セカンドアース

三角 帝

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第8章 マキダム牢獄

2.牢獄に住む老人

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「…よぉ、シーレッドさん。起きたか?」

  ふと目を開けると、そこには白髪の老人が立っていた。
  深い皺の刻まれた、その顔には、しっかりとした意思が宿り、鋼のような銀色の瞳には煌々と光る何かがあった。
  アダムは、自分が、頭に両手を押し当てるような体制で泣き喚いていたことに気づく。
  居場所を失い、目のやり場を探していると、老人はシワシワの両手をアダムに差し出してきた。しばらくその両手の意味を探り、そして顔をあげると、老人の温かい眼差しがあった。
  涙を拭い、自分を取り戻すかのように大きく息を吐く。

「…なんで俺が、シーレッドだって分かった?」

  老人は一瞬、キョトンとしたように目を見開くが、当たり前だというように口を開く。

「お前さんが着ているその服。一体何か分かってるのか?」

  金の些細な装飾と、しっかりとしたポケットが何個か、肩と腕に装着された固い皮の素材、胸元をクロスする妙に小洒落たベルト。初めてこの団服に袖を通した頃を思い出す。そう昔のことではないのだが…それでも、ジャケットに刻まれた傷の数々を見れば、それが遥か昔のことのように感じる。
  これを見れば、誰もが自身をシーレッドだとわかる。だが、今回は状況が違う。
  アダムは辺りの暗さを自覚する。
  黒く錆びたコンクリートの天井。薄っすらと射し込む僅かな外の明かり。湿った冷たい床は、遠くから何かが這っているような音が響いている。

「牢獄に住み着くおじいさんが、なんでシーレッドなんて名前知ってるんだ?」

  老人は、ホホォと随分と嬉しそうな声をあげ、アダムを舐めるようにマジマジと見つめた。至近距離からの視線に、若干の冷や汗をかき、老人の口臭が漂った。

「ここで一つ物々交換とやらだ!」
「は?」
「お前さんが何故、ここに入れられたのか。それを教えてくれれば、わたしが何故ここにいるのかも教えてやろうではないか!」

  何が物々交換だよ。

「はぁ……俺がなんかやらかしたんじゃないの?それしか考えられないだろ」
「……ま、まぁ確かにそうだな」
「で?あんたは?じいさん?」
「いやいやいや、お前さんの理由が理由になってないではないか」
「立派な理由じゃんか」
「もっと理由があるだろう?」
「…知ってるんだろ?どうせ。確認なんか要らねぇよ。俺の方が聞きたいぐらいだし」

  老人は、ふと思い老けるように俯く。
  妙な緊張感が走る。

「お前さんは…クロウと同化したのだろう?」
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