謀殺された王子は 復讐者として淫らに返り咲く 【R18】

弓月

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第十四章

焦がれる身体

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 ドサリと、とうとう男の身体が力尽きた。

「はぁっ……はぁっ……!!」

 最後の力をふるい のぼりついた場所で腰を下ろす。

 顎を上げて見上げればそこは…隠し階段の入口だ。

「シアン……、外、だ」

 そこは廃墟となった神殿跡地。

 バヤジットが地下に侵入した入口へ、彼等は無事に戻ってきたのだ。


 黎明れいめいを告げようとする外の空は、地下の暗闇に比べればずっと明るい。

 けれどいつものように砂に覆われたこの季節。気温は低く、弱った人間にはかなり厳しい環境だ。

 バヤジットは動く片手で隊服の留め金をはずす。

 肌着のみとなった彼は、脱いだ上衣をシアンに被せた。

「シアン…!…おい」

「…ハァ…ハァ」

「…っ…目を閉じるな…眠るな、まだ…!」

 大きな隊服で裸のシアンを包んでやったが、彼の身体は細かい痙攣をおこしている。

「寒いのか…!?」

「ハァっ‥‥ハァ、ハァ」

「…っ」

 冷静にシアンの容態を見たバヤジットは、苦しそうに息を吐き出す様子に動揺した。

 寒いのかと思い抱き寄せた身体は……

 むしろ、かなり熱くなっている。

“ 酷い熱だ……! ”

 顔は赤く、額も熱い。

「しっかりしろ!」

「ァ‥‥ッ」

「っ…すまん、傷に触ったなっ…」

 とくに、鞭打たれミミズ腫れとった傷口が酷かった。背中全体で炎症をおこしており、痛みも強いに違いないのだ。

「‥ハァッ…ぅ、ぁ‥‥!」

 バヤジットの腕の中で、シアンがぎゅっと身体を丸める。

 痙攣を止められず…ガチガチと歯音をたてながら眉を寄せて苦しむ顔は、見る者の胸をも苦しめた。バヤジットが限界をこえてまた立ち上がろうとした時──

「待ってろ、すぐに医官にみせてやる…」

「‥ッ‥ハァ‥、───‥っ」

「……!?」

 ふいに顔をあげたシアンが

・・・チュッ

 切れて熱を帯びた…唇を、バヤジットの喉元に押し付けた。


「シアンっ?」

「‥‥ッ」

 バヤジットの肩に片手を置き、ぐっと押す。

 シアンを胸に抱いていた彼の身体が仰向けに倒される。

 何も言わないシアンはまた、バヤジットの肩に噛み付くようなキスをした。

‥ヂュッ

「く…!?」

 突然のことで男はろくに反応できない。

 その間にもシアンの手が……肌着の内側に滑り込む。

「…っ…シアン、待てっ…俺だ」

「‥ハァ‥ハァ…!」

「俺はバヤジットだ!…っ…冷静になれ、落ち着け!」

 きっと熱で意識が朦朧もうろうとし、混乱している…!

 そう思ったバヤジットがやっと動き出し、シアンの両の肩を掴んで引き剥がした。

 慌てて顔をのぞきこみ、彼と目高をそろえる。

「わかるか?俺だ」

「‥‥‥?」

「そんなことしなくていいっ…お前を牢にいれた奴はもういない!もう……大丈夫だ」

「──…」

 バヤジットと目を合わせたシアンは無言だった。

 両肩を掴まれたシアンは、ゆらりと首を揺らして……そして傾ける。

 おぼろな瞳が半分ほど現れて、そして長いまつ毛に遮られて見えなくなるのを二度、三度と続ける。

 バヤジットに諭されて少し落ち着いたのか、ゆっくりと、相手の肌着から手を抜いた。


“ …っ…よかった…呼吸も少しはマシになったか? ”


「シアン……?」

「……ハァ‥……ハァ‥……ハァ……」

「………!」


 開いた唇から重たい息を吐き出す。


 その弱った吐息ではもはや微かにしか揺れない生成きなり色の乱れ髪を、上部の出口から吹き込む冷たい夜風が巻き上げた。


 それと一緒に、バヤジットの鼻と口元を覆っていたターバンが…パサりとほどけて落ちる。


 息を呑んだバヤジットへ、首を傾いで虚ろに見つめたシアンの顔が──まっすぐと近付いた。



「…ハ…ッ、ハァ、‥‥!!」



チュ‥‥ッ



「…ハァっ……ァ…‥!
 …すま ない、‥…バヤジット……!」


「…ん…ッ…」


「…‥寒い、のは──…‥苦手なのだ…‥」



 シアンはバヤジットの唇にすがりついた。

 震えながらも強引に吸い付き……吐息のあわいで、男にびた。





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