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第十四章
焦がれる身体
しおりを挟むドサリと、とうとう男の身体が力尽きた。
「はぁっ……はぁっ……!!」
最後の力をふるい のぼりついた場所で腰を下ろす。
顎を上げて見上げればそこは…隠し階段の入口だ。
「シアン……、外、だ」
そこは廃墟となった神殿跡地。
バヤジットが地下に侵入した入口へ、彼等は無事に戻ってきたのだ。
黎明を告げようとする外の空は、地下の暗闇に比べればずっと明るい。
けれどいつものように砂に覆われたこの季節。気温は低く、弱った人間にはかなり厳しい環境だ。
バヤジットは動く片手で隊服の留め金をはずす。
肌着のみとなった彼は、脱いだ上衣をシアンに被せた。
「シアン…!…おい」
「…ハァ…ハァ」
「…っ…目を閉じるな…眠るな、まだ…!」
大きな隊服で裸のシアンを包んでやったが、彼の身体は細かい痙攣をおこしている。
「寒いのか…!?」
「ハァっ‥‥ハァ、ハァ」
「…っ」
冷静にシアンの容態を見たバヤジットは、苦しそうに息を吐き出す様子に動揺した。
寒いのかと思い抱き寄せた身体は……
むしろ、かなり熱くなっている。
“ 酷い熱だ……! ”
顔は赤く、額も熱い。
「しっかりしろ!」
「ァ‥‥ッ」
「っ…すまん、傷に触ったなっ…」
とくに、鞭打たれミミズ腫れとった傷口が酷かった。背中全体で炎症をおこしており、痛みも強いに違いないのだ。
「‥ハァッ…ぅ、ぁ‥‥!」
バヤジットの腕の中で、シアンがぎゅっと身体を丸める。
痙攣を止められず…ガチガチと歯音をたてながら眉を寄せて苦しむ顔は、見る者の胸をも苦しめた。バヤジットが限界をこえてまた立ち上がろうとした時──
「待ってろ、すぐに医官にみせてやる…」
「‥ッ‥ハァ‥、───‥っ」
「……!?」
ふいに顔をあげたシアンが
・・・チュッ
切れて熱を帯びた…唇を、バヤジットの喉元に押し付けた。
「シアンっ?」
「‥‥ッ」
バヤジットの肩に片手を置き、ぐっと押す。
シアンを胸に抱いていた彼の身体が仰向けに倒される。
何も言わないシアンはまた、バヤジットの肩に噛み付くようなキスをした。
‥ヂュッ
「く…!?」
突然のことで男はろくに反応できない。
その間にもシアンの手が……肌着の内側に滑り込む。
「…っ…シアン、待てっ…俺だ」
「‥ハァ‥ハァ…!」
「俺はバヤジットだ!…っ…冷静になれ、落ち着け!」
きっと熱で意識が朦朧とし、混乱している…!
そう思ったバヤジットがやっと動き出し、シアンの両の肩を掴んで引き剥がした。
慌てて顔をのぞきこみ、彼と目高をそろえる。
「わかるか?俺だ」
「‥‥‥?」
「そんなことしなくていいっ…お前を牢にいれた奴はもういない!もう……大丈夫だ」
「──…」
バヤジットと目を合わせたシアンは無言だった。
両肩を掴まれたシアンは、ゆらりと首を揺らして……そして傾ける。
おぼろな瞳が半分ほど現れて、そして長いまつ毛に遮られて見えなくなるのを二度、三度と続ける。
バヤジットに諭されて少し落ち着いたのか、ゆっくりと、相手の肌着から手を抜いた。
“ …っ…よかった…呼吸も少しはマシになったか? ”
「シアン……?」
「……ハァ‥……ハァ‥……ハァ……」
「………!」
開いた唇から重たい息を吐き出す。
その弱った吐息ではもはや微かにしか揺れない生成色の乱れ髪を、上部の出口から吹き込む冷たい夜風が巻き上げた。
それと一緒に、バヤジットの鼻と口元を覆っていたターバンが…パサりとほどけて落ちる。
息を呑んだバヤジットへ、首を傾いで虚ろに見つめたシアンの顔が──まっすぐと近付いた。
「…ハ…ッ、ハァ、‥‥!!」
チュ‥‥ッ
「…ハァっ……ァ…‥!
…すま ない、‥…バヤジット……!」
「…ん…ッ…」
「…‥寒い、のは──…‥苦手なのだ…‥」
シアンはバヤジットの唇にすがりついた。
震えながらも強引に吸い付き……吐息のあわいで、男に侘びた。
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