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MISSION 変更
しおりを挟むそして数秒後
ミレイは恐る恐る……目を開ける。
“ あ… ”
彼の手首に…リングがはまってる。
それを確認したミレイは、繋がった右手を上げたまま、へなへなとその場に腰を下ろした。
ミッション成功だ!
「スー…スー…」
「あれ、でもこれって……」
「スー…スー…」
「この後どうすれば…っ」
「スー……」
「う、うーん反応ないな…っ。やっぱり片手じゃ駄目なの……!?」
-----ピピ、ピ
-----1時間経過
「……っ」
----- ピーー!
「──…ッ わ!」
突然、耳の無線が今までにない音で信号を送ってきた。
---- 学生ID 1K1036
ミッション成功を確認したぞ
「ビックリした…!!」
無線から流れてきた声──それは無機質な電子音から指導官の声に変わっていた。
----- 君が一番乗りだ おめでとう
指導官がミッション成功を告げてくれる。
手錠をはめてからの沈黙のせいで不安に包まれていたミレイは、それを聞いてやっと安心できた。
極度のドキドキから解放されて、ほっと息をつく。
「はぁ、無事に終わった……」
「──…その五月蝿い声」
「……ぇ」
「さっさと黙らせろ……。不愉快だ」
指導官の声に気をとられていてせいで、いつの間にか隣の寝息が止まっていた事に、ミレイは気付かなかったようだ。
「カルロさん…っ」
「…ッ、何してんの、あんた」
目を覚ましたカルロが、ベンチに座ったまま彼女を一瞥する。
「無線の声……聞こえてるんですか?」
「聞こえる」
カルロは地獄耳だ。
「でも寝ていたはずじゃあ…っ」
「……確かに寝ていたが……だから、何?寝ていようが周囲の音は認識できる」
「??」
そんな事できるわけない。
だがカルロは、それを太陽が東から昇る事実と同じだとでもいうように、当然だと言ってのける。
「──…で、これは?」
ジャラ...
カルロは左手を持ち上げて、そこにはめられた白い手錠について彼女に問うた。
ミレイは顔を真っ赤にして、慌てて頭を下げる。
「これは指導官からの指示で、今おこなっている実戦授業のいっかんで……!!」
「……」
「でも!ミッションは成功しましたからすぐに外せます。銀バッジを持っている生徒に手錠をかけるのがミッション内容だったんですが」
「どうでもいいけど。早く外しなよ」
「…ッ もちろんです!」
言い分け気味な説明を展開しようとすれば、カルロに話を折られる。
今すぐ外さなければと思いながら……
しかし、ミレイは困っていた。
手錠の外し方についての指示がない。
“ このまま放ったらかしなんて事は…… ”
ない……筈。
ミレイはしっかり聞き耳を立てて、無線から指導官の指示がくるのを待った。
----- ピピ、ピ
ミッション成功者は自由解散とする
お疲れ様!
“ お疲れ様!じゃなくて!
手錠の外し方を教えてえええ! ”
----- では、これより──
音声の出力を切り換える
「ん?出力を…?」
無線の声は、ミレイの心の叫びを受け入れることなく、勝手に授業を終わろうとする。
そして不思議な合図とともに
ミレイの無線から出る音が、彼女の鼓膜でなく周囲に直接響くように、音源が自動で切り変わった。
その声はミレイにはもちろん、隣のカルロにもはっきり届く音量になった。
無線はカルロに向かって指示を出す。
---- ミッション変更
手錠をはめられたバッジ所持者
学生ID 5G3637──
ミッションを指示する
「──…」
カルロは黙って聞いていた。
----- これより三時間
君に手錠をはめた生徒を被護者とする
君は被護者を護衛しろ
手錠に仕込まれた位置情報に従い
間もなくそこに刺客を送る
無線の向こうで……
指導官の笑い声が聞こえたような。
----- ピ..ピピ
被護者を無事に護りぬけば
君の手錠は解除される
……では、健闘を祈る
喜々とした声でミッション変更を伝えた無線の指示は、そこでプツンと途絶えた──。
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