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第33章 欲望の洋上宮殿と、AI仕掛けのポーカー
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『タルタロス号』の内部は、船というよりは巨大なカジノホテルだった。 深紅の絨毯、黄金のシャンデリア、そして行き交う仮面をつけた客たち。彼らの目は血走っており、テーブルの上では札束の代わりに、権利書や宝石、時には「命の保証書」のようなものがチップとして飛び交っている。
「……趣味が悪いな」 私は眉をひそめた。空気そのものが欲望で濁っている。
「ここは公海上、日本の法律は適用されません。完全なる無法地帯(アウトロー・ゾーン)です」 一ノ瀬玲奈が青ざめた顔で囁く。彼女は乗船してからずっと、微かに震えていた。この船のどこかにいる「家族」の気配に怯えているのだ。
その時、メインホールの巨大スクリーンが点灯した。 映し出されたのは、白い仮面の男――神宮寺カイ。
『ようこそ、挑戦者たちよ。私の部屋は最上階のVIPルームにある。だが、そこに辿り着くには、三人の「門番(ゲートキーパー)」を倒し、チップを稼がなければならない。……健闘を祈る』
映像が消えると同時に、私たちの前に一人の女性が現れた。 神宮寺レイア。黒いイブニングドレスの背中を大胆に開け、サディスティックな笑みを浮かべている。
「ごきげんよう。最初の門番は私よ。……久しぶりね、玲奈。お母様は息災かしら? ああ、もう亡くなっていたんだったわね。ゴミのように捨てられて」
「……ッ!」 一ノ瀬が唇を噛み切りそうなほど強く食いしばる。
「レイア。挑発はそこまでだ。……ゲームの内容は?」 私が割って入ると、レイアは退屈そうに髪を払った。
「単純なのがいいわ。『ヘッズアップ(一対一)・テキサスホールデム』。ただし……ディーラーは、我が神宮寺財閥が誇る最強のAI『ラケシス』が務める」
彼女が指差したテーブルには、人間ではなく、無機質なロボットアームとモニターが鎮座していた。
「このAIは、プレイヤーの心拍数、瞳孔の開き、発汗、微細な筋肉の動き……すべてをセンサーで読み取り、手札を予測する。ブラフは通用しない。嘘をついた瞬間、勝率はゼロになるわ」
「……玲奈。お前が相手をしなさい。お前のその自慢の『ロジック』が、最新鋭のAIに勝てるかしら?」
指名された一ノ瀬が、怯えた目で私を見た。 彼女は天才だが、それはあくまで冷静な計算ができる環境下での話だ。自身のトラウマである姉と対峙し、心理を読まれる状況では、彼女のスペックは発揮できない。
「……私がやります」 一ノ瀬が震える声で前に出ようとした。
「いいや、俺がやる」 私は彼女の肩を掴んで止めた。
「柏木様!? でも、ポーカーのルールは……」 「詳しくは知らない。役が強い方が勝つんだろ?」 「そんなレベルでは……! 相手は感情を読み取るAIですよ!?」
「だからこそ、だ」
私は一ノ瀬を背後に下がらせ、席に着いた。 対面にレイアが座り、妖艶に足を組む。
「あら、ナイト気取り? でも残念ね。そのAIは、素人の無謀な賭け(ブラフ)ほど見抜くのが得意なのよ」
「始めよう。レートは?」 「貴方の全財産……と言いたいところだけど、まずは小手調べね。貴方の『左腕』と、私の持つ『第一層の通過パス』を賭けましょうか」
私の左腕。負ければ切り落とすということか。 私は眉一つ動かさずに頷いた。
「いいだろう。……配ってくれ」
ロボットアームが高速でカードをシャッフルし、二枚のカードを伏せて配る。 勝負が始まった。
「……趣味が悪いな」 私は眉をひそめた。空気そのものが欲望で濁っている。
「ここは公海上、日本の法律は適用されません。完全なる無法地帯(アウトロー・ゾーン)です」 一ノ瀬玲奈が青ざめた顔で囁く。彼女は乗船してからずっと、微かに震えていた。この船のどこかにいる「家族」の気配に怯えているのだ。
その時、メインホールの巨大スクリーンが点灯した。 映し出されたのは、白い仮面の男――神宮寺カイ。
『ようこそ、挑戦者たちよ。私の部屋は最上階のVIPルームにある。だが、そこに辿り着くには、三人の「門番(ゲートキーパー)」を倒し、チップを稼がなければならない。……健闘を祈る』
映像が消えると同時に、私たちの前に一人の女性が現れた。 神宮寺レイア。黒いイブニングドレスの背中を大胆に開け、サディスティックな笑みを浮かべている。
「ごきげんよう。最初の門番は私よ。……久しぶりね、玲奈。お母様は息災かしら? ああ、もう亡くなっていたんだったわね。ゴミのように捨てられて」
「……ッ!」 一ノ瀬が唇を噛み切りそうなほど強く食いしばる。
「レイア。挑発はそこまでだ。……ゲームの内容は?」 私が割って入ると、レイアは退屈そうに髪を払った。
「単純なのがいいわ。『ヘッズアップ(一対一)・テキサスホールデム』。ただし……ディーラーは、我が神宮寺財閥が誇る最強のAI『ラケシス』が務める」
彼女が指差したテーブルには、人間ではなく、無機質なロボットアームとモニターが鎮座していた。
「このAIは、プレイヤーの心拍数、瞳孔の開き、発汗、微細な筋肉の動き……すべてをセンサーで読み取り、手札を予測する。ブラフは通用しない。嘘をついた瞬間、勝率はゼロになるわ」
「……玲奈。お前が相手をしなさい。お前のその自慢の『ロジック』が、最新鋭のAIに勝てるかしら?」
指名された一ノ瀬が、怯えた目で私を見た。 彼女は天才だが、それはあくまで冷静な計算ができる環境下での話だ。自身のトラウマである姉と対峙し、心理を読まれる状況では、彼女のスペックは発揮できない。
「……私がやります」 一ノ瀬が震える声で前に出ようとした。
「いいや、俺がやる」 私は彼女の肩を掴んで止めた。
「柏木様!? でも、ポーカーのルールは……」 「詳しくは知らない。役が強い方が勝つんだろ?」 「そんなレベルでは……! 相手は感情を読み取るAIですよ!?」
「だからこそ、だ」
私は一ノ瀬を背後に下がらせ、席に着いた。 対面にレイアが座り、妖艶に足を組む。
「あら、ナイト気取り? でも残念ね。そのAIは、素人の無謀な賭け(ブラフ)ほど見抜くのが得意なのよ」
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私の左腕。負ければ切り落とすということか。 私は眉一つ動かさずに頷いた。
「いいだろう。……配ってくれ」
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