謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く 【R18】

弓月

文字の大きさ
16 / 143
第二章

籠の鳥の境遇

しおりを挟む

 オメルはシアンとように、《 クルバン 》の慣習に従って近衛隊に入った賤人だった。

 貧しい生活を送る中で、ある日村で出会った貴族の男に推薦状を渡され、大喜びで近衛隊にはいったそうだ。どんな扱いを受けるとも知らず。

 誰も尋ねていないのに、父親と二人暮らしだったことも勝手に説明された。

「母ちゃんはオレが小さい頃に、ガラの悪い商人達に襲われて……」

「……」

 驚くまでもなく、そんなところだろう。賤人センニンの家族の事情なんて聞くだけムダだ。

 何故、彼がこう自分の境遇をペラペラ話したがるのか…。対等な立場で話せる相手が久しぶりなのだ。

 それが嬉しくて堪らないのだろう。

 オメルはあっという間にシアンに気を許してしまった。

「オレの母ちゃん、すごくキレイだったんだぞ?あ、シアンには負けるかもだけどっ…」

「それはどうも。それで、君はいつ近衛隊に入ったの?」

「十四歳だったから…二年くらい前だな。そうそう、オレはいま十六歳な!」

「それなりに先輩だね。歳は僕が上だけれど」

 二人は今、食堂の脇にあるベッドに腰掛けて話していた。もとは仮眠用のベッドだ。
 
 濡らした手拭いで身体を洗うシアンの背後で、おせっかいなオメルが背中を拭いている。

「シアンは何歳?」

「二十歳だよ」

「え、意外と若いね」

「……老けて見えるって?」

「い、いやいやいやいやそんな事ないよっ…雰囲気が…大人っぽいから」

 焦っているのが丸わかりだ。

 背中をこする力が無意識に強くなって、少し痛い。

 オメルのほうこそ十六歳には見えなかった。もっと幼く見える。

 生まれつきの目鼻立ちもあるが、痩せた身体、低い背丈、それらが彼を小さく見せていた。

「大人っぽいしっ…なんか品があるしっ…」

「…ッ…わかったよありがとう。あと背中も拭き終わって大丈夫」

「あ、うん、わかった」

 これ以上擦られると背中の皮を持って行かれそうなので、シアンは身体を拭くのを切り上げて立ち上がった。

 そういえばと机に置き去りにしていた荷物を思い出し取りに行く。

 その間にも、ベッドに座ってあたふたしているオメルがいた。仔犬か。

 あの真っ直ぐな人懐こさも彼を幼く見せてしまう原因だ。

 シアンは自分に注がれる視線を感じたまま荷物を取った。

 支給された隊服。

「……」

「…!シアンってさ、キレイな身体してるよねっ」

 隊服を手にシアンが押し黙っている最中も、まだオメルは喋っていた。先ほどのヘマを挽回バンカイしたいらしい。

「顔だけじゃなくて身体もキレイなんだな。痩せてるのはオレと一緒だけど─…でもぜんぜん違う」

「オメル……」

「背が高くて足長くて、司令部に置いてある彫刻みたいだ。…ん?ん~?いや違うな…あんなゴツゴツしてないか」

「…ハァ」

「そうだ!貴族の奴らが壁に飾ってる絵画から出てきたみたいだ!たとえばーたとえば、あれ、太陽神のとなりにいつも女神さまがいるだろ?その──」

「オメル、黙るんだ」

「ッ…?」


 突然、シアンの声色が厳しくなった。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

後輩が二人がかりで、俺をどんどん責めてくるー快楽地獄だー

天知 カナイ
BL
イケメン後輩二人があやしく先輩に迫って、おいしくいただいちゃう話です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...