのような無礼な詮索はおやめください」
「く…っ」
「では審議に入る──。大人しく帝国にカナートを渡してやるべきと言う者は、挙手を」
黄褐色の肌に、赤みがかった茶色の艶髪。
端正な面に半月の顎髭を垂らし、品よく笑みを見せたタランは、他の侍従達をぐるりと見回した。
タランと目が合った者は、ニヤリと口角を上げるか、静かに目を伏せるか…
どちらにせよ、手を挙げる者はいない。
「‥‥‥‥ッッ」
「では異論は無いですね?反対多数によりこの議題はここまでと…──」
「このままでは国は崩壊するぞ!」
「……ハァ」
この場にいるのは、ひとりを除く全員、タランの息のかかった侍従なのだ。
たったひとりの主張など、犬の遠吠えと変わりない。
「この騒ぎで、隊商も旅人も我が国を避けて通るようになった。街道沿いで商う平民達は稼ぎを失っている!帝国からの物資も無いなかっ…民への支給をいつまで止めておけるとお考えか?」
「くだらない質問ですね。先に折れたほうが負けなのですから、我ら祖国のため、多少の犠牲はやむなし…。だいたいこの程度の危機、民が自らの力で乗り切らずしてどうしましょう」
「なんたる言い草っ、国に遣える侍従長としての誇りはあるのか?」
「国を思えばこそ、ですな」
タランは涼しい顔で、遠吠えを退けた。
「では次。国境に配置した騎兵師団からの報告によると──…」
彼にとってこのように議会を開く意味など、合って無いようなものであった──。
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