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第十五章
復讐者の記録──肆
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──……
………
『 何処まで行くのですか 』
客や引き子で賑わう夜の娼館通り。その裏路地をいくらか歩き、喧騒を離れた街の外れに着いた頃…後をつけていた青年が、前をゆく男を引き止めた。
ぴたりと、ふたりぶんの足が止まる。
『 男娼の身で逃げようものなら…たとえ貴方といえど、裏切り者として追手に殺されますよ 』
『 …… 』
呼び止められた男は、街人にふんする為の帽子を脱ぎさった。
いつも細い鞭のように揺れていた白い長髪は…首の下で短く切られていた。
『 ……どうしたシアン、怖い夢でも見たか 』
『 …… 』
『 添い寝でもしてやりたいが…悪いな、今の俺は忙しいんだよ。また明日にでも可愛がってやる 』
『 ……明日? 』
ゆらりと振り返った男と目が合うと、背後の青年は冷めた声で問い直す。
『 明日戻ってくる気があるとは思えませんね。
貴方は何処かへ消えるつもりでしょう?ヤン 』
問われた男がニヤリと笑うものだから、青年は面倒くさそうに息をついた。
『 気にしてくれるわけだ? 』
『 気にされたくないのなら、こんなものっ…部屋に残さないでください、気味が悪い 』
ヤンにむけて青年が放ったのは、切り落とされた彼の三つ編みだった。
投げられた髪が彼の足元に落ちて砂が舞う。
ヤンは不服な顔で声をおどけさせた。
『 おい捨てるなよ…丁重に扱え。こういう未練がましい遊女みたいな形見、一度してみたかったんだ。なかなかいいだろう? 』
『 気 味 が 悪 い、と言っています 』
『 呪われそうで? 』
『 そのうち動いて首を絞め殺されそうで 』
『 ハハッ、そりゃあ実に重たい愛だ、羨ましいね 』
『 …答えるのをはぐらかしていませんか? 』
『 ──… 』
真剣な様子の青年に対して、ヤンはふざけて笑うのをやめた。代わりに浮かべた微笑みは、二十三という年齢特有の色気をダダ漏らせて、青年へと向けられた。
『 教えてほしければ……着いてこい。ここじゃあ話せない 』
試す言葉を言われて、青年は眉をひそめる。
かつて少年だった彼も、今では齢十七のギョルグの男娼。その儚い美貌と床での性技は客達の間ですっかり広まり、この街では有名だ。
人目がある場所では騒ぎになる…
彼は仕方なく、ヤンについて歩いた。
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